留学を考える その11  アーミッシュ その2 メノナイト

アメリカは多民族の社会である。留学先の大学には、恐らく20か国以上の国からの留学生がいるに違いない。アメリカ人といってもロシア系(Russian)、ドイツ系(German)、スカンジナビア系(Scandinavian)、アフリカ系(African)、中東系(Middle-East)などまるで「人種のるつぼ」(melting pot)である。こうした人々との出会いも留学の貴重な賜物である。

ウイスコンシンにもアーミッシュ(Amish)と呼ばれる主としてドイツ周辺から移民してきたキリスト教徒が住んでいる。ウイスコンシンは、オハイオ(Ohio)、ペンシルベニア(Pennsylvania)、インディアナ州(Indiana)についで、アーミッシュが四番目に多い州である。

前回少し触れたが、アーミッシュとはメノナイト(Mennonite)と呼ばれるキリスト教集団から分かれたグループのことである。メノナイトの一人、ヤコブ・アマン(Jacob Amman)はキリストの教えの純粋さを保つために、メノナイトのグループから離れて一派をつくる。アマンの名前からこの派の人たちのことは、通常アーミッシュと呼ばれる。メノナイトもアーミッシュも基本的信条は同じで、一括りにしてアーミッシュと呼ぶ人もいる。

アメリカに最初に入植してきたのが、オランダにいたメノナイトの一部の人々、清教徒といわれる。1680年代といいるから、メイフラワー号(Mayflower)でやってきたピルグリム・ファーザーズ(Pilgrim Fathers)から60年後くらいである。さらに、スイスやドイツのメノナイト、その後、ロシア革命前後の迫害(Pogrom)を受けたロシアからのメノナイトがアメリカ大陸にやってくる。なお、メノナイトに似た教義や信条を大事にする宗教集団にクエーカー(Quakers)がいる。平和、男女や民族の平等、質素な生活などを強調する福音主義を信奉している。ブリザレン(Brethren)という一派もある。兄弟団教会(Brethren in Christ)と呼ばれていて、田舎での伝道、厳格な聖書の実践、信仰共同体の形成ということに特徴がある。

キリスト教の宗派の多くは神学、信条、聖書解釈、教会の規律、政治や社会への関わり等についての意見の相違によって作られている。メノナイトの信条は聖書の教えに厳格に従うこと、暴力や戦争を禁じ平和を大切にする非暴力主義を信奉することが特徴である。やがて、トルストイ(Leo Tolstoy)、ガンジー(Mohandas Gandhi) ルーサーキング(Martin Luther King Jr.)らの思想と行動に大きな影響を与える。

Wikipediaによれば、18世紀、ドイツからペンシルベニア・ダッチ(Pennsylvania Dutch)と呼ばれるが人々がペンシルベニア州に移民してくる。この中で約2,500名はメノナイト、500名はアーミッシュだったといわれる。アーミッシュはより安い土地である同州のランカスター地方(Lancaster)を選ぶ。そのため、ランカスターは合衆国でアーミッシュが最も集中する郡といわれている。

アーミッシュの信仰のあり方である。彼らは集落に専用の教会堂を持たない。集まりは各家が持ち回りで行い、そこで聖書を読み神に祈る。これは純粋な宗教儀式のみを大事にする習慣によるといわれる。子供の教育だが、地元の公立の学校へ子供を行かせない。すべて村落内で教育する。教師は村落に住む未婚の女性がなり、教育内容はペンシルベニアドイツ語と英語、聖書と算数が教えられる。村落での教育は8年間で、聖書の教えや信仰、神への感謝がしっかりと教えられるようである。

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