ユダヤ人と私 その21 タルムードの教えから

一般には、旧約聖書を分かり易く解説したものが「タルムード(Talmud)」だと言われています。このことに関してラビであるマーヴィン・トケイヤー師(Marvin Tokayer)は「タルムード的」という言葉を頻繁に使い、しきりに賞賛しています。ユダヤ教の霊的な指導者ですから当然のことといえます。トケイヤー師は在日米空軍の従軍牧師(chaplain)として日本に滞在し、退役後は日本ユダヤ教団に勤務し1976年まで日本に滞在しています。その間日本語で20冊の本を著しています。

「タルムード」は素晴らしい書物といわれていますが、全巻を日本語に翻訳されて出版されていません。書店が日本語に翻訳する許可を求めても、発行元はそれを許可しないといわれています。 どうしてかといいますと、ユダヤ以外の民族、いゆる異邦人にとって不快感を抱くに十分な内容もそこに書かれているからだといわれていますが、真偽は定かではありません。

「タルムード」は「口伝律法」と呼ばれています。文字通り古代から言い伝えられてきた教えです。口伝律法が必要だったのは、現実の状況に適合する規定をつくるために成分律法と直接関係のない広範囲な権威を認めなければならなかったからです。

平凡社の「世界大百科事典」によりますと「タルムード」は三つの内容となっています。第一はミドラッシュ(Midrash)です。これはモーセ五書であるトーラ(Torah)本文分の講解や解釈です。第二はハラハ(Halakhah)と呼ばれ古から受け入れられてきた慣習や権威ある律法学者の判定や裁定のことです。Halakhahの原意は「歩き方」といわれています。第三はハガダ(Haggadah)です。これは説話や民話、伝説など基づく教えのことです。

旧約聖書に書かれていない物語や様々な逸話は、ユダヤ教のあり方、思想、歴史、生活、人物などに及びます。こうした逸話の概念用語は「アガダ(Aggadah)」と呼ばれ、その意味は「語り」といわれます。口伝律法はユダヤ教の口伝えの伝統を示すといえます。