旅のエピソード その5 「Yes, Noとトップ!」

院生との研修視察旅行では半年前から、先方と交渉を始めます。特に学校の訪問が主なので、こちらがなにを調べたいか、どんな人に会いたいか、どんな資料が欲しいか、などを相手に伝えることからスタートします。視察旅行では、ゼミ生以外にも講座の院生に広く呼びかけて参加を募ります。院生のほとんどは教師なので、研修資金にはあまり不自由はしません。しかも、大学院で研究する身分ですから時間はたっぷりあります。

研修旅行に際しては、こうした院生の世話を私は余りしません。ホテルのチェックインや相部屋の決め方、訪問先への道を尋ねることなどは院生にやってもらうことにしています。皆れっきとした大人なのですから、自分でやって貰うのです。英語というハードルはそこにはありますが、、、今回の話題は外国の空港での手荷物カウンターでのやりとりです。

手荷物を預けるとき、空港の係員は、旅行者がなにか不審なものを持ち込まないかを調べます。そこで簡単な質問をします。
 係官 「おかしなものを持っていないか?」
 院生 「はい(Yes)」
 係官 「なにを持っているのか?」
 院生 「いいえ(No)」
 係官 「、、、、、、、」

係官は、怪訝な顔をしてやおらスーツケースを調べ始めました。そしてビニールに入った白い粉のようなものをとり出しました。これは一大事です。Yesと言ってしまったからです。
 係官 「これはなにか?」
 院生 「これはTop,,Top,,」

院生は粉石けんという単語を知らなかったのです。石けんのソープ(soap)ではなく「ディタージェント(detergent)」という単語が正解です。Topとは洗濯石けんの名前です。院生は係官と一緒に別室行きです。それを私たち一行はニヤニヤして見つめます。私もあえて院生に助け船を出すようなことはしません。

やがて院生がスーツケースと一緒に戻ってきました。無事解放されたようでした。しかし、再度の検査で別な係官とまたYes, Noのやり取りをやってしまったのです。係官同士であきれていましたね。「この人騒がせなジャップめ」とでも言いたかったでしょう。あとで、一行は「トップはアカン!」、「トップは持つな!」といって院生らと腹を抱えて笑いました。外国へは粉石けんは必要ありません。ドラッグと間違われます。浴室にある石けんで洗濯すべきでしょう。