音楽の楽しみ 合唱曲の数々 その47  「Mormon Tabernacle Choir」

街を歩いていると、時々自転車に乗った二人組の青年宣教師に会います。ヘルメットを被り背広を着ています。彼らを日本に派遣しているのはユタ州の州都ソールトレイク (Salt Lake, Utah)にある末日聖徒イエス・キリスト教会 (Church of Jesus Christ of Latter-day Saints)です。通称モルモン教会といわれています。

dt.common.streams.StreamServer boliviasaltlakes2_450x250 tslc11この教会のサイトによりますと、1830年にアメリカ合衆国にてジョセフ・スミス・ジュニア (Joseph Smith, Jr) によって創始されたとあります。この教会では預言者はジョセフ・スミス、二代目はブリガム・ヤング (Brigham Young) と列しています。

教会の呼称は、教典のひとつであるモルモン書(Book of Mormon) に由来します。教義においてはキリストおよび死者の復活、キリストの再臨、「福千年」を説いています。福千年」とは救い主の再臨に続く1,000年間(ヨハネの黙示録 20章4-6節: Book of Revelation) を指します。「教義と聖約」といった独自の信条を持ち、また現代のキリスト教主流派が重要視する三位一体を否認しているために、カトリックやプロテスタント(Protestant)、正教会等では異端としています。

しかし、モルモン教会はアメリカでは多くの信徒がいて、その規模では既存の教会に方を並べるくらいです。日本各地で伝道し多くの会堂が建っています。建物には十字架がないのが特徴です。

モルモン教会の幕屋聖歌隊 (Mormon Tabernacle Choir)の創立は1847年。360名という大規模な合唱団として世界的に活躍し、レコーディングやテレビ出演によって多くの曲を歌っています。信徒による独自のオーケストラも結成され聖歌隊と一緒に公演することで知られています。聖歌隊もオーケストラも家族ぐるみ、あるいは何代もの世代で参加している人が多いといわれています。どちらのメンバーもアマチュアです。

教育活動も熱心で、ブリガム・ヤング大学 (Brigham Young University : BYU)も創立しています。信徒でない者も入学が可能です。学生数は34,000名です。元マサチューセッツ州知事で共和党大統領候補となったミット・ロムニー (Willard Mitt Romney) もモルモンの信徒です。ブリガム・ヤング大学は、世界中に若い宣教師を派遣しています。それは外国語習得プログラムが充実しているからでもあります。教職員や学生は、服装や身だしなみ等、厳しい校則を遵守するように指導されます。飲酒、喫煙、その他、嗜好品を嗜むことも禁じられています。

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音楽の楽しみ 合唱曲の数々 その46 「Concordia Choir」

0e3995127_1423002204_lcms-and-cross-logo-cropped Map_of_Lower_Saxony_340x360 ULC-Holy-Supperミネアポリス (Minneapolis, Minnesota)から北西に車で3時間のところにムアーヘッド (Moorhead) という街があります。そこに位置するのがコンコーディア・カレッジ (Concordia College) です。アメリカ福音ルーテル教会 (Evangelical Lutheran Church in America)の系列にあります。”Concordia”とは「調和」とか「和合」という意味です。

創立は1891年。ノルウェー (Norway) からの一握りの福音系宣教師や会衆がつくった小さな私立学校が基となります。もとはイギリス国教会系(Episcopalian Bishop) の学校だったのですが、やがて男女共学のカレッジとして英文学、自然科学、数学、音楽などの学科をつくります。最初は3名の教官と12名の学生で始まったという記録があります。

1892年には学生寮が建設され、Rasmus Bogstadという牧師などの尽力によって寄付を集め、カレッジの建物を整えてきます。ここにある1920年創立の「Concordia Choir」はアメリカ合衆国で最も優れたのアカペラ合唱団といわれています。その証左の一つがKing’s Singersとの共演やレコーディングです。ニューヨークのカーネギーホール (Carnegie Hall)、ワシントンDCのケネディセンター (Kennedy Center) などで公演するほどです。

テレビ出演の他、レコーディングによる多くのCDも出していて、その売り上げは iTunesをはじめとして目覚ましいといわれます。1986年から「Concordia Choir」を指揮するのはルネ・クラウセン (René Clausen)。この指揮者の類い希な指導によって「Concordia Choir」は育てられ、全米で知られるようになりました。クラウセンは自ら作曲や編曲活動もしています。

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音楽の楽しみ 合唱曲の数々 その45 「St. Olaf Choir」

03d2b0c8ba4f74a2f3f437f5d0338bd6 Christmas-Norway_Shop 8a62f5-20141204-saint-olaf-choirミネソタ (Minnesota) の州都セントポール (St. Paul)から南60キロの所に人口2万人のノースフィールド (Northfield)という街があります。そこにあるのがセント・オラフ・カレッジ (St. Olaf College) です。学生は約3,000名で全米のリベラル・アーツ・カレッジの中で上位50位前後に位置する全寮制の単科大学です。この大学の聖歌隊、「St. Olaf Choir」は全米で知られるア・カペラ合唱団です。

セント・オラフ・カレッジの創立は1874年。ノルウェー (Norway) から移民した人々が造った大学です。アメリカ福音ルーテル教会 (Evangelical Lutheran Church in America) が運営の母体となっています。オラフという名称は、ノルウェーの国王の名前に由来しています。初代の学長は、ベルントムス( Rev. Bernt J. Muus) というルーテル教会の牧師です。

1800年代、ミネソタやウィスコンシンなど中西部(Midwest) に多くのスカンジナビア系 (Scandinavia)の人々が移民としてやってきて開拓したところです。酪農、農業などに適した気候や風土に似ているからです。スカンジナビアとは、今のスウェーデン (Sweden)、ノルウェー、デンマーク (Denmark)、フィンランド (Finland)などの国々を指します。

本題の「St. Olaf Choir」の紹介です。聖歌隊が組織されたのは1912年ですから100年以上の歴史があります。最初の指揮者はノルウェー生まれのFredrik M. Christiansenという人で編曲家でもありました。以降、30年間にわたり聖歌隊を指揮しながらセント・オラフ・バンド (St. Olaf Band)も創立します。聖歌隊は、海外での演奏活動も活発です。ノルウェー、フランス、韓国、ニュージーランド、オーストラリアなどを訪問して絶賛を浴びています。全米の主要な都市での演奏会も好評をえています。

12月に開かれる「St. Olaf Christmas Festival」は、礼拝儀式において音楽を重視する伝統を受け継ぐ集いとなっています。

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音楽の楽しみ その44 聖歌隊 (Choir)

06500_all_06-16-choir leipzig thumbRNS-LUTHER-CHURCH3今日、ローマ・カトリック教会 (Roman Catholic Chuch)、ギリシアやロシア正教会 (Greek & Russian Orthodox Chuch)、聖公会 (Episcopal Church)、ルーテル教会 (Lutheran Church) など礼拝を重視する諸教会では、聖歌隊が礼拝に欠かすことのできない存在となっています。どの教派の教会においても聖歌隊の役割は、神を賛美するという点では同じなのですが、実際の礼拝に占める比重や役割などは教義や典礼観の違いを反映して異なります。

たとえば、ルーテル教会では必ずオルガンがありそれを伴奏として聖歌隊や全会衆によって賛美歌であるコラール (Choral)が歌われます。ギリシャ正教会 (Orthodox Church)聖歌は原則として無伴奏声楽が礼拝で奏でられることを既に述べました。

特別な礼拝式では、小さなオーケストラが編成されることもあります。クリスマス(Chiristmas) やイースター (Easter)などです。礼拝がさながら音楽会のようになります。オルガンの壮大な響きとともに礼拝堂は華やかな雰囲気となります。モルモン教会の幕屋聖歌隊 (Mormon Tabernacle Choir) も高い音楽性や編成の大きさで知られています。

世界の聖歌隊としては、ドイツのライプツィヒ (Leipzig) 聖トーマス教会聖歌隊 (St. Thomas Church Choir)、ドレスデン聖十字架合唱団 (Dresdner Kreuzchor)、ウェストミンスター聖歌隊( Westminster Chorus)、フランスのソレム修道院聖歌隊 (Choir of the Abbey of Solesmes)、スペインのモンセラート修道院聖歌隊 (Escolania de Montserrat)、(Choir of the Abbey of Solesmes) 、レーゲンスブルク大聖堂少年聖歌隊 (Regensburg Cathedral Choir)、パリ・木の十字架少年合唱団 (Little Singers of the Wooden Cross) 、ウィーン少年合唱団 (Wiener Sangerknaben) などが知られています。中でも1498年創立というウィーン少年合唱団は毎年のように日本で公演しています。私も1960年に北海道の旭川での公演で聴きました。

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音楽の楽しみ その43 合唱曲の数々 「Pentatonix」

maxresdefault jazz01 pentagon今回は少し趣向を変えてポピュラー音楽です。ポピュラー音楽でも「ア・カペラ」は使われます。”In chapel style”というア・カペラの意味が時代とともに解釈されてきたからです。「ア・カペラ」は、小人数グループが無伴奏で合唱することの他、メロディや旋律が一時的に停止したブレイクの空白部分に歌唱部分を挿入したりします。クラシックの和声的な構成だけでなく、ジャズ・ハーモニーでの構成を伴うこともあります。

楽曲は聖歌に限らず、リズムアンドブルース、ジャズ、ロック、ポップスなどさまざまなジャンルの音楽が取り入れられています。またクラシックの合唱とは異なり、マイクの使用を前提とするため、声でのパーカッション効果、ヒップホップなどのサウンド、トランペットやギターなどの楽器の音を真似るなど、さまざまな表現手法を用いています。「ア・カペラ」は時代とともにこうも変化するものか、、これが進化かと考えてしまいます。

ペンタトニックス (Pentatonix) という五人の「ア・カペラ」グループをご存じでしょうか。2011年にテキサス州出身の歌手で結成されしたグループです。Pentatonixとは「五音音階 (Pentatonic scale)に由来しています。五音音階とは、「ド・レ・ミ・ソ・ラ」(C, D, E, G, A) が中心の音程のことです。Pentagonは五角形という意味です。別称、建物が五角形のアメリカ国防総省を指します。

2011年にNBCのア・カペラ・オーディション番組「The Sing Off」に出演し注目されます。機械的でハッキリした音をア・カペラで大胆にアレンジした表現を特徴とするグループです。2013年末にリリースされたア・カペラ・カバー「Daft Punk」の「One more time」、「Digital Love」、「Get lucky」のメドレーは素晴らしい人気を博します。「Love Again」もコーラスの素晴らしさを楽しめます。アップビートのリズム感も心地よいです。ペンタトニックスは超絶技巧派アカペラ・グループの筆頭ともいえるでしょう。

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音楽の楽しみ その42 合唱曲の数々 A cappella

parishes-holy-cross-church-williamsport-pa Rachmaninoff_1906 hqdefault今回は合唱とア・カペラ (a cappella) の話題です。ニューグローヴ世界音楽大事典 (New Grove Dictionary of Music and Musicians) によりますと、中世ルネサンス (Renaissance) 時代になると作曲家が教会を舞台にして、複雑で豪華な曲作りを競い合ったとあります。このため、礼拝儀式か音楽会なのかが分からない状態となり、また肝心な歌詞が聞き取りにくくなっていきます。

これを問題視したヴァティカン (Vaticano) は、さまざまな教会改革の一環として、教会音楽の簡素化に取り組みます。ヴァティカンはカトリック教会と東方典礼カトリック教会の総本山。こうして生まれたのがア・カペラ (a cappella) 様式の楽曲です。それを担った代表的な作曲家がイタリアのジョヴァンニ・パレストリーナ (Giovanni da Palestrina) やフランスのジョスカン・デ・プレ(Josquin Des Prez)です。

イタリア語のa cappella (ア・カペラ) は、英語の”in chapel style” という意味ですから「聖堂で」とか「礼拝堂において」と訳されます。これが名詞句化して、教会音楽の1つの様式を指すようになります。ヴァティカンの教会改革の一つは、「a cappella」の創作ということだったようです。

ルネサンス期にかけて盛んになるのが、ポリフォニー (polyphony) という 複数の独立した声部 (パート)からなる音楽形式です。一つの声部しかない楽曲はモノフォニー (monophony)と呼ばれます。ア・カペラ様式の特徴は、曲の全体または一部がポリフォニーとなっていることです。簡素ですから歌詞の聞き取りが容易になります。複数の声部によって、無伴奏または、歌のメロディーをなぞる程度の簡単な伴奏、たとえばリコーダを背景に歌詞をつけても歌われます。

しかし、ギリシャ正教会 (Orthodox Church)聖歌は原則として無伴奏声楽です。その理由は「ことば」(text)による礼拝が重視されてきたからです。ことばで表された信仰上の教義や霊的な導きは、音楽を伴うことで意識に深く刻まれ、霊的な感情へと導かれるといわれます。正教会の礼拝はほとんどが歌で満たされるといってもよいくらいです。説教以外に普通の話し方は行われず、祈祷書のテキストはさまざまな旋律に乗せて歌われます。ルーテル教会の礼拝はオルガンが必ず奏でられ正教会が音楽を重視するのとは同じです。無伴奏声合唱という意味では正教会の聖歌も「ア・カペラ」といえるのですが、正教会ではなぜか「ア・カペラ」ということばを使いません。

「ア・カペラ=無伴奏合唱」というイメージが一般に浸透し、さらには教会音楽以外の無伴奏合唱や無伴奏ボーカルアンサンブル (vocal ensemble) を指す言葉として「ア・カペラ」が広く使われるようになりました。無伴奏での独唱を「ア・カペラ」と呼ぶ場合もありますが、それは無伴奏ソロと呼ぶべきものです。本来の「ア・カペラ」ではありません。

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音楽の楽しみ その41 合唱曲の数々 Intermission  堀内敬三と「音楽の泉」

img_0-1 img_0 a121949年9月に始まった番組「音楽の泉」がまだ続いています。終戦間もないことです。これはラジオ番組です。NHKでは最長寿番組だそうです。ピアノのテーマ曲が番組の始めと終わりに流れてきます。

この懐かしい曲はシューベルト (Franz Schubert) の「楽興の時 第3番 ヘ短調 (Moments Musicaux NO 3 F Moll 」。F Mollとはヘ短調のことです。通常、クラシックの音楽番組は基本的にFMで放送されますが、今は数少ない中波からも流れてきます。この放送はもう無くなったと思いこんでいましたが、、、まだまだ健在なのです。

「音楽の泉」の初代の解説者は堀内敬三、二代目が村田武雄という音楽評論家でした。現在の解説者は立教大学名誉教授の皆川達夫氏です。「旧制高校時代に召集されながらも、古典文学を読み美術作品に触れたこと、戦後まもなくアメリカやヨーロッパに留学した経験が音楽知識の泉の根源となった」と述懐されています。

「楽興の時 第3番」は、なにかシューベルトが即興で作ったかのような、軽やかな曲です。左手の単調な伴奏に右手の主題が心地よく響きます。とても「ヘ短調」とは感じられません。今もラジオ第一で毎週日曜日午前8時5分から楽しめます。

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音楽の楽しみ その40  合唱曲の数々  Don Cossack Choir

20 IMG_4908 hqdefaultロシア革命の背景は非常に劇的なものです。ロマノフ朝 (Romanov) の絶対専制の統治は封建的な社会体制の維持を意味しますが、ロシアにも波及する産業革命により工業労働者が増加し、社会主義勢力の影響が浸透していきます。強大な権威と支配、農奴制度などによって民衆の貧困と社会不安が広がります。さらに厳しい気候が農業生産の難しさに拍車をかけます。

ロシア帝国にドン・コサック軍 (Don Cossack)がありました。この軍隊の名称は、根拠地を流れるドン川 (Don River) に由来するといわれます。日露戦争当時に、北満にてコサック軍との衝突があったことは、「坂の上の雲」でも描かれています。ロシア帝国の支配に、たががはずれてくると内戦状態になります。やがてドン・コサック軍はロシア帝国に対し敵対行動をとっていきます。ですが皇帝ピョートル (Pyotr I Alekseevich)の軍に敗れた後、ドン・コサック軍の副官、セルゲイ・ジャーロフ (Serge Jaroff) や軍の一部はオスマン帝国 (Ottoman Empire) などへ逃亡します。オスマン帝国は現在のトルコです。

今はイスタンブール(Istanbul)であるコンスタンチノープル (Constantinopolis)に近い捕虜収容所にジャーロフや難民は落ち着きます。そこで結成したのが男声合唱であるドン・コサック合唱団(Don Cossack Choir)といわれます。やがてトルコの西北にあるブルガリア(Bulgaria)の首都ソフィア(Sofia) において演奏活動を始めます。その最初の演奏会場となったのは、ブルガリア正教会の主教会であるアレキサンダー・ネフスキー大聖堂 (Alexander Nevsky Cathedral) でした。ネフスキーはロシアの英雄的な軍人だったのですが、ロシア正教会から列聖され聖人となります。

その後、ドン・コサック合唱団は数奇ともいえる演奏活動を始めます。1923年7月にオーストリア (Austria) のウィーン (Vienna)にあるホーフブルク宮殿 (Hofburg Palace) にてヨーロッパにデビューします。第二次大戦が近づくと、合唱団はアメリカへと演奏の拠点を移します。こうした経過は、活動を支援するプロモーターや音楽関係者の支援があったからといわれます。

アメリカで人気を得たのは、ロシア正教の聖歌、レクイエム (requiem)、民謡、軍歌、オペラ曲などをアカペラで歌いコサックの衣装をまとったコサックダンスを舞台で披露するエンターテイナーでもあったからでしょう。DVDでドン・コサック合唱団の演奏を聴きますと、テナーの素晴らしさとローベースの深みと力強い響きが圧倒的に伝わります。セルゲイ・ジャーロフの60年余りの指揮も特筆されることです。

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音楽の楽しみ その39 合唱曲の数々 Roger Wagner Chorale

rogerwagner Wagner-Roger-04 originalアメリカを代表する合唱団にロジェワグナー合唱団 (Roger Wagner Chorale) があります。この合唱団は、ロバートショウ合唱団 (Robert Shaw Chorale) と同様に活動を終えたのですが、幅広いレパートリーや世界中で演奏活動や録音活動したことで知られています。

フランスはパリ (Paris) で生まれたロジェ・ワグナーは、教会のオルガニストである父から薫陶を受けます。1929年にアメリカに移民します。12歳でロジェ・ワグナーはロスアンジェルス (Los Angels: LA)の西ハリウッドにあるカトリックのセント・アンブローズ教会 (St. Ambrose Church) のオルガニストとなるほど音楽の才能を発揮し始めます。

1937年にはハリウッド (Hollywood) でMGMコーラスに入部し音楽活動を本格的に開始します。その後、セント・ヨセフ教会 (St. Joseph’s Church)の音楽ディレクターになります。この教会で、子供の聖歌隊を組織しその実力は広くカリフォルニアに知られることになります。1945年には、ロスアンジェルスユース合唱団 (Los Angels Concert Youth Chorus) を結成します。1947年には、この合唱団でマドリガルを歌っていた団員を組織してロジェワグナー合唱団を作るのです。ちなみに、マドリガルとは中世イタリアで生まれた五声部無伴奏の合唱、あるいは世俗声楽曲のことです。

ロジェワグナー合唱団はラジオやテレビ出演、演奏会、映画のサウンドトラックなどで多彩な活動をしてアメリカ屈指の合唱団の地位を確立します。やがてロジェワグナー合唱団から多くの歌手がうまれます。例えば、マニー・ニクソン (Marni Nixon)です。”My Fair Lady”、 “West Side Story”、さらに”The King and I” (王様と私)などのミュージカルで歌います。コントラルト (contralto) のマリアン・ホーン (Marilyn Horne)もそうです。

ワグナーは、音楽教育にも貢献します。1951年から1966年まではロサンゼルスのメリーマウント・カレッジ (Marymount College)の音楽学部長となり、1959年から1981年まではカリフォルニア大学ロスアンジェルス校 (UCLA)で教鞭を執りました。1963年以来、十数回にわたって来日し、各地で公演旅行をしています。

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音楽の楽しみ その38 合唱曲の数々 Robert Shaw Chorale

Shaw-Robert-100 MI0001685821 4624124719_1ccc62bcec_b私は、男声合唱やア・カペラのグループの曲をCDやネットでしばしば楽しみます。男声合唱といえば1960年代はロバートショウ合唱団 (Robert Shaw Chorale) やロジェワグナー (Roger Wagner Chorale) 合唱団の演奏をよく聴いたものです。最近はこの二つの合唱団の曲が流れてこないのが寂しいです。男声合唱は少し時代遅れなのでしょうか。

カリフォルニア出身のロバート・ショウは学生時代に男声合唱団 (Glee Club) を組織し放送活動を始めたというのですから、合唱への思い入れが伝わるというものです。1949年、彼が33歳のときにロバートショウ合唱団を設立します。この合唱団は精力的に国内外の演奏旅行に出掛けたり録音活動を始めます。曲に応じて女声も加わり、30名から60名の団員を擁しました。団員はニューヨークのジュリアード音楽院 (The Juilliard School) や市内の音楽学校の修了生で構成されました。

合唱団は、アルツール・トスカニーニ (Arturo Toscanini)指揮のNBC交響楽団 (NBC Symphony Orchestra) などとの共演で全米屈指の合唱団の地位を確立します。バッハ (Johann Sebastian Bach) 、黒人霊歌や民謡、ブロードウェイ劇場音楽など幅広いレパートリーを持っていました。

ロバート・ショウは編曲家としても有名で、宗教曲から「シーシャンティ (sea shanty)」 など多彩なジャンルの曲を合唱曲に仕上げて歌います。「シーシャンティ」とは船乗り労働歌のことです。「クリスマス賛歌とキャロル )Christams Hymns & Carols) 」というレコードは大ヒットし、アメリカ録音協会から金賞を受賞し、米国の週刊音楽業界誌である「ビルボード (Billboard Magazine)」でも高くランクされました。 1958年に発表された45分の「霊歌(Spirituals)」という録音は実に心に残るものです。

ロバートショウ合唱団の特徴といえば、均整化された響き、声楽部門の調和、表現の繊細さ、躍動する旋律などで聴衆を魅了しました。最高の男声合唱団でしたが、1965年に活動を終えます。

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