文化の日を考える その三  「土人」と「常民」

z6blsbel_20161022223331 20140731_2609673 436px-yanagiwara_byakuren先日、沖縄県の米軍北部訓練場のヘリパッド移設工事をめぐって、現場を警備する機動隊員が反対派住人を「ボケ、土人」呼ばわりをして話題となりました。当の隊員は懲戒処分になったようです。

昭和42年発行の第二版広辞苑で「土人」の定義を調べてみると 「その土地に生まれ住む人、土着の人、原始的生活をする土着の人種」とあります。さらに第六版の広辞苑では、第二版の説明の他に「未開の土着人、軽蔑の意を含んで使われた」とあります。大修館発行の大漢語林では「土人」を「原始的な生活をしている土着の人」と定義しています。土着の人を略した語が「土人」なようです。

「土人」という語から「常民」という語を連想します。「常民」とは一般に庶民、民衆という意味です。狭義に「日本民俗学において民俗文化や民間伝承の担い手の総称として用いられる概念」といわれます。水田稲作を基盤とする定住農耕民のことで、柳田国男が提唱したとされます。知識人とか文化人とは対極的な生活様式をもつ「常民」を研究することで、伝承される文化の総体が理解されるというのです。

柳田との出会いから民俗学に傾倒した人に渋沢敬三がいます。彼もまた日本文化の基底を担う人々の意を込めて「常民」を用いたといわれます。「常民」は平民とか庶民とほぼ同義といわれます。普通の人、エリートでない人という意味です。日本銀行総裁でもあった渋沢は、後に民俗学者である、今西錦司、江上波夫、梅棹忠夫、宮本常一、中根千枝らの海外での現地調査に多大な資金援助をしたことでも知られています。財界人であった渋沢が常民の思想に関心を示したということは興味あることです。

常民の他に「平民」という語があります。「平民」は明治2年に新設された族称の一つといわれます。公家や大名家等は華族、士分の地位にあった武士は士族、足軽等の下級武士が卒族です。それ以外の者は全て「平民」という族称がつけられます。当然、華族や士族の下位に置かれます。通常の民衆よりも下位に置かれた者は旧賤民と呼ばれた「穢多」や「非人」などです。

「平民」は、その原義から派生した俗用として、最下位の人々として土着の人とか、文化的に洗練されていない者といったように華族や士族からは軽蔑されたようです。なお、昭和22年まで華族制度は続きます。