初めに言葉があった その22 「Who has seen the wind?」

中学時代に習った英語に、「Who Has Seen the Wind?」(風)という詩があります。中学2年の教科書の表紙の裏にありました。なぜかこの英文の詩がスラスラと暗記できたのを覚えています。まるで白紙に墨汁がたれるように、脳に染みこんでいきました。英語が好きになった一つのきっかけとなりました。今でもこの詩を諳んじることができます。

作詞者はクリスチナ・ロゼッティ(Christina Rossetti)。1872年頃の作といいますからビクトリア王朝(Victorian Era)時代です。産業革命による経済発展の絶頂期の頃です。なぜこのような時期に控えめな詩の表現を使ったかはわかりません。ただ英国国教会の熱心の信者であったこと、肺を患っていて病と闘っていたことにも創作の理由がありそうです。「Sing-Song: A Nursery Rhyme Book」という童謡も発行しています。

この優しい詩を口ずさむと、詩とはどんな形式で構成されるのかがわかります。修辞がちりばめられているのです。 まずは、冒頭で Who has seen the wind? が反復されます。繰り返すことによってテーマを強調するのです。さらに自然の現象を疑問形で書いて、強い反語的な主張をしています。

次に、「Neither I nor you,  Neith you nor I 」という具合に主語の順序を倒置させて主体を強調します。このフレーズでは語尾にあるはずの終止形の動詞句を省き、体言で止めで文体を強調させています。詩のお終いで使われる through と by です。passing through, passing by という現在形の動詞につながる接続詞の使い方は対句といえます。どちらも余韻を残す終わり方です。

Who has seen the wind?
 Neither I nor you:
  But when the leaves hang trembling,
   The wind is passing through.

Who has seen the wind?
 Neither you nor I:
  But when the trees bow down their heads,
   The wind is passing by.

一体誰が風を見たでしょうか
わたしもあなたも見たことはありません
木の葉が揺さぶられるとき
風は通りすぎていくではありませんか

目に見えない空気や風に季節や自然を感じることの素晴らしさを歌った詩です。風は息吹とか霊などを示唆し、見えざる手によって自然は造られ守られていることを示しています。

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