学生たちは一人の教授を、いわば発見しておりました。それはある学生の言によれば全学のピカ一教授でした。すなわちフーバー教授、ゾフィーの哲学の先生でした。彼の講義には医学部の学生もやってきました。それで早めに行かないと座席が取れないのでした。題目はライプニッツ(Gottfried W. Leibniz)とその精神論でした。
1933年4月にナチスドイツは職業官吏再建法(de:Gesetz zur Wiederherstellung des Berufsbeamtentums)を発布し、その第3条で「アーリア系でない官吏は退官させることができる」と謳います。ドイツ国民をアーリア人種の一民族として賛美し、他方でユダヤ人や黒人、インドを発祥の地とする少数民族のロマ族、いわゆるジプシー(Gypsy)を「非アーリア人」として貶めることになります。これが「アーリア条項」(Aryan Clause)」と呼ばれるものです。ユダヤ人の迫害、ホロコースト(Holocaust)が始まったのは1933年といわれます。
ヨーロッパの一部の保守派評論家は、「政治的正しさ」と多文化主義は、ユダヤ・キリスト教的価値観(Judeo-Christian values)を弱体化させることを最終目的とした陰謀の一部であると主張しています。この理論は、政治的正しさはフランクフルト学派(Frankfurt School)の批判理論に由来し、その支持者たちが「文化マルクス主義」と呼ぶ陰謀の一部であると主張しています。ちなみに、フランクフルト学派とは、ヘーゲル(Georg Hegel)の弁証法とフロイト(Sigmund Freud) の精神分析理論をマルクス主義と融合させてマルクス主義の問題点の克服と進化を試みた学派といわれます。2001年、保守派評論家のパトリック・ブキャナン(Patrick Buchanan)は著書『西洋の死』(The Death of West)の中で、「政治的正しさは文化マルクス主義である」と述べ、「そのトレードマークは不寛容である」と述べています。
アメリカの政治専門サイト「ポリティコ」(Politics, Policy, Political News: POLITICO) は5月27日、トランプ政権が各国の大使館などに対して、合衆国内の大学への留学を希望する人たちの学生ビザ(visa) 取得に向けた新規受け付けを一時停止するよう指示したと報じました。この対象となるのは、一般的な学生向けの「F-1ビザ」と語学研修などの「Jビザ」と伝えています。「面接予約の停止は追って案内があるまで続く」と発表しています。ただし、すでに受け付けた面接予約はそのまま進めてよいとしています。
合衆国の大学は8~9月にかけて新年度が始まります。留学希望者は今の時期からビザ申請を本格化させるのです。CNNテレビは「タイミングは偶然ではない。収入を留学生に頼る多くの大学に打撃を与えるためだ」との専門家の意見が伝えられています。トランプ政権は、反ユダヤ主義的な投稿を行ったり、親パレスチナの抗議活動に参加したりした学生のビザを取り消すなど、締め付けを強めています。ルビオ(Marco A. Rubio)国務長官も「ビザは固有の権利ではなく、与えられた特典だ」と述べ、審査を厳格化する考えを表明しています。5月20日の上院公聴会では、彼は現政権発足後に300件以上の学生ビザなどを取り消したと明らかにしています。
以前、この欄で「大統領令と連邦教育省の閉鎖」という話題を取り上げました。このようにトランプ政権やその他の保守派政治家が「アメリカ連邦教育省(Department of Education)の廃止」を謳っていますが、結論からいえば大統領が単独で教育省を廃止することはできません。これは、連邦議会(Congress) の承認が必須だからです。連邦教育省は、1979年に制定された連邦法(Department of Education Organization Act)に基づいて設立されました。この法律を変更または撤廃しない限り、教育省を廃止することはできません。教育省の設立は法律に基づくものであることです。教育省を廃止するには、以下のようなプロセスが必要です。
特別支援教育の分野でに有名な立法は「障がい者教育法 (Individuals with Disabilities Education Act: DEA)」です。通称、「Public Law 94-142」といわれています。障がいのある生徒一人ひとりのニーズを満たすために特別にデザインされた教育で、無償で提供されています。次にタイトルIXとは、1972年に制定されたアメリカの連邦法で、連邦政府から財政援助を受ける教育機関における性別に基づく差別を禁止するものです。具体的には、教育プログラムや活動への参加を性別を理由に排除したり、その恩恵を拒否されたり、差別を受けたりすることを禁じています。
日本とギリシャの財政事情の共通点は債務の大きさです。経済協力開発機構(Organisation for Economic Co-operation and Development: OECD)によれば、日本の債務は国内総生産(gross domestic product: GDP)の240%相当といわれます。ですが日本はドイツに次ぐ債権国で、資産から負債を引くと、対外純資産は543兆500億円となっています。総資産は1京3288兆円であり、政府の純資産は潤沢なのです。現在の日本国債が抱える問題は、需要と供給の不均衡にあります。財政投資が少ないために増税によって政策経費を賄おうとし、資金が市場に出回らず、個人の所得も増えないのです。政府の財政状況は、貸借対照表の資産と負債との対比で把握すべきなのですが、首相のように国債とGDPとの対比だけで説明するのは間違いなのです。国際通貨基金(IMF)の資料では、日本の財政状況を資産と負債でみれば、G7の中で2番目に良いと発表されています。ちなみに貸借対照表から見える財政状況が最も良い国はカナダ、次に日本、ドイツ、アメリカと続きます。
2000年に連邦議会は国民追悼の法(National Moment of Remembrance Act)を可決し、午後3時に立ち止まって追悼するよう人々に呼びかけました。Memorial Dayの日には、国旗が掲揚され、正午まで厳粛に半旗に下げられます。その後、その日の残りの時間は全譜面に掲げられます。国立メモリアルデー・コンサートNational Memorial Day Concert は、合衆国議会議事堂(Capitol)の西芝生で開催されます。これは必見ものです。是非クリックして楽しんでください。
街の通り沿いにや家には星条旗が掲げられ、商業施設の広告にも「Memorial Day Sale」の文字が見えます。報道では、退役軍人のインタビューや追悼関連の特集が組まれます。「Remember and Honor(戦没将兵を忘れず敬意を表しよう)」というメッセージが多く見られます。このようにアメリカでは、戦没者の追悼が社会的に“見える形”で行われます。日本とは違い、軍服を着た人が日常に溶け込んでいます。さらに退役軍人が地域のヒーローのように扱われます。学校でも子どもたちは、国旗の意味や国家への忠誠心を学んでいます。小学生から国歌を教えられます。
Memorial Dayは他方で、アメリカでは夏の始まりを告げる祝日でもあります。家族親戚が集まってバーベキューを楽しむ「家族で過ごす週末」としての意味合いも強いです。この「国のために戦った人への敬意」と「家族や日常の自由を大切にすること」が同居しています。「祈り」と「自由を楽しむ」ことが矛盾ではなく、「自由には代償がある」という歴史的な意識が根付いているのかもしれません。
2010年、カリフォルニア州のポスドク研究者は、差別やセクハラの疑いがある場合に、正式な苦情処理手続きを通じて苦情を申し立てる権利など、より良い労働条件を確保するため、「UAW Local 5810」という労働組合を結成します。カリフォルニア州では、新規ポスドクは少なくともアメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)のポスドク最低賃金(2019年時点で5万ドル)を受け取り、多くのポスドクはNIHのガイドラインにそって年間5%から7%以上の昇給を受けています。
今アメリカの大学は夏休み。そこに降ってわいたようなニュースです。数カ月後に授業が始まるまで、入学が許可された海外からの新入生や留学生は、トランプ政権によって「留学生受け入れ資格を取り消されるかもしれない」という事態です。特に、ハーヴァード大学はその騒ぎの渦中にあります。ハーヴァード大学に在籍する留学生は約6,800人。在学中の留学生は転校しなければ、アメリカでの滞在資格を失うかもしれないようです。それに対してハーヴァード大学は5月22日に国土安全保障省(Department of Homeland Security)が出したビザの剥奪?という措置が合衆国憲法修正第1条および適正手続きの権利などを侵害しているとして、マサチューセッツ州の連邦地方裁判所(連邦地裁)に訴状を提出しました。
少し遡って4月14日にトランプ政権は、ハーヴァード大学に対して、多様性重視のプログラム(Diversity, Equity & Inclusion:DEI)の廃止を迫っています。これは、ハーヴァード大学やコロンビア大学の多様性を重視した学生選抜、反ユダヤ主義の活動に関与した学生への処分を求め「学生・交流訪問者プログラム」(Student and Exchange Visitor Program)の認定の取り消しを伝えるのです。すでに130以上の大学で1,000人以上の留学生のビザが取り消しにあっているという報道もあります。
ハーヴァード大学の研究に対する政権の圧力は酷いものがあります。ハーヴァード大学に対して、トランプは22億ドル(3,200億円)の助成金を凍結し、マサチューセッツ州の医療研究向けの助成金10億ドル(1,400億円)の差し止めも検討しています。科学誌ネーチャー(Nataure)によりますと、研究プロジェクトが停止されれば、研究者の約1,600人の75%が海外への移動を考えているとあります。さらにアメリカ航空宇宙局(NASA)に対して研究予算の半減を提示しています。海洋大気庁 (National Oceanic and Atmospheric Administration: NOAA)の職員を20%削減する計画も発表されています。そうした事情を背景としてか、ヨーロッパ連合(EU)の委員長を務めているウルズラ・フォンデアライエン(Ursula von der Leyen)は、5億ユーロ(8億1,000万円)という科学者を招聘するパッケージを発表しています。アメリカの有名大学などで働く研究者を招こうという意図です。