車社会の風景 その十七 コンバーティブル

1870年代、最初に造られた自動車は蒸気自動車で、基本的にすべて屋根がありませんでした。いわばオープンカー (open car)です。Open carは和製英語です。正しくはコンバーティブル(convertible)となります。

当時の主たる乗りものは馬車でした。やがて幌が付き始めます。自動車も同様で箱型の客室ではなく、後部座席のうしろに幌がつきはじめます。この理由はエンジン出力にまだ制約があったために重量の少ない簡単な幌が採用されたようです。自動車の育ての親はヘンリー・フォード (Henry Ford) 。1908年に最初に発売されたのが「T型フォード」(Ford Model T)という水冷式のものです。

やがてエンジンの性能が上がり必要なだけの馬力とスピードが確保できるようになります。そして車内の居住性にも配慮できるようになり、頑丈なフレームの屋根で被われた箱形が車の主流となります。一般家庭にも自動車が普及することになります。

自動車が普及するにつれて、さまざまな車種が登場します。コンバーティブルもそうです。贅沢品としての車です。雨が少ないカリフォルニアとかハワイ、アリゾナ、ニューメキシコなどでは、真夏に屋根のない車を運転するのはさぞかし爽快なはずです。一種の社会的なステータスを謳歌する気分だろうと察します。

私が始めて乗ったコンバーティブルはホノルル市内です。院生等と学校視察で出掛けたときです。二台のレンタカーに分乗しました。私は通常のセダンを運転し、院生の一人がコンバーティブルを運転しました。学校から宿に戻る途中、スコールがやってきました。私はバックミラーでコンバーティブルを確認していました。院生等は幌を広げようと苦心しているようでした。幌の広げ方やたたみ方をショップで確認しなかたったのがミスでした。しばらく雨の中を苦闘し、ようやく閉じてはしゃぐ様子が伝わりました。