アメリカの学校は今  その十九 Hiawatha Community School

mrt cargill-1459773566 ty8431926040023ミネアポリス市(Minneapolis) はミネソタ州(Minnesota)一の大都市。隣が州都セントポール市(St. Paul)でこれを併せて双子の町(Twin Cities)と呼ばれています。プロ野球のチーム名がTwinsですね。昔の氷河でできた多くの湖が点在しています。湖が多いので蚊が無数に飛んでいます。そんなわけで、「」ミネソタの州鳥はモスキートだ」という冗句があります。

ミネアポリスはミシシッピー川(Mississippi River)とミネソタ川(Minnesota River) が合流し、昔から穀物の交易で栄えてきました。この町はかってのノースウエスト航空 (Northwest Airline)や精密機械のハネウエル(Honeywell)等の本社がありました。ノースウエスト航空はデルタ航空(Delta Airline)となりアトランタ市(Atlanta) に本社があります。ミネアポリスはデルタ航空のハブ空港となっています。ハネウエル本社はニュージャージー州(New Jersey)に移りました。今は、穀物市場で有名やカーギル (Cargill)の本社がミネアポリスの郊外にあります。

町の中には大きな製粉工場などが目立ちます。1860年頃から主に北欧からの移民がやってきます。気候が似ていたからです。そのほか、オランダやドイツ、イタリアなどからも多くの移民が定住して発展してきました。その後アフリカ系やアジアの人々も職を求めて定住しました。

Hiawatha Community Schoolの話題です。「Hiawatha」は先住民族の一つであるモホーク族(Mohawk)の言葉で「戦士」という意味です。モホーク族は農耕民族ともいわれ、モホーク刈りと呼ばれる独特の髪型をしていたようです。さて、学校には幼稚部から5年生約300名が学んでいます。学校のあたりは、いろいろな民族の人々が住んでいます。貧しい家庭の子どもたちは、朝食と昼食の無料給食サービスを受けています。私たち見学者も朝食をいただく機会に恵まれました。大きなハンバーグ、フレンチフライ、牛乳です。ケチャップの袋が山盛りになっています。子供たちには、まずは腹を満たしてから学習させようとするのです。子供の中には白人もいます。服装も貧しく髪をとかしていないためか、すさんだ印象を受けました。
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アメリカの学校は今 その十八 サクラメントの学校(2) A. Warren McClaskey Adult Center

mcclaskey_0 delta-king-old-sacramento static1-squarespaceカリフォルニアの州都サクラメント (Sacramento) の人口は47万くらい。中都市といった規模です。ここの学校区教育委員会はUnified School Districtと呼ばれています。周辺の小さな町を統合して教職員、施設設備、予算を管轄しています。今回紹介するサクラメント市内の学校は発達障害者の成人教育機関、「A. Warren McClaskey Adult Center」です。恐らく、Warren McClaskeyという市民が教育委員会に多額の寄付をして造られたものと思われます。

このセンターは教育委員会が運営する発達障害者の職業訓練教育機関です。高校教育の延長となっていて、生涯教育施設ともいわれています。アメリカでは幼児教育から職業訓練にいたる教育は全て教育委員会の管轄です。ほとんど無料で職業訓練のサービスを受けることができます。

障害のある生徒も通常の高校で学習するのですが、それだけでは職業上の自立に至らない場合が多いのです。そのためにこうした訓練機関が存在します。一市民として地域社会で生活するためのスキルを身につけ、仕事について自立的な生活ができるように支援されるのです。

センターではいろいろな訓練プログラムを観察できます。例えばレストランのウエイターやウエイトレスになるための訓練です。清潔な服装、テーブルの用意、あいさつの仕方、座席への案内、注文の取り方、サービスの声かけ、チップの受け取り方、レジの扱い方などなど興味ある訓練を受けています。私たち教員一行もテーブルに座らされて訓練に参加し、おかげで無料の昼食をいただきました。訓練の成果でしょうか、生徒の対応も堂に入っておりました。チップも渡しました。

訓練の合間に余暇時間を過ごす空間があります。センターの側にある住宅を借りています。生徒は三々五々集まっては、珈琲を飲んだり、本を読んだり、ゲームをして余暇を楽しみます。そこの事務室には、訓練生一人一人の訓練プログラムのファイルがあります。個別の就労計画といった内容です。複数の教職員が訓練生の能力やスキルに合ったプログラムを作りそれに基づいて指導しています。ジョブコーチ (Job coach) はこうしたセンターでは欠かせない存在です。
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アメリカの学校は今  その十七 サクラメントの学校(1)

b95ac3fa61460082b560e1ba0bb8cf3cbcf487ba_600 maxresdefault sacramentoサンフランシスコ (San Francisco)から車で金門橋 (Golden Gate Bridge)を渡り北上するとブドウ畑が広がるナパ・バレー(Napa Valley)があります。景色は素晴らしくワインも美味しいです。そこから東へ向かうと州都のサクラメント(Sacramento)に着きます。サクラメントは元々ゴールドラッシュで人々が集まって発展したといわれます。穀物の集散地としても栄え、今も教育、文化、商業の中心となっています。西部開拓時代の街角は保存されていて、そこの店に入ると映画の世界のような気分を味わえます。

サクラメントの学校を兵庫教育大学の教師である大学院生10名とで訪問したことがあります。お世話になったのはカリフォルニア州最高裁の判事をしていたチャールズ・コバヤシ(Charles Kobayashi)という方と奥様です。お二人とも日系2世です。

西海岸に移民した日本人は皆懸命に働き、子どもたちに教育を授けて今の地位を獲得したことが伺えます。コバヤシ氏はその見本のような方です。今も多くの日系アメリカ人が活躍しています。コバヤシ氏はサクラメントの日系メソジスト教会 (Sacramento Japanese United Methodist Church) の長老をされたり、日系人のためのグループホームの建設で尽力されていました。奥様の兄弟は、かつてヨーロッパ戦線でハワイの日系アメリカ人で構成された第442連隊戦闘団(442nd Regimental Combat Team)にて活躍したそうです。

コバヤシご夫妻の娘であるLaura Ashizawaさんは、かって私が勤めていた国立特殊教育総合研究所を訪ねてこられたことがあります。それから今までご両親とも交際が続いています。彼女は隣の郡の特別支援教育の教師をしていました。お二人の息子さんが発達障害の診断を受けています。

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アメリカの学校は今  その十六  フェアファックス学校区

special-needs the-long-history-of-fairfax-county-public-schools-bojbakg still0706_00017_1467848904722_1518378_ver1-0首都ワシントンDC(Washington D.C.)の西南を流れるポトマック川 (Potomac River) を渡るとヴァジニア州(Virginia)に入ります。ポトマック川はチェサピーク湾 (Chesapeake Bay) に流れます。ヴァジニアの州都はリッチモンド(Richmond)といいます。もともとアメリカ南部連合 (Confederate States of America), 南軍の首都です。ヴァジニア州最大の学校区フェアファックス郡(Fairfax County Public School: FCPS)の学校が今回の話題です。

フェアファックス学校区の生徒数は186,000人。全米の学校区で12番目に大きな規模です。生徒の人種背景ですが、白人とそれ以外の民族は約半々となっています。28%の生徒が無料か割引の給食を、17%の生徒が英語補助授業を、13%が特別支援教育を受けています。矯正教育を含むオータネティブ・スクール(Alternative schools)が3カ所、そして特別支援教育センターが8カ所あります。

首都の隣だけにフェアファックスには、日本企業も沢山進出しています。そのせいか日本語教育も盛んに学校で行われています。時には、企業からの寄付がこうしたプログラムを支えています。企業や地元の団体などから金品の寄付を受けて、学校のプログラムを展開するのはアメリカの学校の特徴の一つです。校長の役割も大です。校長というのは、校務の統括の他に地域にある企業、ライオンズ(Lion’s Club)やロータリークラブ(Rotary Club)などをまわって学校の活動を紹介し寄付を集めるのも大事な仕事です。

どの学校にもコンピュータは整備されて、授業や個々の生徒の学習に使われています。しかもあらゆるコンピュータも無線ランでつながっています。電子黒板やプロジェクタを使うのも日常的な姿です。どのクラスにも電子黒板が設置されているのは、この機器の効用を教育委員会は知っているからです。黒板がコンピューターのタッチパネルとなるのですから便利です。

校長などからの連絡は、メールや電子掲示板でやってきます。いつもネット上での記事を確認するのがフェアファックスの教師です。職員室というのはありません。

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アメリカの学校は今  その十五 ニューヨーク市立第165小学校

report-complaints-about-violence-in-new-york-schools-are-at-an-all-time-high larger 1280px-friends_meeting_house_-_new_york_city兵庫教育大学にいたとき、教員の大学院生を連れて北米のいろいろな学校を視察してきました。ニューヨーク市にも行きました。ニューヨーク市立大学 (Queens College of The City University of New York: CUNY) の近くにある市立第165小学校が今回の話題です。

ニューヨーク市は、「4人に3人が移民であり2人に1人が英語を母国語としない」といわれています。その大半は移民がです。ニューヨーク市は、アメリカ最大の生徒数を擁する巨大な学校区 (New York City Department of Education: DOE)です。学校は小学校から高校まで1,800校位あります。ニューヨーク市教育委員会のサイトは12か国語で作られています。日本語のはありませんが、、、

第165小学校は塀に囲まれ、警官が常時巡回しています。このような光景は珍しくはありません。大都会のダウンタウンにある学校はたいていの場合、公立学校です。そして多くの子どもは複雑で貧しい家庭環境にあるようです。

ほとんどの小学校で英語の補習授業プログラムが用意されています。第165小学校もそうです。アメリカ社会で最低限必要とされる基礎能力を習得させるためです。そのための予算や教員の確保がいつも話題となります。学校内にはネットワークに接続されたコンピュータが揃っています。ITリテラシーは小学生にも強調されるカリキュラムです。どんなに貧しい子どもが通っている学校でもIT関連の設備はしっかりしています。ITのスタッフも必ず常駐しています。それと図書館の充実も目立つことです。

第165小学校の生徒数は760名。教師と生徒の割合は10対1。アジア系が53%, ヒスパニック系が19%となっています。無料か割引の給食を受ける生徒は69%とあります。教師も様々な民族の背景を有しています。案内してくれた一人の教師は自信に溢れた態度でした。このとき残念ながら生徒の姿は写すことができませんでした。

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アメリカの学校は今  その十四 チャーター・スクール(Charter Schools)

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WASHINGTON, DC - FEBRUARY 20:   (FILE PHOTO)  Shannon Woisnet, 7-years-old, from Cleveland, Ohio, holds up a sign in support of school vouchers in front of the U.S. Supreme Court February 20, 2002 in Washington, DC. The U.S. Supreme Court, in a 5-4 ruling, upheld the Cleveland, Ohio school voucher program June 27, 2002 which allows families to use publicly financed vouchers to send children to religious schools.  (Photo by Mark Wilson/Getty Images)

WASHINGTON, DC – FEBRUARY 20: (FILE PHOTO) Shannon Woisnet, 7-years-old, from Cleveland, Ohio, holds up a sign in support of school vouchers in front of the U.S. Supreme Court February 20, 2002 in Washington, DC. The U.S. Supreme Court, in a 5-4 ruling, upheld the Cleveland, Ohio school voucher program June 27, 2002 which allows families to use publicly financed vouchers to send children to religious schools. (Photo by Mark Wilson/Getty Images)

charter 08charter-600今回は、幼児から15才の児童生徒を対象とした教育をしているチャーター・スクール(Charter Schools)のことです。チャーター・スクールというのは、いわば半官半民のような運営の学校です。民間の人々が学校の設立に関わり、州政府がこれを認可するのが普通です。カリキュラムは独自で特色のあるものとするのが売りです。州政府が決める教育課程や規定に拘束されないという特徴があります。いわば特区の学校といえます。「Charter」とは「契約」といったような意味です。

コロラド州にあるNew Visions Charter Schoolのモットーは「Chance to Grow」。成長への挑戦とでもいいましょうか。現在は州からの援助を受けています。公立学校の場合、生徒一人当たりの州からの補助は9,000ドル、チャーター・スクールの場合は6,000ドルあまりとなっています。従って、多くのチャーター・スクールは地元からの寄付にも頼っています。この学校の授業料は幼稚園を除いて無料となっています。カリキュラムに特色があるために、公立の校区にあってもこの学校を選ぶ市民多く、入学はくじ引きとなっています。

この学校のカリキュラムは、子供に高い学力をつけさせるということに尽きます。そのため、Core Knowledgeというアメリカ史を中心としてアメリカの地理、歴史、文化を系統的かつ総合的に教えることを謳っています。しかも一クラスサイズは20名以下で運営されています。市民の学校に対する期待も高く、ボランティアも多く学級に入っています。自分たちで創った学校という市民の意識の高さが感じられます。

通常、チャーター・スクールは3年毎に教育成果が評価されます。成果の評価は、教職員に対して、教育の質の向上という動機を与えています。評価が低いと州からの補助が減らされたり改善勧告がでたり、廃止に追い込まれたりします。

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アメリカの学校は今  その十四  Queen Lydia Lili’uokalani Elementary School

big_thumb titlei 220px-liliuokalani_holding_parasol_at_washington_placeハワイの州都はホノルル(Honolulu)。オアフ(Oahu)島にあります。ホノルルの東郊外にある公立学校、Qween Lydia Liliwakalani Elementary Schoolが今回の話題です。ハワイ王朝のかつての女王Lydia Liliwakalaniという人が寄付して1912年に創立されたとあります。この学校の付近はやや寂れた感じがするところです。

もともと貧しい家庭の子供に対する教育、という理念をこの女王は抱いてきたといわれます。今日、こうした子供への教育は連邦政府が膨大な資金を各州に提供しています。このプログラムを通称「Title I 」(タイトル・ワン)と呼びます。全米の90%以上の学校がこの支援を受けています。例えば、移民の子供への英語教育、障害が予想される、あるいは障害がのある子供への教育や給食サービス、虐待を受ける子供への支援、未婚の母親教育などがこの基金によって支えられています。Qween Lydia Liliwakalani Elementary Schoolもこの「Title I 」によって教育サービスを受ける子供が大勢います。

現在Qween Lydia Liliwakalaniでは120名くらいの子供がが学んでいます。そのうちハワイアンの子供がが80%を占め白人が13%という構成になっています。全生徒の45%が無料あるいは減額費用での給食サービスを受けています。教師と生徒の割合ですが、正規教員一人あたり平均12名となっています。ハワイ全体の平均は16名ですから結構いい割合です。手のかかる生徒が多いのが少人数学級の理由と考えられます。ワイキキ・ビーチ(Waikiki Beach)やアラモアナ・ショッピングセンター(Ala moana Shopping Center)の賑わいの陰に、貧しい家庭の子どもが学ぶ姿が隠れています。

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アメリカの学校は今  その十三 タマス・プリンス学校 (Thomas Prince School)

bragghall town_common_princeton_ma mamap今回はアメリカの田舎の学校です。マサチューセッツ州(Massachusetts)の州都ボストン(Boston)から西へ車で90分のところにあるプリンストン(Princeton)という小さな町の学校です。すぐ近くには広大なワチューセッッツ(Wachusette)州立公園があり、夏はハイキングやキャンピングで人々が憩い、スキー場が隣接していて冬の週末はたいそうな賑わいです。

プリンストンの人口3,700人。アメリカによくある田舎町です。プリンストンは豊かな森林資源を誇り、製材業、家具製作などで栄えた歴史があります。1800年代には鉄道も開通し、材木や製品の運搬に使われました。商人や旅行客も押し寄せホテルも繁盛しました。ですがこうした賑わいは戦後の自動車の普及ですっかり終わり、いまは静かな町となりました。農業は小麦が中心です。ブルーベリーやブラックベリー、リンゴなどのフルーツ農園があちこちに点在しています。

左上の写真は町役場の建物です。誠にもって風情のある姿です。このような規模の町ですから、学校や図書館は近隣の4つの町と一緒に運営しています。この学校区教育委員会はWachusett Regional School Districtと呼ばれ、二つの小中学校と一つの高校があります。Thomas Prince Schoolの学校名は、赴任してきた初代キリスト教会牧師の名前です。地域発展の黎明期は、多くの場合教会活動が活発な頃です。

Thomas Princeには、幼児から中学生までたったの150名くらいの子どもしかいません。ですが、言語治療士、障害児教育教師、発達障害教育教師、リソースルーム教師、図書館司書が常駐しています。私事ですが、二人の孫息子がこの学校に通い、発音の不規則さを指摘されて治療を受けました。校長は、自ら面接して教師を採用します。野外の運動場はすべて芝生。野球とサッカーが別々にできる広さがあります。芝の手入れはすべて機械でやります。数日毎に芝刈りをするのです。週末は試合があって保護者はチームの応援に駆けつけます。コーチは上手な子ども苦手な子どもも試合に出れるように配慮しています。お年寄りも折りたたみの椅子に座り、長閑に夕方の時間を過ごします。そして孫達の走り回る姿に目を細めます。

アメリカの学校は今  その十二 メディアセンターの充実ぶり

zentai2 kakari-mori1 02b0a2_f2f7a0b34192483393810bfbe55d1c65-jpg_srz_278_185_85_22_0-50_1-20_0アメリカの図書館は学校の華。学習の場として大きな役割を果たすのが図書館です。多くの学校は図書館を「メディアセンター(Media Education Center)」と呼んでいます。インターネットでつながった図書館は、印刷された本だけでなく電子情報で一杯なのです。メディアセンターはネットワークにつながるパソコンで満ちています。

メディアセンターには必ず図書館司書(librarian) が常駐しています。司書は教師と一緒になって授業もします。本の読み聞かせなどもするのです。小中学校のメディアセンターはいつも生徒で賑やかです。センターの入り口は沢山の飾り付けがあり、「なにか楽しいことがありそうだ、、」という雰囲気です。学校で一番行きたくなるところ、と宣伝するのがメディアセンターなのです。高校のメディアセンターは大学以上の設備を誇るところもあります。

情報を集めそれを活用することの大切さを知っているのはアメリカの学校です。そのせいか、図書館に多額の予算を付け、充実させる伝統があります。司書の能力の高さはそれを証明しています。いつか機会がありましたら、一度図書館に足を運んでみてください。その内部の底抜けの明るさと司書らの専門的な対応に驚きます。
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アメリカの学校は今  その十一 教育委員と学校長

692433ebd961fda36d1ffadc3d9758b1 school-budget-vote superintendent_sign-1067x600アメリカでは高校は義務教育です。学校はどのようにして支えられているかをご存じでしょうか。アメリカの学校の大半は市町村立か私立です。市民の税金が学校を支えています。州立高校というのはありません。

小さな町や村は、郡単位となって学校を運営します。人々の税金によって学校の建物を維持し教師を雇っています。もし、中途退学者が増えようものなら、市民は「学校は一体なにをやっているのか、教育長 (superintendent)や校長を代えよ、」と叫ぶのです。こうした記事は地方の新聞でよく見られます。市民には税金の使いみちと教育の成果は最も関心の高い話題の一つです。教育委員は公選です。教育委員会を統括するのですから、教育長や校長は教育委員会の下で教育行政に従事しなければなりません。教育長は教育委員が選ぶ仕組みとなっています。振り返って、日本では教育委員長(board of directors) や教育委員はなんの権限もなく、教育長の下に位置するという体たらくです。

学校税(school tax)というのがあって、自分たちの税がどのように使われているかがガラス張りとなっています。校長は、「スクールカウンセラーを雇いたい、PCを買い換えたい」などの提案を市民集会(Town Meeting)で説明します。ビジョンを持つ校長は市民にたいして、もう少し学校税を負担して欲しい、必ず教育の質を高める、と訴えるのです。

それでも資金が不足すると、校長は学校債権(school bond)の発行を提案して市民に学校への支援をとりつけます。債権ですから満期になると元金と利息を市民に返します。教育委員会から予算を獲得できるかが、校長の能力なのです。さらにロータリークラブ(Rotary Club)やキワニスクラブ(Kiwanis  Club)といった地域の経営者団体や福祉団体から寄付を集めるのも校長の仕事なのです。校長は地元の営業マン、ウーマンです。校長の権限と責任は大きいこと、市民の期待が高いのがアメリカの学校なのです。

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アメリカの学校は今 その十 人種のるつぼと公民権回復運動

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KONICA MINOLTA DIGITAL CAMERA

KONICA MINOLTA DIGITAL CAMERA

rosaparks_bus 11002062932一歩高校の建物に入りますと、そこは人種のるつぼといわれるほどいろいろな肌の色の生徒が闊歩しています。このような光景を見るには50年以上もかかったのです。

今週、南部のオクラホマ州(Oklahoma)で白人警察官が黒人男性を銃で撃って死亡させた事件が起こりました。「合理的な理由のない発砲」だったとして、女性警察官が過失致死の疑いで訴追されるという有様です。ノースカロライナ州(North Carolina)でも黒人の男性が警察官に銃で撃たれて死亡したことに対して激しい抗議行動が続いています。黒人や他のマイノリティの人権が未だに無視される傾向があるのを知ると過去の歴史的な出来事を思い出します。

かって黒人と白人の生徒は別々なバスに乗り別々な学校へ通っていました。1960年代、公民権運動やヴェトナム戦争が続くころです。運動の指導者はマーティン・ルーサー。キング牧師(Rev. Martin Luther King Jr.)でした。人種差別は憲法に違反するという主張を貫いたのです。アメリカでは今も非常に高い尊敬を受け、その功績を称えて一月の第三月曜日は祝祭日となっています。ジョージア州(Georgia) アトランタ (Atlanta)にあるMartin Luther King Jr. National Historic Siteは是非訪ねて欲しい歴史地区です。そこにキングセンター(King Center)があって公民権運動の歴史がわかりやすく展示されています。

キング牧師の提唱した公民権回復運動の思想は「非暴力主義」(Nonviolence) といわれています。インド独立の父、マハトマ・ガンディ(Mohandas Gandhi) の教えを受け継ぎました。この運動は1963年の首都ワシントンD.C.にあるリンカーン記念堂 (Lincoln Memorial) の前でおこなった“I Have a Dream”(私には夢がある)という演説で最高潮に達します。人種差別の撤廃と異なる人種の協和という高い理想を易しい言葉で訴え、広く共感を呼びました。今もこの演説は中学や高校の教科書でも取り上げられています。

「公民権運動の母」と呼ばれたのがローザ・パークス (Rosa Parks) です。彼女は白人専用のバスに乗り込みます。すぐに運転手に引きづり出されるのですが、これをきっかけにバス・ボイコット運動が始まります。やがて連邦最高裁判所からバス車内での人種分離は違憲であるという判決を勝ち取ります。

とまれ、話は先に人権の回復運動に及んでしまいました。折しも、9月24日に国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館 (National Museum of African American History and Culture) がワシントンDCの「ナショナル・モール」(National Mall) の一画にオープンしました。スミソニアン協会 (Smithsonian Institution) の19番目の博物館です。奴隷制度や公民権運動、著名なアフリカ系米国人にまつわる3万7000点の品々が展示されます。

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アメリカの学校は今 その九 卒業パーティ:プロム

89acd8b9ae6e71604fd9af7e71ff361c prom 13fff370-e618-0133-2423-0e1b1c96d76b高校の卒業が近づくと4年生には大きな行事が待っています。卒業パーティ:プロム(Prom)というものです。プロムナード(promenade)、舞踏会パーティですから、男子生徒は同伴するパートナーを探します。誰を誘おうか、どんな服装にしようかと思案します。シニア・プロム(Senior prom)とも呼ばれています。

プロムでは男子生徒が自分で選んだ女性と一緒にでかけます。この時、保護者もまた緊張します。「息子の相手は誰か」、「娘を誘ってくれる生徒はいるだろうか」。服装ですが、男子生徒はタキシード、女子生徒はドレスにコサージが一般的です。

プロムの内容はダンスや食事、会話です。飾り付けをした学校の体育館とかホテルを会場にします。ロックバンドやDJが登場してパーティを盛り上げます。プロムで誘った友だち同士は、大抵は一時のデート相手です。結婚相手はまだまだ先の話なのです。

プロムが終わると皆進学、就職に向けて準備します。遠く西海岸や東海岸、あるいは南部の大学などに向かいます。やがて楽しくも厳しい4年間のカレッジライフが始まります。

ついでですが、ロンドンの夏の音楽祭、BBC PROMSはPromenadeの複数短縮形です。Promenade Concertというものでしょう。2カ月にわたって開かれるというのですから豪華です。

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アメリカの学校は今  その八 パラプロフェッショナルの存在

fit%e5%89%8d pttp_paraprofessional-teacher-training-program c0156996_431298今回は高校の教職者陣についてです。アメリカの高校には、各教科担当の教師の他に特別支援教育の教師がいます。その他に、進路相談を担当する「ガイダンス・カウンセラー(Guidance Counselor)」、心理や学力検査を担当する「スクール・サイコロジスト(School Psychologist)」、貧しい家庭の保護者のカウンセリングを担当する「ソーシャル・ワーカー(Social Worker)」、職業実習を担当する「ジョブ・コーチ(Job Coach)」、言葉の遅れを指導する「言語治療士(Speech Therapist)」もいます。看護師ももちろんいます。こうした人々は教員免許状を持っていません。教師以外の者は「パラプロフェッショナル(Paraprofessional)」といいます。給与も教師とは違う体系となっています。学校は教師だけの集団ではないのが日本とは違うところです。パラプロフェッショナルを認定するのは、資格要件を規定する民間の認定機構です。

こうした教職員の業務は分業であるということです。自分の専門分野のことを仕事としているのです。例えば生徒の非行があるとすると、教科担当や担任がそれを受け持つのではなく、ソーシャル・ワーカーかスクール・サイコロジストです。原則、教師は専門分野以外のことができない仕組みなのです。

教員もパラプロフェッショナルも必ずといってよいほど修士号を持っています。特にパラプロフェッショナルというの資格要件がそうだからです。教師もまた大学院へいって勉強し、教える知識や技術を高めると給与が高くなるのです。博士号をもつともっと給料が上がります。アメリカの教職員の待遇としては、定期昇給だけでは不十分なのです。

アメリカの学校がこのように様々な専門家から成るのは、生徒のニーズが幅広いということです。その源は貧困とか家庭環境の悪さなどにあります。特に大都市の街中にある高校は問題行動の生徒が多いといわれています。時には校内に警官が巡回するのはこのような理由によります。大都会の真ん中にある学校で教職者は厳しい環境で仕事をしています。

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アメリカの学校は今  その七 保護者の責任で団体旅行

fig_international_1 p1170137 as20160619002080_commlアメリカの学校には修学旅行という行事はありません。基本的に団体旅行というのないといってよいでしょう。例外とすれば、保護者が自主的に組織してスポーツのイベントや見学旅行を計画する場合があります。あくまで保護者が主体です。州内のカウンティのスポーツ大会や音楽会に参加するのがせいぜいのところです。この場合、教師が引率することはありません。保護者が生徒を引率します。

修学旅行ですが、かって人々が貧しいときに児童生徒が遠方へ行く機会が持てなかったため、学校が主催して「見聞を広めさせること」が修学旅行の大きな目的とされていました。しかし、生活の向上とともに、見聞を広めさせるという趣旨から大きくはずれて、テーマパークを楽しむことが多いです。

今年の初夏、孫娘がバスで首都のワシントンD.C.へ団体で旅行しました。保護者と貸し切りバス会社が企画したようです。こうした企画で教師が職務で参加することはありません。学校がそのような企画をたてるとすると保護者から「余計なお世話だ、、、」といいわれるのがおちです。自分のことは自分でするのが大事だと考えているのです。教師もまた、「そんな無聊な業務は契約にない」と一蹴するはずです。学校は旅行などを企画するところでないのです。

最近、国内では教育課程の上で特別活動の1つとして修学旅行で外国に出かける学校があります。お隣の韓国や中国へ行くのも聞きます。いろいろな違いとともに似たような生活習慣があることを学ぶ機会となるでしょうが、国外への修学旅行を学校の宣伝材料としている場合も多いと聞いています。誰のための旅行なのかと頭を傾げてしまいます。「修学旅行で国際感覚を養う」といううたい文句はどんなものでしょうか。

日本ほど全国大会と銘打ったイベントを企画する国は知りません。野球や俳句の甲子園大会、少年サッカーや囲碁の全国大会、駅伝大会など素晴らしいものです。ですが学校や教師への負担も考えなければならないでしょう。スポーツでは生徒の能力を高めるために倶楽部チームでの専門家による指導が欠かせないように思われます。
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アメリカの学校は今  その六 プナホウ・スクール (Punahou School)

punahou_logo_thumb obama_ss5 punahou-copyハワイの私立学校の双璧はカメハメスクール、もう一つがプナホウ・スクール(Punahou School)です。プナホウ・スクールの創立は1841年。ミッションスクールとして会衆派 (Congregational church)と呼ばれるプロテスタントの教会が運営しています。今もキャンパスの一角には1851年に建てられた校舎の一部が残っています。「Punahou」とは現地語で「泉」という意味だそうです。

この学校は、ハワイ大学の基幹キャンパスであるマノア校(University of Hawaii, Manoa) のすぐ近くにあり、閑静な住宅地を控え実に良い環境にあります。一歩校内に入ると、そこは大学にいるかのような雰囲気です。バラク・オバマ(Barack Obama)大統領が卒業したことがこの学校を一層世の中に知らしめました。そのほか、全米一位となったゴルフのミッシェル・ウィ(Michelle Wie)もこの学校を卒業したことで知られています。幼稚園から高校までの生徒数は3,750名、高校(Academy)は1,750名です。授業料は年間平均して22,950ドル。日本円で230万円くらいです。

カメハメハ・スクールはハワイの原住民を優先的に入学させますが、プナホウ・スクールは誰でも入学することができます。ミッションスクールの伝統を引き継ぎ、礼拝や聖書の勉強が課せられています。日本語教育もしっかり行われています。多民族の子どもが学ぶせいか、グローバール教育(国際理解教育)が盛んで、アメリカ本土の大学へ進学する者も多いことで知られています。

この学校のスポーツ活動は全米で知られています。初等科には空手部もあります。最も読まれているスポーツ雑誌、Sport Illustrateは2008ー2009年度の全米ナンバーワン学校としてとプナホウ・スクールを評価しています。21のスポーツの種類、参加する生徒数、そして州や全米の大会実績などが評価されています。ハワイの政治や経済、文化、教育の分野に多くの人材を送り出している学校です。

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アメリカの学校は今 その五 カメハメハ・スクールズ(Kamehameha Schools)

bishop-memorial-chapel-old-kamehameha-schools-campus-1 untold_story_pic_1_1 kamlogo 28025-slq_0「アメリカの学校は今」という話題になりますと、大学の予備校でもある高校の姿をとりあげたくなります。最初はハワイ(Hawaii) はホノルル(Honolulu)にある由緒のある学校です。ハワイは1959年に合衆国としての最後の州となりました。50番目です。州都はホノルル。ハワイは先住民がハワイアンと言われています。他に日系、中国系の人々が大勢住んでいます。先住民は州内人口の民族構成で3位になっています。

1885年2月に最初の日本人集団153名がハワイにやってきます(Japanese settlement in Hawaii)。1868年以降、労働者として日本からハワイへ移住していった人びとはサトウキビ労働に従事します。サトウキビ労働者の70%が日本人で、その規模は27,000人といわれます。移住といっても、当初は出稼ぎ労働者だったようです。契約期間が終わり沢山の人がハワイに残りました。

日系アメリカ人の活躍がハワイの政治や経済を支えています。政治の面では、ハワイ州選出でアメリカ初の連邦上下院議員となったダニエル・イノウエ(Daniel  Inouye)とかアメリカ全土の州知事で最初のアジア系知事となったジョージ・アリヨシ(George Ariyoshi) らが有名です。日本の文化は、仏教徒の比率が高いこと、寺院や神社が州内のあちこちでみられることにあらわれています。

ハワイの学校で目立つのは、私立学校が非常に人気があることとです。その代表がカメハメハ・スクールズ(Kamehameha Schools)です。1887年に創立といいますから歴史は古いです。かってハワイを治めていたカメハメハ一世(Kamehameha I) の直系の子孫であるバーニス・ビショップ (Bernice Pauahi Bishop) という人が設立した学校です。この学校には、先住ハワイアンの血筋を引く者が優先的に入学できるようになっています。

カメハメハ・スクールズの創立は1887年。学校はハワイ全土で展開し、早期教育から高校教育までの課程に5,416名の子どもが学んでいます。単独の学校としては全米一の生徒数を誇っています。カメハメハ・スクールズはカメハメハ一世の遺産を継承して、豊かな資金を誇っています。そのため施設はもちろん、教育内容がきわめて充実しているという評判です。ホノルル市街の丘陵にメインのキャンパスがあります。メディア教育センター(Media Education Center) の充実は特に目を奪われるほどです。予約をすれば見学ができます。

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アメリカの学校は今 その四  奨学金にはROTCかPell GrantかGI Billを

rfdfdr-sfspan images rotc-image2「どこの大学で勉強しようか」と思案するのは高校生には一つの関門であり特権でもあります。大学能力評価試験であるSAT、またはACTの成績が良い生徒は99%、志望するところへ入ることができます。高校には進路相談の専門員、Guidance Counselorが必ずいます。自分の学力と大学の評価基準を秤にかけ大学を推薦してくれます。

多くの生徒は地元の州立大学へ行くのが普通です。授業料が比較的安いからです。私立大学も人気があります。自分の家系の宗旨によって決めるのです。例えば、カトリック系、ルーテル系、バプテスト系、モルモン系などの大学です。こうした大学の多くは4年間勉強する単科大学(college)となっています。カリキュラムは、よくいわれるリベラルアーツ(Liberal Arts)です。学生数でいえば1,500人から2,000人くらいの規模です。

宗教系の大学には家庭が裕福な高校生が進学するのが多いです。4年間のカリキュラムがしっかりし、個別の指導が徹底し、規律のよい大学生活が魅力のようです。カレッジを卒業すると総合大学の大学院へ進むのが一般的です。私立の大学も高校も、人々から高い評価を受けるのがアメリカです。

州立でも私立でも成績がよいと奨学金を貰ったりローンを組んで勉強します。アメリカの大学は、資産 (endowment) が公表されています。多くは企業や地元からの寄付や同窓会からの支援金、教会信徒からの献金のことです。奨学金はこうした資産が基となっています。有名大学ほど資産が多いのは当然です。

ほとんどの大学には、陸海空軍および海兵隊の将校を養成する予備役将校訓練課程 (Reserve Officers’ Training Corps: ROTC)もあります。在学中は学費の一部か全額が支給され、加えて数百ドルの奨学金が与えられます。こうした学生は軍服姿で校内を歩いています。ただ卒業後は2年間の兵役義務があります。経済的に貧しい学生や将校となりたい学生は、兵役と引き替えにROTCプログラムで勉強するのです。日本政府もROTCを参考にした仕組みを作ろうとしたことがありますが実現しませんでした。韓国ではソウル大学など全国16大学でROTCプログラムを導入しています。

「Pell Grant」という連邦政府が支出する学部学生向けの返還不要の奨学金もあります。最高限度額は5,815ドルとなっています。「GI Bill」という一種の奨学金もあります。一定期間以上兵役について退役すると大学や職業学校の授業料や生活費として貰える資金のことです。なお「GI Bill」とは「復員軍人再復帰法」 (Servicemen’s Readjustment Act)という法律のことです。

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アメリカの学校は今  その三 国際バカロレアとは

img_0212-250 images eb国際バカロレア(International Baccalaureate: IB)の歴史です。創立は1968年というのですから、意外と歴史は浅いです。この組織はスイス民法典に基づく財団法人国際バカロレア事務局で、スイス(Switzerland)のジュネーヴ (Geneva) にあります。

IBとは、本質的には単なる大学への入学資格をとるものでも、教育プログラムでもありません。「教育を通してよりよき世界を創造することにある」と謳っています。創設以来、世界共通の大学入学資格として広まり資格認定書であるディプロマ(Diploma)を使って、若者へ海外の大学へ進学することの門戸を広げてきました。現在、IBプログラムを有する高校は世界で4,527校、IBプログラムの種類は5,865に及んでいます。日本は今なお、たったの28校という寂しさです。

IBプログラムの分布を地理的にみれば高校の61%が、IBプログラムの57%が南北アメリカ大陸にあります。その大半は北米にあるといわれ、そのせいでしょうかアメリカやカナダの大学は、IB-Diplomaを受験生の選抜に使っています。

次に、「Baccalaureate」の意味です。もともとは、17世紀にフランスで始まった国家公務員になるための行政学院の最終試験のことです。今は、フランスの大学入学資格および試験のことを指します。Baccalaureateはフランス語では「学士」という意味です。ラテン語の「baccalureatus」が語源で、学士ーbachelorというように使われました。ちなみに、「laureate」とは知的で創造的な業績に対する賞を意味します。ノーベル賞受賞者(Nobel Laureates)はその代表です。Baccalaureateのもう一つの意味は、卒業式直前の日曜日に挙行される卒業記念礼拝ということです。

IBディプロマを取得するためには以下の3つの分野での単位が要求されます。
1  課題論文 (Extended Essay)
2  知識の理論 (Theory of Knowledge)
3  創造性・活動・奉仕 (Creativity, Action, Service)

ディプロマの試験で、「個人と社会」のうちの「歴史」の問題の一例を紹介します。これを英語で回答するのには、日頃の時事問題の理解と英語力、特に修辞が要求されます。

●What were the most frequent causes of persecution of minorities? Support your answer with specific examples.
(少数民族を迫害する最も多くの原因はなにかを、いくつかの具体的な例を挙げて答えてください。)

さて、ディプロマの試験45点満点で24点以上をとるとディプロマを取得することができます。志望するアメリカの大学に受験申し込みをするには、ディプロマの他にTOEFLなどの英語能力試験の結果を添えなければなりません。

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アメリカの学校は今  その二 新しい教育プログラムと留学

images-1 images 2012-03-21-staibworldschoolpageimage現在、新しい教育プログラムを提供する高校が日本で増えています。それは国際バカロレア・プログラム (International Baccalaureate: IB)です。16歳から19歳を対象としたプログラムであり、二年間の所定のカリキュラムを履修し、最終試験にて一定程度の成績を収めると、国際的に認められる大学受験資格 (国際バカロレア資格)が得られるというものです。

今、国内には28の高校がこのプログラムを提供しています。我が国でIBプログラムが始まったのは1979年。多くは私立の進学校、大学附属校、国際高校などです。こうした高校は国際バカロレア認定書(Diploma)を取得させることをうたい文句にして、生徒を集め海外の大学への進学を促進しようとしています。

世界中の多くの大学が、 IB取得を入学選考の対象にしています。アメリカのほとんどの州立大学や私立大学、イギリスのケンブリッジ大学、オックスフォード大学もそうです。日本でもすでに多くの大学が、 IB資格の点数を推薦入試に利用しています。国際基督教大学、上智大学、早稲田大学、筑波大学、慶應大学、東京大学、北海道大学など306校が海外のIB取得者に入学の門戸を開きました。

先日のUS Education Fairで、ウィスコンシン大学のブースにやってきた高校生が、どの位のIB得点が必要だろうかと問い合わせてきました。ウィスコンシン大学システムにある13のキャンパスはすべてIB取得を選考の基準の一つに含めています。大学によってIB資格の点数は異なりますが、超一流大学では45点満点中、35点から40点以上は必要といわれています。

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アメリカの学校は今 その1 海外留学の説明会

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An aerial view from a helicopter highlights the central portion of the UW-Madison campus including the historic Bascom Hill area during a sunny autumn day on Oct. 7, 2006. Clockwise from lower left is Music Hall, the Law Building, South Hall, Bascom Hall, North Hall, the Education Building and Science Hall. In the background is Picnic Point and the Lake Mendota shoreline. ©UW-Madison University Communications 608/262-0067 Photo by: Jeff Miller Date: 10/06    File#:   D200 digital camera frame 1178

An aerial view from a helicopter highlights the central portion of the UW-Madison campus including the historic Bascom Hill area during a sunny autumn day on Oct. 7, 2006. Clockwise from lower left is Music Hall, the Law Building, South Hall, Bascom Hall, North Hall, the Education Building and Science Hall. In the background is Picnic Point and the Lake Mendota shoreline.
©UW-Madison University Communications 608/262-0067
Photo by: Jeff Miller
Date: 10/06 File#: D200 digital camera frame 1178

img_0572今回から暫く海外留学を巡る大学や高校教育の内容を、アメリカに焦点をあてて紹介することにします。

今やどの大学も学生の募集に躍起となっています。人口の減少とか貧困の蔓延などによって大学進学者が減少傾向にあることが起因しているようです。

先日、在日アメリカ大使館主催のUS Education Fairという留学説明会に参加しました。説明会に出展する多くは私立の単科大学(College)やコミュニティカレッジ(Community College)です。出展する中には、州立大学もあります。私は昨年に続き東京と大阪の説明会にボランティアとしてでかけました。アメリカの大学も海外からの留学生の獲得に奔走しています。世界中にある同窓会組織を通して大学のPRに努めているのです。

留学生集めに忙しいのは単科大学(College)だけではありません。ハーヴァード大学(Harvard University)、プリンストン大学(Princeton University)、コロンビア大学Columbia University、スタンフォード大学(Stanford University)、マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of Technology:MIT)も積極的です。以上の超一流の大学は私立大学です。ウィスコンシン大学マディソン校(University of Wisconsin-Madison)は州立ですが、留学生募集活動に積極的なのは例外ではありません。

海外からの優秀な学生や院生、研究者を取り込み、教育や研究の質を高めようとしているのが大学の実情です。留学生の能力が高いことは大学関係者なら皆知っています。ですからこうした頭脳を一人でも集めたいのです。

今回、東京大学でアメリカ史を研究しているという博士課程の院生がウィスコンシン大学のブースにやってきました。東大で博士号を取得するか、ウィスコンシン大学で取得するかで迷っているという贅沢な志望の女性でした。既にウィスコンシン大学の歴史学の研究内容や師事したい教授を調べていて留学の動機は極めて高い人です。多くの論文も読んでいることが十分に伝わってきました。

私の助言は、推薦状やレジメ、志望動機のエッセイをきちんと作ることくらいでした。英文での修辞に注意を払うように伝えました。こうした志望生がブースに立ち寄ってくれるときは、こちらもついつい熱がはいります。同時に気楽でもあります。

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