ウィスコンシンで会った人々 その23 囲碁と子どもたち 

ウィスコンシン大学の学生会館はMemorial Unionという。宿泊施設、講演や宴会場、会議室、ラウンジ、カフェテリア、キャッシュバー、アイスクリームスタンドなど大抵のものは揃っている。教職員の憩いの場となっている。Lake Mendota湖畔のテラスでは、のんびりと日光浴をしながら本を読んだり、子どもを遊ばせている。

久しぶりでMemorial Unionに出掛けワインを飲みながらボーッと湖を眺めていると口元が綻ぶ。ジョギングをする者、ウィンドサーフィンをするものもいる。大学は夏休みに入り静けさが戻っている。ラウンジに戻り誰か囲碁を打っている人がいないかと探す。かつては必ず碁盤を囲む中国人や韓国人の留学生がいた。だが誰も囲碁をする者はいない。

囲碁の話題である。毎週木曜日の放課後、近くの小学校で囲碁の手ほどきをしている。小学一年から四年までの生徒が三々五々集まってくる。「放課後子ども育成事業」という活動の一環だ。囲碁を教えるというよりは、碁盤で石取りや陣取りのゲームをしているようなものだ。少し黒石や白石の置き方や石の取り方などに慣れてきた子どもには、囲碁のルールを教えることにしている。だが、こちらが工夫したりしないと「面白くない、、、」といって立ち去っていく。塾があるとか外で遊びたいという。

市ヶ谷に日本棋院がある。そこに学校普及事業というのがあって、青少年の健全育成として囲碁を学校教育に取り入れるよう自治体の教育委員会に働きかけている。そのために学校囲碁指導員を育成している。筆者もその講習会に参加し資格を得た。だが、いざ子どもを前にして囲碁を教えようとすると、一筋縄ではいかないことを体験している。子どもは、黒石と白石を前にすると、大変な創造性が働く存在であることを感じている。とんでもない遊びを始める。オセロに似たようなゲームである。囲碁はそっちのけで、つきあうようにしている。そして囲碁に仕向ける。

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