クリスマス・アドベント その19 “Miserere”

Last Updated on 2025年1月3日 by 成田滋

旧約聖書も詩篇(Psalm)第51篇をもとに作曲された合唱曲 “我を憐れみたまえ”(Miserere)を紹介します。作曲したのは、イタリアの聖職者で作曲家のグレゴリオ・アレグリ(Gregorio Allegri)です。アレグリは、誓願を立ててアドリア海(Adriatic Sea)に面するマルケ州(Marche)のフェルモ(Fermo)大聖堂より聖職禄に加わります。この地で数多くのモテット(Motets)やその他の宗教曲を作曲して、ローマ教皇ウルバヌス8世(Urban VIII)の注目を得るようになります。

やがてローマのヴァチカン宮殿(Palace of the Vatican) にあるシスティナ礼拝堂 (Cappella Sistina)聖歌隊にてコントラルト(contralto)歌手の地位を得ます。コントラルトとは、ソプラノの下でテノールの上の音域を歌える男性歌手のことです。似たような歌手にカウンターテナー(countertenor) がいます。これは女声に相当する高音域を歌う男性歌手のことです。
“Miserere”を紹介します。合唱の構成としては、一方は4声部、他方は5声部からなる二重合唱曲となっています。礼拝堂において、合唱団の片方が主旋律である〈ミゼレーレ〉の原曲を歌うと、少し離れて位置するもう一方の団員が、それに合わせて装飾音型で聖句の「解釈」部分を歌います。ルネサンス音楽の特徴である複数の独立した声部(パート)からなる音楽のポリフォニー様式 (polyphony) の典型的な作品です。ポリフォニー様式ではありますが、全声部が模倣を行う通模倣様式ではなく、和声的様式(ファミリアーレ様式)をとっています。このあたりの説明は難しいので、曲をお聴きになると理解できます。

“Miserere”はシスティナ礼拝堂にて、復活節の水曜日から金曜日にかけて行われる早朝礼拝(matin)の中の特別な礼拝「暗闇の朝課」に際して用いられたといわれます。「暗闇の朝課」の儀式は通常午前3時ころから始まり、ロウソクの灯りを1本ずつ消してゆき、最後の1本が消されるまで続きます。この曲は、霊的な特性を維持するという目的でシスティナ礼拝堂聖歌隊の他に楽譜を伝えることが禁じられます。前述の特別な礼拝でのみ演奏されることを許され、いわば門外不出の秘曲となります。

このように“Miserere”は、イースター(Easter)前の金曜日にシスティナ礼拝堂での典礼に参加して、そこでしか聴くことができない音楽となっていました。もっとも有名なエピソードは、1770年に父親に連れられた14歳のモーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart)がローマを訪れたとき、この曲を2度聴き、そのときの記憶を基に忠実に楽譜化したことです。その楽譜を当時の教皇に献呈した、ということが言い伝えられています。

クリスマス・アドベント その18 The Twelve Days of Christmas

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この曲のタイトルにある12日間とは、クリスマスの12月25日から1月6日までの降誕節のことです。1月6日は顕現祭(Epiphany)と呼ばれ、イエス・キリストが神性を人々の前で表したことを記念するキリスト教の祭日を指します。ルーテル教会でも、伝統的にこの日が祝われています。バッハ(Johann Sebastian Bach)のクリスマス・オラトリオ(Christmas Oratorio)の第6部が、この日の讃美の音楽となっています。ところでオラトリオとは、独唱・合唱・管弦楽から構成される大規模な楽曲を指します。オペラとは異なり、歌手が舞台で演技をすることはありません。

The Twelve Days of Christmas” は、ヨーロッパに16世紀頃から伝わるクリスマス・キャロルの一つです。1780年にイングランドで作られた詩が基となり、やがて1909年に民謡であった旋律にイギリスの作曲家フレデリック・オースチン(Frederic Austin) が編曲します。曲の特徴としては、12番までの歌詞のついた一種の童謡歌であることです。一定の旋律をもった2行以上からなる詩の単位(stanza)が歌い上げられ、それと共に1番ごとに積み上げられる歌詞(cumulative song)となって曲が長くなります。

Cumulative songsはグループで歌うときが多いようです。韻律によってStanzaは決まっており、歌詞も覚えやすいので子どもたちが好んで歌うことができます。 英語の歌詞は韻を踏んでいることが分かります。鳥の名前がでてくるのは、愛と平和を象徴するキジバトに示されています。キジバトのつがいは仲がよいので夫婦の愛の模範とされています。

12番のうちの1番、2番、3番だけの歌詞 (Lyrics) を紹介しておきます。歌詞の最後の部分は、贈り物として捧げる品が増えていくことがわかります。歌詞でいう12日の最初の日は12月25日です。そして1月5日の夜をもって待降節–アドベント・クリスマスは終わりとなります。

 On the first day of Christmas, my true love sent to me
 A partridge in a pear tree.
   On the second day of Christmas, my true love sent to me
  Two turtle doves and a partridge in a pear tree.
    On the third day of Christmas, my true love sent to me
   Three french hens, two turtle doves and a partridge in a pear tree.

クリスマス・アドベント その19 ”Ave Verum Corpus”

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”Ave Verum Corpus”は、アヴェ・ベルム・コルプスという題名がつきます。この曲はカトリック教会で用いられる聖体賛美歌といわれます。Ave Verum Corpusはラテン語ですが、”Ave”はおめでとう、 ”Verum”とは誠の、”Corpus”は御身 といういう意味です。

この曲は、モーツアルト(Wolfgangus Amadeus Mozart)から オーストリアの都市バーデン(Baden)教区教会のオルガニストで聖歌隊指揮者であったマートン・シュトル(Marton Schutol)への贈り物といわれます。シュトルはモーツアルトの崇拝者で、彼の曲を聖歌隊ではしばしば歌っていたといわれます。

”Ave Verum Corpus”はモテット(Mottets)といわれる楽曲で、中世からルネッサンス(Renaissance)にかけて成立したミサ曲以外の世俗的なポリフォニー(polyphony)といわれる多声部の宗教曲です。モテットとカンタータ(Cantata)の違いですが、モテットは短い曲で器楽が独奏する部分がなく、絶えず伴奏として演奏されます。他方カンタータは主題にそって長い演奏が続き、独立した器楽の声部が合唱や朗唱に混じって随所に登場します。

”Ave Verum Corpus”ですが、最初は短い前奏で始まり、合唱はニ長調で、途中でへ長調、そしてニ短調へと変わり、最後はニ長調へと転調されます。たった四行のラテン語の歌詞、しかも46小節という短い曲ではありますが、柔らかい旋律と絶妙な転調によって、信仰が純化されるような味わいの響きを持ちます。モーツァルト晩年の傑作の一つといわれます。

クリスマス・アドベント その16 グレゴリオ聖歌

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グレゴリオ聖歌(Gregorian Chants)は、主に9世紀から10世紀にかけて、西ヨーロッパから東ヨーロッパで発展し、受け継がれてきた宗教音楽です。ローマ教皇グレゴリウス1世(Gregorius I)が509年から604年の教皇時代に編さんしたことからグレゴリオ聖歌といわれています。もともと西方教会(Western Orthodox Church)における単旋律聖歌(plain chants)を軸とする無伴奏の宗教音楽です。聖歌は伝統的には男声に限られ、元来はミサや聖書日課の祈りにおいては、僧侶など聖職者によって歌われていました。

歴史的には修道会では修道僧や修道女によってグレゴリオ聖歌は唱えられてきました。ローマカトリック教会(Roman Catholic Church)の公式な聖歌として、典礼(litergy)に基づくミサや会堂(カテドラル)の中で録画されたグレゴリオ聖歌がよく知られています。グレゴリオ聖歌は斉唱(Unison)で歌われましたが、やがてそれに歌詞や音を追加したり即興的にオクターブである8度音程、5度、4度、3度の和声を重ねる技法が使われるようになりました。メロディの中心は朗誦音(リサイティング・トーン: Reciting tone)と呼ばれます。

グレゴリオ聖歌の音階は、「ラシドレミファソラ」、「レミファソラシドレ」とか「ミファソラシドレミ」という具合になっています。レを主音(終止音)、ラを属音、ドを導音として旋律が作られ、とても不思議な感じのメロディーとなります。これらがグレゴリオ聖歌の音階となります。こうしてできた7つの音階はそれぞれ少しずつ雰囲気が違って聞こえるはずです。グレゴリオ聖歌はユニゾンで歌われ、リズムがなく、終止感があまりないといった特徴もあります。それは、いたずらに歌が甘美になることが許されなかったからだといわれます。

通常、ミサでは次の6つの聖歌が歌われます。キリエ(Kyrie)、グロリア(Gloria)、クレド(Credo)、サンクトゥス(Sanctus)、ベネディクトゥス(Benedictus)、およびアニュス・デイ(Agnus Dei)で、どのミサでも同じ歌詞が使用されます。

キリエ(憐れみの賛歌)は「キリエ・エレイソン」(主よ、憐れみたまえ)の三唱、「クリステ・エレイソン」(キリストよ、憐れみたまえ)の三唱、再度「キリエ・エレイソン」の三唱からなります。グロリア(栄光の賛歌)は大栄頌を唱えます。クレド(信条告白)はニケア信条(Nicene Creed)を唱えます。これらの典礼文は長いので、聖歌では歌詞の切れ目に対応した構造となっています。サンクトゥス(聖なるかな)とアニュス・デイ(神の子羊)は、キリエと同様、典礼文に繰り返しが多く、音楽的にも繰り返し構造をとるものとなっています。

クリスマス・アドベント その15 ”O come, O come, Emmanuel”

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紀元前586年頃、古代イスラエル(Israel)の民にバビロン捕囚(Babylonian Captivity)がやってきます。首都エルサレム(Jerusalem)が、新バビロニア(Babylonian)の王となったネブカドネザル(Nebuchadnezzar)によって占領されたためです。バビロンはメソポタミア(Mesopotamia)地方の古代都市でありました。やがて故国に帰れるというユダヤ人の希望はそれゆえに幻となり、50年に渡ってバビロニアに居住する苦しみを強いられます。そうして「救い主(メサイア)Messiah」待望の信仰が生まれます。

旧約聖書のイザヤ書第7章14節には次のような預言があります。
 ”見よ、おとめがみごもって男の子を産み、その名はインマヌエルと呼ぶ。”
Behold, the virgin shall conceive and bear a son, and shall call his name Immanuel.「 Immanuel」とは「主がともにいる」という意味です。”bear a son” は”give birth to a son”と同じく生まれるという意味です。

この讃美歌は、「久しく待ちにし、主よとく来たりて」として訳されています。元々8世紀のラテン語グレゴリオ聖歌(Gregorian chant)です。曲は7つの詩から成っています。夕礼拝や祈り会のときに交互に歌うしきたりだったようです。その後13世紀になると5つの詩が加えられます。1851年に讃美歌の作詞者であるジョン・ニール(John M. Neale)がラテン語歌詞を英訳、それが日本に入ってきます。

この曲は捕囚の中に光を求める讃美歌であり、救い主を待ち望む歌でもあります。このように原曲が中世のグレゴリオ聖歌であるためか、旋律も和声も静かで厳かな雰囲気を醸し出しています。単旋律でも、編曲されて合唱としても歌われています。

O come, O come, Emmanuel
And ransom captive Israel
That mourns in lonely exile here
Until the Son of God appear
Rejoice! Rejoice! Emmanuel
Shall come to thee, O Israel.

アドベント・クリスマス その14 ”Lo, How a Rose E’er Blooming”

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日本語題名は「エッサイの根より」と付けられている賛美歌です。古くからカトリック教会で歌われてきました。詩も曲も15世紀頃からドイツのライン(Rhine)地方に伝わるキャロル(Carol)がもとになっています。もともとは、23節から成るマリアの賛歌で、降臨節の期間に歌われます。

古代イスラエル王国第2代王ダビデ(David)の父がエッサイ(Jesse)といわれます。その出典箇所は旧約聖書(Old Testament)の中の有名な預言書イザヤ書です。その11章1節には、「エッサイの根株から新芽が生え、その根から若枝が出て実を結ぶ」とあります。ユダ族のダビデの子孫からキリストが生まれることを示唆しているのです。そのことはマタイによる福音書(Gospel of Matthew)の冒頭に「アブラハムの子孫、ダビデの子孫、イエス・キリストの系図」と記述されています。キリストの系図がダビデを通じエッサイに由来することを語るのです。

時代は下り19世紀以降、この曲はプロテスタントの讃美歌に収録されるようになります。2番目の歌詞ではマリヤから幼児イエスが生まれることに置き換えられています。こうしてドイツから英米にも伝わり世界的なアドベントの歌になります。

歌詞の冒頭にある”Lo”は古英語で 「見よ」 といった驚きを表す単語である。”Behold”という単語にあたります。歌詞を翻訳すると「ご覧ください、薔薇はいつも咲いていますよ」となります。
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 エッサイの根より 生いいでたる、
  預言によりて 伝えられし
   薔薇は咲きぬ。
  静かに寒き 冬の夜に。

Lo, how a Rose e’er blooming from tender stem hath sprung!
 Of Jesse’s lineage coming, as men of old have sung.
  It came, a floweret bright, amid the cold of winter,
 When half spent was the night.

Isaiah ‘twas foretold it, the Rose I have in mind;
 Mary we behold it, the Virgin Mother kind.
  To show God’s love aright, she bore to us a Savior,
 When half spent was the night.

アドベント・クリスマス その13 ”O Tannenbaum”

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アドベント・リース(Advent wreath)には樅の木の枝が使われることを既に述べてきました。樅の木は冬のさなかでも緑色を保つマツ科。それゆえに、”Christmas Tree”とも呼ばれます。樅の木はドイツ語での響きが最もよい心持ちがします。”Tannenbaum”がそうです。”Tannen”は樅、”Baum” は木というドイツ語です。バウムクーヘン(Baumkuchen)はドイツ語がそのまま使われる菓子です。”木の形をしたケーキ”という意味です。

クリスマス・キャロルの一つで世界中で歌われる曲に”O Tannenbaum” があります。現在の歌詞はライプチッヒ(Leipzig)のオルガン奏者で教師、そして作曲家であったアーネスト・アンシュッツ(Ernest Anschutz) が1824年に歌詞を付けたといわれます。歌詞をみると、この曲は必ずしもクリスマスや飾りがつけられたクリスマスの木のことを歌っているのではないことがわかります。マツ科のこの常緑樹は不偏さとか信仰ということのシンボル、そのことを称えています。

アンシュッツが書き下ろした歌詞は16世紀のシレジア(Silesian)民謡からの哀しい恋の曲が元となっています。シレジアとは今のドイツ、ポーランド(Poland)、チェコ(Czech)、スロバキア(Slovakia)のあたりを指す地域です。メルクワイア・フランク(Melchoir Frank)という人が歌った “Ach Tannenbaum”という曲に依拠しています。

19世紀になると降臨節にはクリスマスの木が飾られるようになります。そしてたくさんのクリスマス・キャロルも作曲され歌われていきます。アンシュッツの歌詞にある “treu” とはしっかりとした、とか信仰にあふれた、という意味です。歌詞の二番目は “treu” が “grun”(緑)となっています。20世紀になってこの歌がクリスマス・キャロルとして歌われるとともに歌詞も変わっていったようでです。樅の木を形容して「凜とした葉は夏の盛りだけでなく、雪の降る冬さえも緑をたたえています」という歌詞です。

O Tannenbaum, o Tannenbaum,
 wie treu sind deine Blatter!
  Du grunst nicht nur
  zur Sommerzeit,
   Nein auch im Winter, wenn es schneit.
    O Tannenbaum, o Tannenbaum,
   wie treu sind deine Blatter!

クリスマス・アドベント その12 ”O Holy Night”

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O Holy Nightの作曲者はアドルフ・アダン(Adolphe C. Adam)というフランス人です。我が国では「オー・ホーリーナイト」と呼ばれています。アダンは1800年代の中盤に活躍し多くの曲を作ったといわれます。中でもこの”O Holy Night” (Cantique de Noel–クリスマス賛歌)というクリスマス・キャロルは特に知られています。

“O Holy Night”ですが、作曲は1847年。フランス南部の街、ロクマラ(Roquemaure)にある教会のオルガンが修復され、その祝いとして教区の司祭が詩人プラシド・カポー(Placide Cappeau)にクリスマスの詩を依頼します。カポーは”Midnight, Christians”という題を付け、それにアダンが旋律をつけたのです。当時、この曲はラジオで放送され広く人々に口ずさまれるようになったといわれます。アダンはバレー音楽(ballet)であるジゼル(Giselle)をはじめ39ものオペラも作曲した人でもあります。

その後、”O Holy Night” はソプラノ(soprano)やテノール(tenor)で歌われることが多くなりました。それは当時、ユニテリアン教会(Uniterian church)の牧師であったジョン・ドワイト(John S. Dwight)がカポーの原詩 “Cantique de Noel” をもとにして、フランス語と英語でイエスの誕生と救いについて親しみのある歌詞をつけたからです。

曲は静かな音程で始まり、やがて次第に興奮が高まるような音階となり、最後は極めて高い音階で歌われます。誕生劇が ”聖なる夜かな” という歌詞と共に最高潮に達します。荘厳な曲でもあります。

この曲は多くの人気歌手によって歌われています。例えばマライア・キャリ(Mariah Carey)、ビング・クロスビ(Bing Crosby)、ホットニ・ヒューストン(Whitney Houston)、マハリア・ジャクソン(Mahalia Jackson)といった歌手です。

O holy night! The stars are brightly shining,
It is the night of our dear Saviour’s birth.
Long lay the world in sin and error pining,
‘Til He appear’d and the soul felt its worth.
A thrill of hope the weary world rejoices,
For yonder breaks a new and glorious morn.
Fall on your knees! O hear the angel voices!
O night divine, O night when Christ was born;
O night divine, O night, O night Divine.

クリススマス・アドベント その11  Little Drummer Boy

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クリスマスキャロルはいろいろに分類されそうです。聖夜のように礼拝堂で厳かに歌われるもの、ポピュラーソングのようなもの、子どもたちだけで歌われるものもあります。今回紹介するのは子どもが歌う曲です。

「誕生」はすべての人にとって喜ばしく嬉しい時です。老いも若きもその時を祝います。数あるクリスマスの歌には、古く伝統的なものから現代的(contempolary)なものまで誕生を主題とする曲がいろいろとあります。今回、紹介するのは一人の少年が太鼓を叩きながら、イエスの誕生の喜びに加わるという曲です。それが「The Little Drummer Boy」というもので、別名は「Carol of the Drum」です。

作曲したのはキャサリン・デーヴィス(Katherine Davis)。作曲家であり教師でした。作られたのは1941年。曲の由来はチェコスロバキア(Czechoslovakia)に伝わる古い民謡です。1950年代、この曲を収録したレコードはアメリカで大ヒットしたそうです。歌詞は次のような内容です。

”さあ行こう。一人の王様が生まれたぞ” と大人が僕に声をかけた。
”大切な贈り物をこの王様のところに届けよう”
”だけど、僕は貧しいので、なにも持っていくものがありません”
”マリアさん、お祝いとしてこの太鼓を叩いていいですか?”

”マリアさんは優しく頷いてくださった。牛や羊はじっと待っていた。”
”僕は一生懸命、赤ちゃんのために太鼓を叩いた。”
タタタッタ、タタタッタ、、、、”
”赤ちゃんは僕と太鼓に微笑んでくれた。”

Come they told me pa ra pa pam pam
a newborn King to see pa ra” pa pam pam
Our finest gifts we bring pa ra pa pam pam
to lay before the King pa ra pa pam pam
Ra pa pam pam ra pa pam pam
So to honor him pa ra pa pam pam when we come
Little baby pa ra pa pam pam
I am a poor boy too pa ra pa pam pam
I have no gift to bring pa ra pa pam pam
that’s fit to give our King pa ra pa pam pam
Ra pa pam pam ra pa pam pam
Shall I play for you pa ra pa pam pam on my drum
Marry nodded pa ra pa pam pam
the ox and lamb kept time pa ra pa pam pam
I played my drum for him pa ra pa pam pam
I played my best for him ra pa pam pam
Then he smiled at me pa ra pa pam pam me and my drum

クリスマス・アドベント その10 預言者イザヤという名前

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1977年に国際ロータリー財団より奨学金をいただき、ウィスコンシン大学に留学したときのスポンサーがロバート・ジェイコブ(Dr. Robert Jacob)という医師でした。日本語読みではさしずめヤコブ氏となります。長年ミルウオーキー(Milwaukee)の郊外で開業していました。専門は脚の整形外科。熱心なユダヤ教徒でありました。いつも住まいの側にあるシナゴーグ(Synagogue)で長老(Elder)として活躍されていました。次女がウィスコンシン大学の看護学部を卒業したとき開いたパーティに奥様とご一緒に参加してくださいました。残念なことに数年前に召されました。

これまでMrs. Jacobからは、ご子息らの成人の儀式、バー・ミツヴァ(Bar Mitzvah)の案内、9月には新年ロシュ・ハシャナ(Rosh Hashana)の祝いを頂戴しています。一度、ジェイコブ氏に連れられてシナゴーグ(synagogue)を見学させていただいたことがあります。シナゴーグとはユダヤ教の会堂のことです。キリスト教の教会の前身といえます。礼拝はもちろん祈りの場であり、結婚や教育の場、さらに文化行事などを行うユダヤ人コミュニティの中心的存在となっています。もともとは聖書の朗読と解説を行う集会所でありました。会堂に入るときは、男子はキッパ(kippa)とかヤマカ(yarmulke)と呼ばれる帽子を頭に載せることになっています。

ユダヤ教徒はタルムード(Talmud)と呼ばれる教典を学び行動するように教えられます。タルムードは生活や信仰の基となっています。家庭では父親の存在が重要とされます。率先して子どもに勉強させタルムードなどを教えます。子どもを立派なユダヤ人に育てたものは、永遠の魂を得ると信じられています。

クリスマス・アドベント その9 Ave Maria

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キリスト教会には、それぞれに演奏したり歌ったりする音楽とそうでない音楽があります。16世紀の前半に起こった宗教改革(Reformation) をきっかけに、カトリック教会から訣別したルーテル教会には、決して演奏することのない音楽とか曲があります。「アヴェ・マリア」(Ave Maria)という曲がそうです。カトリック教会もマルチン・ルター(Martin Luther)が作曲した賛美歌「神はわが櫓」 (Ein’ feste Burg ist unser Gott) を歌うことはありません。

カトリック教会ではイエスの母、マリアを聖母として崇めています。アヴェ・マリアはマリアへの祈祷を指します。直訳すると受胎告知(annunciation)されたマリアに対して「恵まれた女よ、おめでとう、Ave Maria」と呼びかける言葉です。ルカによる福音書(Gospel of Luke)1章26-38節の記述にあります。ルーテル教会などのプロテスタント教会には、マリアを崇拝する教義がありません。

グレゴリオ聖歌(Gregorian Chant)などのミサ曲にもアヴェ・マリアは登場します。その他、祈祷のための教会音楽や祈祷文を歌詞にしたものなどさまざまな楽曲が存在してきます。16世紀スペインの作曲家トマス・ルイス・デ・ビクトリア(Tomas Luis de Victoria)やジョヴァンニ・パレストリーナ(Giovanni Pierluigi da Palestrina)、19世紀フランスの作曲家グノー(Charles Gounod)、同じく19世紀イタリアのロッシーニ(Gioachino Rossini)など多くの作曲家がアヴェ・マリアの曲を作っています

シューベルト(Franz P. Schubert)の晩年の歌曲「エレンの歌第3番」(Ellens Gesang III) がアヴェ・マリアとして知られています。この曲はもともと宗教曲ではなかったようです。ですが誰かがこの旋律にアヴェ・マリアの歌詞を付けて曲にしたといわれます。このようにラテン語による典礼文を載せて歌うことは現代でもしばしばあります。前述のグノーがバッハの「平均律クラヴィーア(Clavier)曲集 第1巻」の「前奏曲 第1番」の旋律にアヴェ・マリアの歌詞をつけて完成させた声楽曲もそうです。クラヴィーアとはオルガンを含む鍵盤を有する弦楽器のことです。読者の皆さんも必ずどこかでアヴェ・マリア聴いたことがあるはずです。

クリスマス・アドベント その8 カンタータ第147番

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もう一つのカンタータ(Cantata)をご紹介します。カンタータとは、イタリア語「〜を歌う(cantare)」に由来し、器楽伴奏がついた単声または多声の声楽作品を指します。今回は、カンタータ第147番です。「心と口と行いと生きざまもて(Herz und Mund und Tat und Leben)」と訳されています。140番と並んで人々に親しまれる教会カンタータです。この曲を広く知らしめているのが第6曲の「主よ、人の望みの喜びよ」の名で親しまれているコラール(Choral)で、ドイツ語では”Jesus bleibet meine Freude”という題名となっています。

カンタータ第147番は、新約聖書ルカによる福音書(Gospel of Luke) 1章46〜55節にに依拠しています。礼拝での聖書日課は「マリアのエリザベート訪問の祝日」となっていて、マリアが神を賛美した詩「マニフィカト(Magnificat)」が朗読されます。マニフィカトとは、聖歌の一つである「わたしの魂は主を崇め、わたしの霊は救い主なる神を讃える」という詩のことです。全部で10曲から構成されるカンタータ第147番の一部を紹介することにしましょう。

冒頭の合唱は、”Herz und Mund und Tat und Leben”というトランペットが吹かれる快活な曲で気持ちの良い合唱フーガ(Fuga)です。フーガとは対立法という手法を中心とする楽曲のことです。同じ旋律(主唱)が複数の声部によって順々に現れます。この時、5度下げたり、4度上げて歌います。これを応唱ともいいます。少し遅れて応唱と共に別の旋律が演奏されます。これを対唱と呼びます。次のレシタティーヴォも、オーボエなど弦楽合奏を伴うしみじみした響きで演奏されます。

第3曲のアリアは、オーボエ・ダモーレ(oboe d’amore)というオーボエとイングリッシュホルンに似た楽器の伴奏がつきます。少々暗い響きですが雰囲気が醸し出されます。第4曲はバスのレシタティーヴォが続きます。第5曲のアリアでは、独奏ヴァイオリンの美しさが際立ちます。ソプラノの響きも美しい。

そして第6曲がお待たせ「主よ、人の望みの喜びよ」のコラール。英語では「Jesus, Joy of Man’s Desiring」。主旋律と伴奏旋律が互いに入れ替わり、あたかも追いかけごっこをしているようです。どちらも主旋律のように響きます。いつ何度聞いても慰められる名高い曲です。

クリスマス・アドベント その7 カンタータ第140番

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教会暦は伝統的に一年は待降節(アドベント)から始まります。そして受難節、復活節、聖霊降臨節、三位一体節などへと続きます。そうした節毎にバッハ(Johann Sebastian Bach)などの作曲家がいろいろな音楽を作っています。

バッハの多くの作品の中にカンタータ(Cantata)第140番があります。この局は「コラール・カンタータ」(BWV140)(Choral Cantata) と呼ばれています。カンタータの基礎となっているのは合唱、コラールです。教会暦によりますと、聖霊降臨の1週間後は三位一体節と呼ばれます。バッハは三位一体節後第27主日の礼拝に合わせてカンタータ140番を作曲したといわれます。

教会では、全ての日曜日礼拝には拝読される福音書の章句が決められています。三位一体節から数えて第27日曜日の福音書聖句は、マタイによる福音書(Gospel of Matthew)25章1節から13節となっています。この箇所では、花婿の到着を待つ花嫁の譬えを用いて、神の国の到来への備えが唱えられています。それをふまえ、真夜中に物見らの声に先導されたイエスの到着、待ちこがれる魂との喜ばしい婚姻へと至る情景を描いています。

カンタータ140番は「目覚めよと呼ぶ声あり」と呼ばれ、英語では”Wake, Arise,” ドイツ語では”Wachet auf, ruft uns die Stimme”として知られる名高い曲です。カンタータに配置される独唱はレシタティーヴォ(recitative)といわれます。レシタティーヴォは、概して大規模な組曲形式の作品の中に現れる歌唱様式といわれます。叙唱とか朗唱とも呼ばれています。楽器はホルンの他、木管と弦楽器、そしてチェンバロが使われます。カンタータ140番は次の7曲から構成されています。

第1曲 コラール  目覚めよと呼ぶ声あり
弦楽器とオーボエが付点リズムでもって演奏され、それに行進曲風の合唱が続きます。晴れやかな喜びに満ちた曲です。
第2曲 レチタティーヴォ 彼は来る、まことに来る
イエスの姿を伝えるテノールの語りかける場面となっています。
第3曲 二重唱  いつ来ますや
わが救いの魂(ソプラノ)とイエス(バス)の間で交わされる愛の二重唱です。
第4曲 コラール  シオンは物見らの歌うの聞けり
テノールの歌うコラールは、ユニゾンの弦が晴れやかな落ち着きのある有名な曲です。物見の呼び声が夜のしじまを破って響く冒頭の合唱曲とシオンの娘の喜びを歌うテノールのこの曲は特に名高いものです。
第5曲 レシタティーヴォ
さらばわがもとへ入れといって花嫁が登場します。
第6曲 二重唱  わが愛するものはわが属となれり
再び魂とイエスとの二重唱となります。
第7曲 コラール  グローリアの頌め歌、汝に上がれ
簡潔ながら力強い4声部によるコラールで終わります.

クリスマス・アドベント その6 休憩(Intermission)  ロゴスと言葉

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ここらで少し休憩とします。クリスマスについてです。いくら世界中の人々がクリスマスを祝うといっても、聖霊によるマリアへの受胎告知やイエスの誕生に納得できない人々がいるはずです。その後のキリストの受難と昇天、そして復活もそうかもしれません。キリスト教徒でない人々の中には聖書の中味を、「作り話」、「ファンタジ」、「空想」として捉えるために、受胎告知や復活といった奇跡にさしたる抵抗は感じないようです。ですからクリスマスも、わだかまりもなく子どもや家族と楽しむことができるのです。今回はその先のことを考えてまいります。

復活とか蘇りという出来事は、考えてみれば宗教の世界で通用する現象です。キリスト教徒は、そうした「出来事」にかつては困惑したり懐疑したことはあったにせよ、それを「吹っ切って」洗礼を受け信徒になったのです。こうした転機は奇跡としかいいようがありません。

「人知では到底計り知れないこと」 は世の中にはいくらでもあります。高い教育を受け、自然科学に触れ、進化論を知ったにせよ、こうした宗教上の現象は、この世界とは次元の越えた現象といってよいでしょう。そこには吹っ切れたという個人的な体験があったからだろうと察するほかはありません。恐らく当人もこの不思議な導きを言葉では説明できないでしょう。

人の使う言葉には限界があります。愛するものの死に接したとき、哀しみを表現する言葉が浮かびません。どんな慰めの言葉も癒しにならない時があります。人間の言葉とはそいうものです。語いが足りないというほかありません。

ヨハネによる福音書1章1節に「始めにことばありき」(In the beginning was the Word) という章句があります。ここでの言葉-Wordは神のことばーロゴス(logos)ということです。この世界の根源として神が存在するという意味とされます。ブリタニカ百科事典には 「ロゴスは世界の根幹となる概念であり、世界を定める理(ことわり)」 とあります。

クリスマス・アドベント その5 クリスマスのいわれ

Last Updated on 2025年1月3日 by 成田滋

クリスマス(Christmas)は、ChristとMassの連語であることを前回述べました。「キリストの誕生を祝うミサ礼拝」ということです。クリスマスの歴史を振り返りますと、比較的新しいことがわかります。そのことに触れてみるのが今回の話題です。

クリスマスは、もともと”Yule time”と呼ばれ、特にゲルマン(Germanic)の”jul”やアングロサクソン(Anglo Saxson)の”geol”からきたのだといわれます。YuleとかYuletide(Yule time)というのは冬至の日を意味します。昔は、冬至がくると人々はその日を祝うのが習慣だったようです。ヨーロッパの人にとっては日がだんだん長くなることを待望して祝ったののです。Encyclopaedia Britannicaによれば、Yuleは非宗教的な祭りだったのが、いつのまにかChristmasに吸収されていったとあります。

北欧のスウェーデン(Sweeden)、デンマーク(Denmark)、ノールウエイ(Norway)でいまもクリスマスを”Yule”と呼んでいます。フィンランド(Finland)は”Joulu”と呼びます。クリスマスを意味する”Yuletide”という英単語のことです。”tide”の語源は期間とか時間という意味です。通常、tideは潮という意味です。Yuletideは12月24日から1月6日までの期間を指します。クリスマスの期間ということです。ですがこのYuleは今は古英語になってしまいました。

ラテン語で誕生は”natalis”です。クリスマスを意味する言葉ですが、このラテン語からクリスマスの言葉が生まれます。イタリア語は”Natale”、スペイン語は”Navidad”、フランス語はノエル(Noel)です。そしてドイツ語は”Weihnachten”です。”Weihは”聖なるかな”、そして”nachten”は”夜”という意味です。”Heilige Nacht”も同じ意味です。今回は、クリスマスとは世俗的な祝いや祭りから生まれたということを読者にお伝えしました。

クリスマス・アドベント その4 The First Noel

Last Updated on 2025年1月4日 by 成田滋

クリスマス(Christmas)の季節が今年もやってきました。キリスト教会では待降節(Advent)とか降臨節を迎えています。クリスマスまでの4週間のことです。礼拝堂では日曜日の礼拝毎にローソクが1本ずつ点火されます。所属するルーテル教会を例に挙げながら、クリスマスの内容や意義を記してみます。

Christmasは二つの単語から成ります。Christ(キリスト)とMas(マス)です。後者のMasはもともとはMassであり、礼拝とかミサを表します。従ってChristmasは「キリストの礼拝」となります。古事によるとChristmasは、元々12世紀頃の古い英語ではCristesmassと綴られていたそうでです。

ベブル語(Hebrew)の聖書にはMessiah(メシア、またはメサイア)が登場します。Messiahとは王様とか聖職者を意味します。王様はやがてキリストがMessiah=救世主として崇められるようになるのです。Messiahは特別に油や香料をそそがれたもの(anointed)、それが「救いをもたらす者」というようになります。Christmasは別名、ラテン語(Latin)から派生した誕生(Christ Natalis)ともいわれます。スカンディナビア半島では11世紀頃からChristmasの祝いが始まったとされ、その誕生祝いのことを「Old Norse Jol」と呼んでいました。スカンジナビアの人々(Scandinavian People) という意味だそうです。

時代がくだり、14世紀になると古いフランス語でノエル(Noel、または Nael)がChristmasとして使われます。Noelとはもともとは誕生という意味です。18世紀になるとこれが「The First Noel」という讃美歌に登場し世界中で親しまれるようになります。「初めてのクリスマス」という讃美歌です。我が国では「牧人ひつじを」という題名で讃美歌103番、聖歌27番として歌われています。

The first Noel, the angels say
To Bethlehem’s shepherds as they lay.
At midnight watch, when keeping sheep,
The winter wild, the light snow deep.
Noel, Noel, Noel, Noel
Born is the King of Israel. (American version)

クリスマス・アドベント その3 イマヌエル

Last Updated on 2025年1月3日 by 成田滋

今日は、アドベント、別名降臨節に関する記事を聖書から見てみることにします。それは旧約聖書のイザヤ書(The Book of Isaiah)です。預言者イザヤ(Isaiah)の名によって残される旧約聖書中最大の書といわれます。その成立は複数の者によって書き起こされ,内容からみて2部に分けられます。

最初は、1〜39章は前8世紀頃、主に預言者イザヤによって書かれ、主の懲らしめと裁きが中心に描かれています。40章で「慰めよ。慰めよ」という言葉がでてきます。次ぎに40章から66章は、慰めと回復のメッセージといわれています。具体的には、ユダ(Judea)とエルサレム(Jerusalem)に対するメッセージです。ユダが主から離れていくので、懲らしめを受けるのですが、最後には癒され、救われるという展開になっています。

北イスラエル王国(Northeran Israel)は、紀元前7世紀頃中東のオリエントを統一して最初の世界帝国であったアッシリア(Assyria)の攻撃を目前に控えていただけでなく、南ユダ王国(South Judea)も崩壊するのは時間の問題でありました。そうした緊迫した情勢を背景に、イスラエルの民の多くは一国も早く国外へ脱出することを望んでいました。アッシリア帝国による侵略の脅威に曝される中、神のみ告を信じていたのもユダヤ人です。

イザヤは「神が我らとともにおられる」を意味するイマヌエル(Emmanuel)という言葉を使います。イマヌエルとは、驚くべき指導者であり、力ある神の象徴であり、彼によってイスラエルが救われて平和の道を歩むことができると預言するのです。イマヌエルは新約聖書のキリストを示唆しています。イザヤは、「救いは主のもの」、あるいは「ヤハウェ(Yahweh、Jehovah)は救いなり」と教えます。人間が救われるのは、人間からでも行いからでも富からでもなく、主からなのだ、ということを最初から最後に至るまで一貫して教えています。

クリスマス・アドベント その2 樅の木

Last Updated on 2025年1月4日 by 成田滋

アドベント・リース(Advent wreath)には樅の木(Tannenbaum)の枝が使われます。しなやかなので丸いリースを作りやすいのです。樅の木は、「Christmas Tree」とも呼ばれます。そしてクリスマスのデコレーションに使われます。有名なのは、ニューヨーク市のロックフェラーセンター(Rockefeller Center)前に立てられるものです。毎年その点火がニュースとなります。高さ20メートルを超え、2007年からはLEDが使われています。今年は明日12月2日に点火式が行われます。

樅の木に戻ります。この常緑樹は強い生命力の象徴とされます。また「知恵の樹」とも呼ばれます。沢山の種類の飾り物がとりつけられます。子どもたちはそれを楽しみにしています。もともとはリンゴとかナッツなどの食べ物が枝にくくられたそうです。そしてロウソクとなり今は豆電球で飾られます。ベツレヘムの星(Bethlehem)やガブリエルの天使(Gabriel)の飾りもつけられます。

Tannenbaum

樅の木がクリスマスの木として使われるようになったのは15世紀頃といわれています。ドイツのゼレシュタト(Selestat)にある St. George’s Churchがその起源とか。ブリタニカ百科事典(Encyclopedia Britannica)によると, 樅の木は常緑樹(evergreen trees)として、エジプト人(Egypt) や中国人、ヘブル人(Hebrew)などが永遠の命を象徴する木として崇めていました。こうした信仰はヨーロッパの非キリスト教徒(pagan)らにも広まり、やがてスカンジナビア(Scandinavia)や西ヨーロッパに広まり、家々や納屋に立てられた樅の木は魔除けとしても、また鳥の止まり木としても飾られるようになったといわれます。

樅の木の代わりに”Paradise Tree”という常緑樹もクリスマスでは飾られたといわれます。中世のミステリ劇に登場する木です。それによると12月24日はアダムとイブ(Adam & Eva)と命名された日として祝われます。そこに飾られる木には禁断の実とされたリンゴが供えられました。さらに、種なしの薄焼きパン(Unleavened bread)も付けられました。種なしパンには聖餐(Eucharist)とか贖罪、救済(Redemption)の意味があったようです。

クリスマスアドベント その1 クリスマス・リース

Last Updated on 2025年1月4日 by 成田滋

この季節になると、ところどころの玄関にリース(wreath)とかクランツ(cranz)と呼ばれる飾り物をつけているのを見かけます。こうした家はクリスチャンの家族なのだろうと察します。


このリースは常緑樹である樅の木の枝を丸めて作ります。祭壇に置くときは、柊(ヒイラギ)の葉があしらわれてそこにろうそくを立てるのです。「柊」は季節にふさわしい漢字であり、緑々しい木です。柊が玄関の側に植えられるのは邪鬼を払うという言い伝えがあります。教会で飾られるリースは特別な意味があります。リースにある先の尖った柊の葉ですが、柊は十字架上で処刑されたキリストの冠の棘を表します。柊は英語で”holly tree”と呼ばれています。

リースは、クリスマス・リース(Christmas wreath)とも呼ばれ11月最終日曜日からキリスト教会で飾られます。今年のアドベントは11月29日から始まりました。燭台となるリースの上には4本のろうそくが立てられます。この日からキリストの誕生を待ち望む期間、待降節といわれるアドベント(Advent)が始まるのです。アドベントはキリストの誕生までの4週間を指します。

アドベント期間の礼拝に出席すると目に飛び込んでくるのが色。例えば、ろうそくの色は悔い改めや望みを表す紫とか青でです。聖職者の祭服や祭壇布、礼拝堂のタペストリーなどにも用いられます。典礼色に倣い、第三週のみピンクやローズカラーのろうそくを用いる場合が多いようです。ルーテル教会やメソジスト教会、聖公会などはそうです。アドベントの礼拝や祈祷での賛美歌は、救世主メシア(Messiah)の到来を待ち望むものが歌われます。

「久しく待ちにし、主よとく来たりて」 “O come, O come, Emmanuel” は、アドベントの時期に広く歌われる讃美歌です。詞・曲とも中世の聖歌だったとされます。旧約聖書のイザヤ書(The Book of Isaiah)第7章14節にある預言から由来しています。

Oh come, Oh come, Emmanuel
And ransom captive Israel
That mourns in lonely exile here
Until the Son of God appear
Rejoice! Rejoice! Emmanuel
Shall come to thee, O Israel!