音楽の楽しみ その2 合唱曲の数々  「多田武彦と北原白秋」

北海道大学男声合唱団にいたとき歌った曲に「柳河風俗詩」があります。作者は北原白秋です。なぜは「柳川」ではなく「柳河」と表記されたかの経緯はわかりません。

もうし、もうし、柳河じや、柳河じや。
   銅の鳥居を見やしやんせ。
    欄干橋をみやしやんせ。
     馭者は喇叭の音をやめて、
      赤い夕日に手をかざす。

白秋の生家は、代々屋号を「古問屋」とか「油屋」という海産物問屋でしたが、白秋の父の代になると、柳川地方でも有名な酒造業者にもなります。しかし、酒蔵が大火で全焼し、その後商売が傾きます。次第に白秋は雑誌『明星』などを濫読し、やがて上京して本格的に詩壇で頭角を上げていきます。

「柳河風俗詩」には、古い言葉がでてきます。それに柳川付近の方言も使っています。「柳河風俗詩」は詩集「思ひ出」の一部です。「あざみのはえた その家は ふるいむかしのノスカイヤ、水に映ったそのかげは 母の形見の小手鞠を 赤い毛糸でくくるのぢゃ」という歌詞もでてきます。ノスカイヤとはお女郎屋のことです。

この曲を作ったのは多田武彦という人です。世間ではほとんど知られていませんが、男声合唱の分野では超一流の作曲家です。多田は、京都大学在学中に男声合唱団の指揮者として活躍します。第1曲『柳河』は、全日本合唱コンクール課題曲の佳作となります。全曲初演は多田が24歳の時のこととあります。「柳河風俗詩」の初演は京都大学の学生集会所内の食堂だったという記録があります。多田が作曲の指導を受けたのは、日本の合唱曲作曲者の第一人者といわれた清水脩です。


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