心に残る名曲 その七  「3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調」

バロック時代中頃の1680年頃に作曲されたカノン(canon)様式の作品です。カノン様式とは、複数の声部が同じ旋律を異なる時点からそれぞれ演奏されます。輪唱は同じ旋律を追唱しますが、カノンは異なった音程で始まるところが違います。

カノン様式を指す「3つのヴァイオリンと通奏低音のためのカノンとジーグ ニ長調」(パッヘルベルのカノン」(Canon in D) )の第1曲。この曲は、パッヘルベル(Johann Pachelbel)のカノンの名で広く親しまれており、パッヘルベルの作品のなかで最も有名で、広く知られている作品といわれています。通奏低音とは、低音の上に即興で和音を補いながら伴奏声部を完成させる技法とされヨーロッパの17,18世紀のバロック時代に広く用いられたようです。

パッヘルベルは17世紀、バロック期のドイツの作曲家であり、南ドイツ・オルガン楽派の最盛期を支えたオルガン奏者で教師でもありました。宗教曲や非宗教曲を問わず多くの楽曲を制作し、コラール前奏曲やフーガの発展に大きく貢献したところから、バロック中期における最も重要な作曲家の一人に数えられました。

パッヘルベルの音楽は技巧的ではなく、北ドイツの代表的なオルガン奏者であるブクステフーデ(Dietrich Buxtehude)のような大胆な和声法も用いず、旋律や調和の明快さを強調し、明快で単純な対位法を好んで用いたようです。他方、ブクステフーデ同様に、教会カンタータやアリアなどの声楽曲において楽器を組み合わせた多様なアンサンブルの実験も行ったといわれます。

通奏低音とは、チェロ又はヴィオラダガンバ、またはその両方、ヴィオローネ、チェンバロ、リュート、ギター、オルガンなどの任意の組み合わせによる即興的な演奏方法といわれます。