心に残る一冊 その26 Intermission  広辞苑改訂と岩波書店

「広辞苑」の出版元は岩波書店です。岩波書店の本にはいろいろとお世話になりました。大学の教科書に始まり、関連の専門書、そして新書や文庫といった按配です。岩波新書の刊行は1938年というのですから凄いの一語に尽きます。「方法序説」や「広島ノート」、その他「風土」といった本が手許にあります。北海道大学時代は、少々気取って「世界」や「思想」を読んだものです。1960年代ではこうした雑誌を読まないと時代に遅れるという雰囲気がありました。岩波のものであればどれも信頼がおける、という思い込みやこだわりが私にはあります。

創業者の岩波茂雄は長野県諏訪の篤農家の出身といわれます。「労働は神聖である」との考えを強く持ち,晴耕雨読の田舎暮らしを好んだとあります。岩波の刊行物にあるエンブレムにはミレーの種を蒔く人が描かれています。ミレーを引用したのはそんなところにあったのかもしれません。

岩波書店で忘れてはならないのは「図書」という冊子です。「読書家の雑誌」といわれるほど、読書の新しい愉しみを発見できるところです。「古今東西の名著をめぐるとっておきの話やエピソード、旅のときめき体験、味あふれるエッセイの数々、人生への思索などを綴る」とあります。知的好奇心あふれる読者が長く手にしている小冊子です。

岩波書店から出版されるにはどうしたよいか、ということです。恐らく原稿を幾重にも審査されるのでしょう。科学研究費補助金の審査よりも厳しいのではないかと察します。岩波から出版するにはどうしたらよいか、どなたか良い知恵を教えてくださいませんか。