心に残る一冊 その6 「最後の一葉」

高校の時に受験勉強を兼ねて英語で読んだもので、私の青春の忘れられない作品をいくつか紹介します。原名は「The Last Leaf」といいます。実に短い小説です。作者はオー・ヘンリー(O. Henry)。彼の本名はWilliam Porterといいます。

小説の舞台は、ニューヨークのワシントン・スクエア(Washington Square)にある芸術家が集まるアパートです。そこに二人の貧しい画家、ジョンジー(Johnsy)とスー (Sue)が暮らしています。生活は苦しいながら二人は助け合って生きています。ある日ジョンジーは肺炎を患います。医者から「生きる気力を亡くしている。このままでは回復する可能性は極めて少ない」とスーに告げます。人生に諦めかけ、なげやりになっていたジョンジーはベッドのうえで、窓の外の煉瓦の壁に這う枯れかけた蔦の葉を数えます。そしてスーに言い出すようになります。「あの葉がすべて落ちたら、自分も死ぬのだわ。」

老画家のバーマン(Behrman)が彼女たちの階下に住んでいます。酒が好きで、周りの者に「いつか傑作を描いてみせる」と言いふらすのです。そして絵筆を握らず人を小馬鹿にするような生活をしています。やがて老画家は、「葉が落ちたら死ぬ」とジョンジーが思い込んでいることを伝え聞きます。

ある夜、一晩中激しい風雨が吹き荒れ、ジョンジーは蔦の葉が一枚、また一枚と散るのを眺めます。翌朝、壁に這う蔦の葉は一枚になってしまいます。その次の夜にも激しく風雨が吹きつけます。ですが翌朝になっても最後の一枚となった葉が壁にへばりつくのを発見します。ジョンジーは奇跡的に生きる気力を取り戻すのです。

画家のバーマンは肺炎になり亡くなります。最後の一葉こそが、バーマンがいつか描いてみせると豪語していた傑作だったことをジョンジーとスーは知るのです。この一葉は息吹を与え命を奮い立たせる力があったのです。