アドベント・クリスマス その14 ”Lo, How a Rose E’er Blooming”

日本語題名は「エッサイの根より」と付けられている賛美歌です。古くからカトリック教会で歌われてきました。詩も曲も15世紀頃からドイツのライン(Rhine)地方に伝わるキャロル(Carol)がもとになっています。もともとは、23節から成るマリアの賛歌で、降臨節の期間に歌われます。

古代イスラエル王国第2代王ダビデ(David)の父がエッサイ(Jesse)といわれます。その出典箇所は旧約聖書(Old Testament)の中の有名な預言書イザヤ書です。その11章1節には、「エッサイの根株から新芽が生え、その根から若枝が出て実を結ぶ」とあります。ユダ族のダビデの子孫からキリストが生まれることを示唆しているのです。そのことはマタイによる福音書(Gospel of Matthew)の冒頭に「アブラハムの子孫、ダビデの子孫、イエス・キリストの系図」と記述されています。キリストの系図がダビデを通じエッサイに由来することを語るのです。

時代は下り19世紀以降、この曲はプロテスタントの讃美歌に収録されるようになります。2番目の歌詞ではマリヤから幼児イエスが生まれることに置き換えられています。こうしてドイツから英米にも伝わり世界的なアドベントの歌になります。

歌詞の冒頭にある”Lo”は古英語で 「見よ」 といった驚きを表す単語である。”Behold”という単語にあたります。歌詞を翻訳すると「ご覧ください、薔薇はいつも咲いていますよ」となります。
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 エッサイの根より 生いいでたる、
  預言によりて 伝えられし
   薔薇は咲きぬ。
  静かに寒き 冬の夜に。

Lo, how a Rose e’er blooming from tender stem hath sprung!
 Of Jesse’s lineage coming, as men of old have sung.
  It came, a floweret bright, amid the cold of winter,
 When half spent was the night.

Isaiah ‘twas foretold it, the Rose I have in mind;
 Mary we behold it, the Virgin Mother kind.
  To show God’s love aright, she bore to us a Savior,
 When half spent was the night.

アドベント・クリスマス その13 ”O Tannenbaum”

アドベント・リース(Advent wreath)には樅の木の枝が使われることを既に述べてきました。樅の木は冬のさなかでも緑色を保つマツ科。それゆえに、”Christmas Tree”とも呼ばれます。樅の木はドイツ語での響きが最もよい心持ちがします。”Tannenbaum”がそうです。”Tannen”は樅、”Baum” は木というドイツ語です。バウムクーヘン(Baumkuchen)はドイツ語がそのまま使われる菓子です。”木の形をしたケーキ”という意味です。

クリスマス・キャロルの一つで世界中で歌われる曲に”O Tannenbaum” があります。現在の歌詞はライプチッヒ(Leipzig)のオルガン奏者で教師、そして作曲家であったアーネスト・アンシュッツ(Ernest Anschutz) が1824年に歌詞を付けたといわれます。歌詞をみると、この曲は必ずしもクリスマスや飾りがつけられたクリスマスの木のことを歌っているのではないことがわかります。マツ科のこの常緑樹は不偏さとか信仰ということのシンボル、そのことを称えています。

アンシュッツが書き下ろした歌詞は16世紀のシレジア(Silesian)民謡からの哀しい恋の曲が元となっています。シレジアとは今のドイツ、ポーランド(Poland)、チェコ(Czech)、スロバキア(Slovakia)のあたりを指す地域です。メルクワイア・フランク(Melchoir Frank)という人が歌った “Ach Tannenbaum”という曲に依拠しています。

19世紀になると降臨節にはクリスマスの木が飾られるようになります。そしてたくさんのクリスマス・キャロルも作曲され歌われていきます。アンシュッツの歌詞にある “treu” とはしっかりとした、とか信仰にあふれた、という意味です。歌詞の二番目は “treu” が “grun”(緑)となっています。20世紀になってこの歌がクリスマス・キャロルとして歌われるとともに歌詞も変わっていったようでです。樅の木を形容して「凜とした葉は夏の盛りだけでなく、雪の降る冬さえも緑をたたえています」という歌詞です。

O Tannenbaum, o Tannenbaum,
 wie treu sind deine Blatter!
  Du grunst nicht nur
  zur Sommerzeit,
   Nein auch im Winter, wenn es schneit.
    O Tannenbaum, o Tannenbaum,
   wie treu sind deine Blatter!

クリスマス・アドベント その12 ”O Holy Night”

“O Holy Night”の作曲者はアドルフ・アダン(Adolphe C. Adam)というフランス人です。我が国では「オー・ホーリーナイト」と呼ばれています。アダンは1800年代の中盤に活躍し多くの曲を作ったといわれます。中でもこの”O Holy Night” (Cantique de Noel–クリスマス賛歌)というクリスマス・キャロルは特に知られています。

“O Holy Night”ですが、作曲は1847年。フランス南部の街、ロクマラ(Roquemaure)にある教会のオルガンが修復され、その祝いとして教区の司祭が詩人プラシド・カポー(Placide Cappeau)にクリスマスの詩を依頼します。カポーは”Midnight, Christians”という題を付け、それにアダンが旋律をつけたのです。当時、この曲はラジオで放送され広く人々に口ずさまれるようになったといわれます。アダンはバレー音楽(ballet)であるジゼル(Giselle)をはじめ39ものオペラも作曲した人でもあります。

その後、”O Holy Night” はソプラノ(soprano)やテノール(tenor)で歌われることが多くなりました。それは当時、ユニテリアン教会(Uniterian church)の牧師であったジョン・ドワイト(John S. Dwight)がカポーの原詩 “Cantique de Noel” をもとにして、フランス語と英語でイエスの誕生と救いについて親しみのある歌詞をつけたからです。

曲は静かな音程で始まり、やがて次第に興奮が高まるような音階となり、最後は極めて高い音階で歌われます。誕生劇が ”聖なる夜かな” という歌詞と共に最高潮に達します。荘厳な曲でもあります。

この曲は多くの人気歌手によって歌われています。例えばマライア・キャリ(Mariah Carey)、ビング・クロスビ(Bing Crosby)、ホットニ・ヒューストン(Whitney Houston)、マハリア・ジャクソン(Mahalia Jackson)といった歌手です。

O holy night! The stars are brightly shining,
It is the night of our dear Saviour’s birth.
Long lay the world in sin and error pining,
‘Til He appear’d and the soul felt its worth.
A thrill of hope the weary world rejoices,
For yonder breaks a new and glorious morn.
Fall on your knees! O hear the angel voices!
O night divine, O night when Christ was born;
O night divine, O night, O night Divine.

クリススマス・アドベント その11  Little Drummer Boy

クリスマスキャロルはいろいろに分類されそうです。聖夜のように礼拝堂で厳かに歌われるもの、ポピュラーソングのようなもの、子どもたちだけで歌われるものもあります。今回紹介するのは子どもが歌う曲です。

「誕生」はすべての人にとって喜ばしく嬉しい時です。老いも若きもその時を祝います。数あるクリスマスの歌には、古く伝統的なものから現代的(contempolary)なものまで誕生を主題とする曲がいろいろとあります。今回、紹介するのは一人の少年が太鼓を叩きながら、イエスの誕生の喜びに加わるという曲です。それが「The Little Drummer Boy」というもので、別名は「Carol of the Drum」です。

作曲したのはキャサリン・デーヴィス(Katherine Davis)。作曲家であり教師でした。作られたのは1941年。曲の由来はチェコスロバキア(Czechoslovakia)に伝わる古い民謡です。1950年代、この曲を収録したレコードはアメリカで大ヒットしたそうです。歌詞は次のような内容です。

”さあ行こう。一人の王様が生まれたぞ” と大人が僕に声をかけた。
”大切な贈り物をこの王様のところに届けよう”
”だけど、僕は貧しいので、なにも持っていくものがありません”
”マリアさん、お祝いとしてこの太鼓を叩いていいですか?”

”マリアさんは優しく頷いてくださった。牛や羊はじっと待っていた。”
”僕は一生懸命、赤ちゃんのために太鼓を叩いた。”
タタタッタ、タタタッタ、、、、”
”赤ちゃんは僕と太鼓に微笑んでくれた。”

Come they told me pa ra pa pam pam
a newborn King to see pa ra” pa pam pam
Our finest gifts we bring pa ra pa pam pam
to lay before the King pa ra pa pam pam
Ra pa pam pam ra pa pam pam
So to honor him pa ra pa pam pam when we come
Little baby pa ra pa pam pam
I am a poor boy too pa ra pa pam pam
I have no gift to bring pa ra pa pam pam
that’s fit to give our King pa ra pa pam pam
Ra pa pam pam ra pa pam pam
Shall I play for you pa ra pa pam pam on my drum
Marry nodded pa ra pa pam pam
the ox and lamb kept time pa ra pa pam pam
I played my drum for him pa ra pa pam pam
I played my best for him ra pa pam pam
Then he smiled at me pa ra pa pam pam me and my drum

クリスマス・アドベント その10 預言者イザヤという名前

1977年に国際ロータリー財団より奨学金をいただき、ウィスコンシン大学に留学したときのスポンサーがロバート・ジェイコブ(Dr. Robert Jacob)という医師でした。日本語読みではさしずめヤコブ氏となります。長年ミルウオーキー(Milwaukee)の郊外で開業していました。専門は脚の整形外科。熱心なユダヤ教徒でありました。いつも住まいの側にあるシナゴーグ(Synagogue)で長老(Elder)として活躍されていました。次女がウィスコンシン大学の看護学部を卒業したとき開いたパーティに奥様とご一緒に参加してくださいました。残念なことに数年前に召されました。

これまでMrs. Jacobからは、ご子息らの成人の儀式、バー・ミツヴァ(Bar Mitzvah)の案内、9月には新年ロシュ・ハシャナ(Rosh Hashana)の祝いを頂戴しています。一度、ジェイコブ氏に連れられてシナゴーグ(synagogue)を見学させていただいたことがあります。シナゴーグとはユダヤ教の会堂のことです。キリスト教の教会の前身といえます。礼拝はもちろん祈りの場であり、結婚や教育の場、さらに文化行事などを行うユダヤ人コミュニティの中心的存在となっています。もともとは聖書の朗読と解説を行う集会所でありました。会堂に入るときは、男子はキッパ(kippa)とかヤマカ(yarmulke)と呼ばれる帽子を頭に載せることになっています。

ユダヤ教徒はタルムード(Talmud)と呼ばれる教典を学び行動するように教えられます。タルムードは生活や信仰の基となっています。家庭では父親の存在が重要とされます。率先して子どもに勉強させタルムードなどを教えます。子どもを立派なユダヤ人に育てたものは、永遠の魂を得ると信じられています。

クリスマス・アドベント その9 Ave Maria

キリスト教会には、それぞれに演奏したり歌ったりする音楽とそうでない音楽があります。16世紀の前半に起こった宗教改革(Reformation) をきっかけに、カトリック教会から訣別したルーテル教会には、決して演奏することのない音楽とか曲があります。「アヴェ・マリア」(Ave Maria)という曲がそうです。カトリック教会もマルチン・ルター(Martin Luther)が作曲した賛美歌「神はわが櫓」 (Ein’ feste Burg ist unser Gott) を歌うことはありません。

カトリック教会ではイエスの母、マリアを聖母として崇めています。アヴェ・マリアはマリアへの祈祷を指します。直訳すると受胎告知(annunciation)されたマリアに対して「恵まれた女よ、おめでとう、Ave Maria」と呼びかける言葉です。ルカによる福音書(Gospel of Luke)1章26-38節の記述にあります。ルーテル教会などのプロテスタント教会には、マリアを崇拝する教義がありません。

グレゴリオ聖歌(Gregorian Chant)などのミサ曲にもアヴェ・マリアは登場します。その他、祈祷のための教会音楽や祈祷文を歌詞にしたものなどさまざまな楽曲が存在してきます。16世紀スペインの作曲家トマス・ルイス・デ・ビクトリア(Tomas Luis de Victoria)やジョヴァンニ・パレストリーナ(Giovanni Pierluigi da Palestrina)、19世紀フランスの作曲家グノー(Charles Gounod)、同じく19世紀イタリアのロッシーニ(Gioachino Rossini)など多くの作曲家がアヴェ・マリアの曲を作っています

シューベルト(Franz P. Schubert)の晩年の歌曲「エレンの歌第3番」(Ellens Gesang III) がアヴェ・マリアとして知られています。この曲はもともと宗教曲ではなかったようです。ですが誰かがこの旋律にアヴェ・マリアの歌詞を付けて曲にしたといわれます。このようにラテン語による典礼文を載せて歌うことは現代でもしばしばあります。前述のグノーがバッハの「平均律クラヴィーア(Clavier)曲集 第1巻」の「前奏曲 第1番」の旋律にアヴェ・マリアの歌詞をつけて完成させた声楽曲もそうです。クラヴィーアとはオルガンを含む鍵盤を有する弦楽器のことです。読者の皆さんも必ずどこかでアヴェ・マリア聴いたことがあるはずです。

クリスマス・アドベント その8 カンタータ第147番

もう一つのカンタータ(Cantata)をご紹介します。カンタータとは、イタリア語「〜を歌う(cantare)」に由来し、器楽伴奏がついた単声または多声の声楽作品を指します。今回は、カンタータ第147番です。「心と口と行いと生きざまもて(Herz und Mund und Tat und Leben)」と訳されています。140番と並んで人々に親しまれる教会カンタータです。この曲を広く知らしめているのが第6曲の「主よ、人の望みの喜びよ」の名で親しまれているコラール(Choral)で、ドイツ語では”Jesus bleibet meine Freude”という題名となっています。

カンタータ第147番は、新約聖書ルカによる福音書(Gospel of Luke) 1章46〜55節にに依拠しています。礼拝での聖書日課は「マリアのエリザベート訪問の祝日」となっていて、マリアが神を賛美した詩「マニフィカト(Magnificat)」が朗読されます。マニフィカトとは、聖歌の一つである「わたしの魂は主を崇め、わたしの霊は救い主なる神を讃える」という詩のことです。全部で10曲から構成されるカンタータ第147番の一部を紹介することにしましょう。

冒頭の合唱は、”Herz und Mund und Tat und Leben”というトランペットが吹かれる快活な曲で気持ちの良い合唱フーガ(Fuga)です。フーガとは対立法という手法を中心とする楽曲のことです。同じ旋律(主唱)が複数の声部によって順々に現れます。この時、5度下げたり、4度上げて歌います。これを応唱ともいいます。少し遅れて応唱と共に別の旋律が演奏されます。これを対唱と呼びます。次のレシタティーヴォも、オーボエなど弦楽合奏を伴うしみじみした響きで演奏されます。

第3曲のアリアは、オーボエ・ダモーレ(oboe d’amore)というオーボエとイングリッシュホルンに似た楽器の伴奏がつきます。少々暗い響きですが雰囲気が醸し出されます。第4曲はバスのレシタティーヴォが続きます。第5曲のアリアでは、独奏ヴァイオリンの美しさが際立ちます。ソプラノの響きも美しい。

そして第6曲がお待たせ「主よ、人の望みの喜びよ」のコラール。英語では「Jesus, Joy of Man’s Desiring」。主旋律と伴奏旋律が互いに入れ替わり、あたかも追いかけごっこをしているようです。どちらも主旋律のように響きます。いつ何度聞いても慰められる名高い曲です。

クリスマス・アドベント その7 カンタータ第140番

教会暦は伝統的に一年は待降節(アドベント)から始まります。そして受難節、復活節、聖霊降臨節、三位一体節などへと続きます。そうした節毎にバッハ(Johann Sebastian Bach)などの作曲家がいろいろな音楽を作っています。

バッハの多くの作品の中にカンタータ(Cantata)第140番があります。この局は「コラール・カンタータ」(BWV140)(Choral Cantata) と呼ばれています。カンタータの基礎となっているのは合唱、コラールです。教会暦によりますと、聖霊降臨の1週間後は三位一体節と呼ばれます。バッハは三位一体節後第27主日の礼拝に合わせてカンタータ140番を作曲したといわれます。

教会では、全ての日曜日礼拝には拝読される福音書の章句が決められています。三位一体節から数えて第27日曜日の福音書聖句は、マタイによる福音書(Gospel of Matthew)25章1節から13節となっています。この箇所では、花婿の到着を待つ花嫁の譬えを用いて、神の国の到来への備えが唱えられています。それをふまえ、真夜中に物見らの声に先導されたイエスの到着、待ちこがれる魂との喜ばしい婚姻へと至る情景を描いています。

カンタータ140番は「目覚めよと呼ぶ声あり」と呼ばれ、英語では”Wake, Arise,” ドイツ語では”Wachet auf, ruft uns die Stimme”として知られる名高い曲です。カンタータに配置される独唱はレシタティーヴォ(recitative)といわれます。レシタティーヴォは、概して大規模な組曲形式の作品の中に現れる歌唱様式といわれます。叙唱とか朗唱とも呼ばれています。楽器はホルンの他、木管と弦楽器、そしてチェンバロが使われます。

カンタータ140番は次の7曲から構成されています。

第1曲 コラール  目覚めよと呼ぶ声あり
  弦楽器とオーボエが付点リズムでもって演奏され、それに行進曲風の合唱が続きます。晴れやかな喜びに満ちた曲です。
第2曲 レチタティーヴォ 彼は来る、まことに来る
  イエスの姿を伝えるテノールの語りかける場面となっています。
第3曲 二重唱  いつ来ますや
  わが救いの魂(ソプラノ)とイエス(バス)の間で交わされる愛の二重唱です。
第4曲 コラール  シオンは物見らの歌うの聞けり
 テノールの歌うコラールは、ユニゾンの弦が晴れやかな落ち着きのある有名な曲です。物見の呼び声が夜のしじまを破って響く冒頭の合唱曲とシオンの娘の喜びを歌うテノールのこの曲は特に名高いものです。
第5曲 レシタティーヴォ
  さらばわがもとへ入れといって花嫁が登場します。
第6曲 二重唱  わが愛するものはわが属となれり
  再び魂とイエスとの二重唱となります。
第7曲 コラール  グローリアの頌め歌、汝に上がれ
  簡潔ながら力強い4声部によるコラールで終わります.

クリスマス・アドベント その6 休憩(Intermission)  ロゴスと言葉

ここらで少し休憩とします。クリスマスについてです。いくら世界中の人々がクリスマスを祝うといっても、聖霊によるマリアへの受胎告知やイエスの誕生に納得できない人々がいるはずです。その後のキリストの受難と昇天、そして復活もそうかもしれません。キリスト教徒でない人々の中には聖書の中味を、「作り話」、「ファンタジ」、「空想」として捉えるために、受胎告知や復活といった奇跡にさしたる抵抗は感じないようです。ですからクリスマスも、わだかまりもなく子どもや家族と楽しむことができるのです。今回はその先のことを考えてまいります。

復活とか蘇りという出来事は、考えてみれば宗教の世界で通用する現象です。キリスト教徒は、そうした「出来事」にかつては困惑したり懐疑したことはあったにせよ、それを「吹っ切って」洗礼を受け信徒になったのです。こうした転機は奇跡としかいいようがありません。

「人知では到底計り知れないこと」 は世の中にはいくらでもあります。高い教育を受け、自然科学に触れ、進化論を知ったにせよ、こうした宗教上の現象は、この世界とは次元の越えた現象といってよいでしょう。そこには吹っ切れたという個人的な体験があったからだろうと察するほかはありません。恐らく当人もこの不思議な導きを言葉では説明できないでしょう。

人の使う言葉には限界があります。愛するものの死に接したとき、哀しみを表現する言葉が浮かびません。どんな慰めの言葉も癒しにならない時があります。人間の言葉とはそいうものです。語いが足りないというほかありません。

ヨハネによる福音書1章1節に「始めにことばありき」(In the beginning was the Word) という章句があります。ここでの言葉-Wordは神のことばーロゴス(logos)ということです。この世界の根源として神が存在するという意味とされます。ブリタニカ百科事典には 「ロゴスは世界の根幹となる概念であり、世界を定める理(ことわり)」 とあります。

クリスマス・アドベント その5 クリスマスのいわれ

クリスマス(Christmas)は、ChristとMassの連語であることを前回述べました。「キリストの誕生を祝うミサ礼拝」ということです。クリスマスの歴史を振り返りますと、比較的新しいことがわかります。そのことに触れてみるのが今回の話題です。

Scandinavian Christmas tradition. Christmas Gnome and Yule goat with a gift basket.

クリスマスは、もともと”Yule time”と呼ばれ、特にゲルマン(Germanic)の”jul”やアングロサクソン(Anglo Saxson)の”geol”からきたのだといわれます。YuleとかYuletide(Yule time)というのは冬至の日を意味します。昔は、冬至がくると人々はその日を祝うのが習慣だったようです。ヨーロッパの人にとっては日がだんだん長くなることを待望して祝ったののです。Encyclopaedia Britannicaによれば、Yuleは非宗教的な祭りだったのが、いつのまにかChristmasに吸収されていったとあります。

北欧のスウェーデン(Sweeden)、デンマーク(Denmark)、ノールウエイ(Norway)でいまもクリスマスを”Yule”と呼んでいます。フィンランド(Finland)は”Joulu”と呼びます。クリスマスを意味する”Yuletide”という英単語のことです。”tide”の語源は期間とか時間という意味です。通常、tideは潮という意味です。Yuletideは12月24日から1月6日までの期間を指します。クリスマスの期間ということです。ですがこのYuleは今は古英語になってしまいました。

ラテン語で誕生は”natalis”です。クリスマスを意味する言葉ですが、このラテン語からクリスマスの言葉が生まれます。イタリア語は”Natale”、スペイン語は”Navidad”、フランス語はノエル(Noel)です。そしてドイツ語は”Weihnachten”です。”Weihは”聖なるかな”、そして”nachten”は”夜”という意味です。”Heilige Nacht”も同じ意味です。今回は、クリスマスとは世俗的な祝いや祭りから生まれたということを読者にお伝えしました。

クリスマス・アドベント その4 The First Noel

クリスマス(Christmas)の季節が今年もやってきました。キリスト教会では待降節(Advent)とか降臨節を迎えています。クリスマスまでの4週間のことです。礼拝堂では日曜日の礼拝毎にローソクが1本ずつ点火されます。所属するルーテル教会を例に挙げながら、クリスマスの内容や意義を記してみます。

Christmasは二つの単語から成ります。Christ(キリスト)とMas(マス)です。後者のMasはもともとはMassであり、礼拝とかミサを表します。従ってChristmasは「キリストの礼拝」となります。古事によるとChristmasは、元々12世紀頃の古い英語ではCristesmassと綴られていたそうでです。

ベブル語(Hebrew)の聖書にはMessiah(メシア、またはメサイア)が登場します。Messiahとは王様とか聖職者を意味します。王様はやがてキリストがMessiah=救世主として崇められるようになるのです。Messiahは特別に油や香料をそそがれたもの(anointed)、それが「救いをもたらす者」というようになります。Christmasは別名、ラテン語(Latin)から派生した誕生(Christ Natalis)ともいわれます。スカンディナビア半島では11世紀頃からChristmasの祝いが始まったとされ、その誕生祝いのことを「Old Norse Jol」と呼んでいました。スカンジナビアの人々(Scandinavian People) という意味だそうです。

時代がくだり、14世紀になると古いフランス語でノエル(Noel、または Nael)がChristmasとして使われます。Noelとはもともとは誕生という意味です。18世紀になるとこれが「The First Noel」という讃美歌に登場し世界中で親しまれるようになります。「初めてのクリスマス」という讃美歌です。我が国では「牧人ひつじを」という題名で讃美歌103番、聖歌27番として歌われています。

The first Noel, the angels say
To Bethlehem’s shepherds as they lay.
At midnight watch, when keeping sheep,
The winter wild, the light snow deep.
Noel, Noel, Noel, Noel
Born is the King of Israel. (American version)

クリスマス・アドベント その3 イマヌエル

今日は、アドベント、別名降臨節に関する記事を聖書から見てみることにします。それは旧約聖書のイザヤ書(The Book of Isaiah)です。預言者イザヤ(Isaiah)の名によって残される旧約聖書中最大の書といわれます。その成立は複数の者によって書き起こされ,内容からみて2部に分けられます。

最初は、1〜39章は前8世紀頃、主に預言者イザヤによって書かれ、主の懲らしめと裁きが中心に描かれています。40章で「慰めよ。慰めよ」という言葉がでてきます。次ぎに40章から66章は、慰めと回復のメッセージといわれています。具体的には、ユダ(Judea)とエルサレム(Jerusalem)に対するメッセージです。ユダが主から離れていくので、懲らしめを受けるのですが、最後には癒され、救われるという展開になっています。

北イスラエル王国(Northeran Israel)は、紀元前7世紀頃中東のオリエントを統一して最初の世界帝国であったアッシリア(Assyria)の攻撃を目前に控えていただけでなく、南ユダ王国(South Judea)も崩壊するのは時間の問題でありました。そうした緊迫した情勢を背景に、イスラエルの民の多くは一国も早く国外へ脱出することを望んでいました。アッシリア帝国による侵略の脅威に曝される中、神のみ告を信じていたのもユダヤ人です。

イザヤは「神が我らとともにおられる」を意味するイマヌエル(Emmanuel)という言葉を使います。イマヌエルとは、驚くべき指導者であり、力ある神の象徴であり、彼によってイスラエルが救われて平和の道を歩むことができると預言するのです。イマヌエルは新約聖書のキリストを示唆しています。イザヤは、「救いは主のもの」、あるいは「ヤハウェ(Yahweh、Jehovah)は救いなり」と教えます。人間が救われるのは、人間からでも行いからでも富からでもなく、主からなのだ、ということを最初から最後に至るまで一貫して教えています。

クリスマス・アドベント その2 樅の木

Rockefeller Center

アドベント・リース(Advent wreath)には樅の木(Tannenbaum)の枝が使われます。しなやかなので丸いリースを作りやすいのです。樅の木は、「Christmas Tree」とも呼ばれます。そしてクリスマスのデコレーションに使われます。有名なのは、ニューヨーク市のロックフェラーセンター(Rockefeller Center)前に立てられるものです。毎年その点火がニュースとなります。高さ20メートルを超え、2007年からはLEDが使われています。今年は明日12月2日に点火式が行われます。

樅の木に戻ります。この常緑樹は強い生命力の象徴とされます。また「知恵の樹」とも呼ばれます。沢山の種類の飾り物がとりつけられます。子どもたちはそれを楽しみにしています。もともとはリンゴとかナッツなどの食べ物が枝にくくられたそうです。そしてロウソクとなり今は豆電球で飾られます。ベツレヘムの星(Bethlehem)やガブリエルの天使(Gabriel)の飾りもつけられます。

樅の木がクリスマスの木として使われるようになったのは15世紀頃といわれています。ドイツのゼレシュタト(Selestat)にある St. George’s Churchがその起源とか。ブリタニカ百科事典(Encyclopedia Britannica)によると, 樅の木は常緑樹(evergreen trees)として、エジプト人(Egypt) や中国人、ヘブル人(Hebrew)などが永遠の命を象徴する木として崇めていました。こうした信仰はヨーロッパの非キリスト教徒(pagan)らにも広まり、やがてスカンジナビア(Scandinavia)や西ヨーロッパに広まり、家々や納屋に立てられた樅の木は魔除けとしても、また鳥の止まり木としても飾られるようになったといわれます。

樅の木の代わりに”Paradise Tree”という常緑樹もクリスマスでは飾られたといわれます。中世のミステリ劇に登場する木です。それによると12月24日はアダムとイブ(Adam & Eva)と命名された日として祝われます。そこに飾られる木には禁断の実とされたリンゴが供えられました。さらに、種なしの薄焼きパン(Unleavened bread)も付けられました。種なしパンには聖餐(Eucharist)とか贖罪、救済(Redemption)の意味があったようです。

種なしパン

クリスマスアドベント その1 クリスマス・リース

この季節になると、ところどころの玄関にリース(wreath)とかクランツ(cranz)と呼ばれる飾り物をつけているのを見かけます。こうした家はクリスチャンの家族なのだろうと察します。


このリースは常緑樹である樅の木の枝を丸めて作ります。祭壇に置くときは、柊(ヒイラギ)の葉があしらわれてそこにろうそくを立てるのです。「柊」は季節にふさわしい漢字であり、緑々しい木です。柊が玄関の側に植えられるのは邪鬼を払うという言い伝えがあります。教会で飾られるリースは特別な意味があります。リースにある先の尖った柊の葉ですが、柊は十字架上で処刑されたキリストの冠の棘を表します。柊は英語で”holly tree”と呼ばれています。

リースは、クリスマス・リース(Christmas wreath)とも呼ばれ11月最終日曜日からキリスト教会で飾られます。今年のアドベントは11月29日から始まりました。燭台となるリースの上には4本のろうそくが立てられます。この日からキリストの誕生を待ち望む期間、待降節といわれるアドベント(Advent)が始まるのです。アドベントはキリストの誕生までの4週間を指します。

アドベント期間の礼拝に出席すると目に飛び込んでくるのが色。例えば、ろうそくの色は悔い改めや望みを表す紫とか青でです。聖職者の祭服や祭壇布、礼拝堂のタペストリーなどにも用いられます。典礼色に倣い、第三週のみピンクやローズカラーのろうそくを用いる場合が多いようです。ルーテル教会やメソジスト教会、聖公会などはそうです。アドベントの礼拝や祈祷での賛美歌は、救世主メシア(Messiah)の到来を待ち望むものが歌われます。

Isaiah

「久しく待ちにし、主よとく来たりて」 “O come, O come, Emmanuel” は、アドベントの時期に広く歌われる讃美歌です。詞・曲とも中世の聖歌だったとされます。旧約聖書のイザヤ書(The Book of Isaiah)第7章14節にある預言から由来しています。

Oh come, Oh come, Emmanuel
And ransom captive Israel
That mourns in lonely exile here
Until the Son of God appear
Rejoice! Rejoice! Emmanuel
Shall come to thee, O Israel!

アメリカの州鳥 その58 アメリカ領プエルト・リコの鳥: シトドフウキンチョウ

アメリカ合衆国の州の鳥の紹介はこれが最後です。プエルト・リコ(Puerto Rico)はカリブ(Calib)海域北東部にあり、西にハイチ(Haichi)とドミニカ(Dominica)共和国があります。住民の大半はスペイン系の白人で、アフリカ黒人の血をひく人々です。他のカリブ海の島々に比べ、奴隷制が発達しなかったので白人が多いのです。文化的にはスペインの植民地時代からの伝統が色濃いのが特色です。

     Tanagers

1493年に本島のプエルト・リコにクリストファー・コロンブス(Christopher Columbus)が上陸します。1508年にスペインからの総督としてフアン・ポンセ・デ・レオン(Juan Ponce de Leon)らのコンキスタンドール(Conquistador)という征服者がやってきて、植民地化します。それ以来、プエルト・リコと名付けられます。Puertoとは、スペイン語で美しいとか豊かな、Ricoとは港という意味です。

1898年にアメリカ・スペイン戦争により合衆国領となり1952年にアメリカの自治領となります。1946年に合衆国はプエルト・リコ人を知事に任命し、1948年には初の民選知事が誕生します。現在の政治ですが、現体制を維持し、自治権を拡大しようとする勢力、完全な州制へ移行しようとする勢力、そして独立しようとする勢力からなります。独立派は少数派となっています。

プエルト・リコは農漁業やラム酒、観光、製薬などが主たる収入源で、サトウキビ、コーヒーの栽培が盛んです。高い失業率をかかえ、経済は製造業、金融サービス業、観光業、そして連邦政府からの援助に頼っています。

プエルト・リコの鳥は、シトドフウキンチョウ(Tanagers)です。ガラパゴス諸島を含む南北アメリカの熱帯に生息します。オスは色鮮やかな羽色が多いのですが、メスは地味です。9枚の風切羽を持つのが特徴といわれます。熱帯林の樹冠に住み、食性は多様で、昆虫食、花蜜食などを求める雑食の鳥です。アルバムを見るととても美しい姿の鳥です。

アメリカの州鳥 その57 アメリカ領グアムの鳥: グアムクイナ

グアム(Guam)は太平洋西部、ミクロネシア (Micronesia)のマリアナ諸島(Mariana Islands)の南端に位置しています。面積は日本の淡路島より少し小さい位です。ポルトガル人航海者マゼラン(Ferdinand Magellan)によって1521年に世界一周の途上で発見されます。1565年スペインのコンキスタドール(征服者)であるミゲル・ロペス・デ・レガスピ(Miguel López de Legazpi)がグアム島に到達し、スペイ ン国王がグアム島およびその他のマリアナ諸島の領有権を正式に宣言します。それ以来333年にわたり、スペインの統治時代が続きます。

ゲフパゴ•チャモロ(Gef Pago)文化村

1898年のアメリカ・スペイン戦争の結果、アメリカ領となります。アメ リカ海軍による統治は農業、保健衛生、教育、土地管理、税制、公共事業などに変革や改善をもたらします。1941年12月の真珠湾攻撃による太平洋戦争勃発を機に、日本軍はグアムを占領します。1950年にアメリカの自治属領(準州)となり、今日に至っています。グアムは太平洋の交通の要所で、軍事的経済的に重要性を持っています。

住民はチャモロ族(Chamorro)です。マリアナ諸島の先住民全般を指す民族です。チャモロ族は生活環境に適した独特の住居やカヌーを造り漁業に従事し、また複雑な織物や手の込んだ陶器の製作に通じています。強固な母系社会を形成し、チャモロ文化の担い手となっていました。フィリピンやメキシコからの移民により混血化し、純粋なチャモロ族はいないといわれます。

グアムの南東岸にあるイナラハン湾(Inarajan Bay)を背にして、伝統的なわらぶき屋根が軒を連ねるのがゲフパゴ•チャモロ(Gef Pago)文化村です。チャモロの手工芸品作りの実演や昔ながらの漁法を見ることができます。今はコロナ禍にあって日本からの観光客は全く途絶えて、グアムの経済を疲弊させています。

グアムの鳥はグアムクイナ(Guam rail)です。写真をみると尾羽は短く、上面の羽衣は褐色や黄褐色をしています。頭頂や眼先、頬の羽衣は赤褐色です。頸部から胸部の羽衣は淡灰色で、やがて淡黄色や黄褐色の帯模様がでてきます。沖縄県北部の国頭村地域だけに生息するヤンバルクイナとそっくりです。飛べない鳥です。ヤンバルとは(山原)と書きます。

アメリカの州鳥 その56 アメリカ領ヴァージン諸島の鳥: マミジロミツドリ

アメリカ50州の鳥の紹介は終わりました。次いでに合衆国の保護領(自治領)に触れていきます。保護領の人々は合衆国の市民権と自治政府、投票権を持っています。合衆国の保護領としてはヴァージン諸島(Virgin Islands)、グアム島(Guam)、プエルトリコ(Puerto Rico)があります。

Virgin Islands

私はグアムを除く他のアメリカ領はもちろん旅したことはありません。ヴァージン諸島の西半分がアメリカの保護領で東半分はイギリス領という複雑さです。一般の観光客が訪れる主要な島はセント・トーマス島(St. Thomas Island)、セント・クロイ島(St. Croix Island)、セント・ジョン島(St. John Island)の3島です。首都はセント・トーマス島にあるシャーロット・アマリー(Charlotte Amalie)となっています。セント・クロイ島には、世界で最大の石油精製所があります。

Bananaquit

アメリカの保護領のために、大統領選挙などで投票はできません。人口の主な人種は、昔奴隷として連れて来られた子孫の黒人です。砂糖や野菜の栽培が盛んです。ラム酒も特産となっています。観光業が主たる産業となっています。

ヴァージン諸島の鳥はマミジロミツドリ(Bananaquit)です。マミジロミツドリは体長が約10センチと非常に小さいです。下腹は黄色く、背中は黒いのが目印です。くちばしは細長く曲がっており、花の蜜を吸うのに適しています。舌もその食性に合ったふさ毛のある管状になっています。マミジロミツドリはハチドリのようにホバリングすることは出来ないので、蜜を吸う間は枝などにとまります

アメリカの州鳥 その55 コロンビア特別区の鳥: モリツグミ

コロンビア特別区(Washington District of Columbia:DC)は、大西洋東海岸、メリーランド州(Maryland)とヴァージニア州(Virginia)に挟まれたポトマック河畔(Potomac River)に位置する合衆国の首都です。大国の首都としては面積は小さいのですが、国際的に強大な政治的影響力を保持する世界都市であり、また金融センターとしても知られています。172か国の大使館、世界銀行(World Bank)、国際通貨基金 (IMF)、米州機構 (OAS)、米州開発銀行(IDB)、汎アメリカ保健機関 (PAHO) などの本部も置かれています。労働組合、ロビイスト、職業組合など各種団体の本部もあります。

Smithsonian Institution

この都市は首都としての機能を果たすべく設計された計画都市です。アメリカ独立戦争を陸軍技師大尉として、司令官ジョージ・ワシントン(George Washington)に仕えたのが、ピエール・シャルル・ランファン(Pierre Charles L’Enfant)です。彼は、独立戦争での貢献が認められ、連邦都市建設計画のコンペに当選し基本計画案を作成します。この街は都市計画に基づく近代最初の首都となります。

Wood Thrush

コロンビア特別区は、連邦議会があらゆる権限を有していて、州には属さない合衆国・連邦政府の直轄地となっています。下院に本会議での投票権を持たない市代表(代議員)を選出していますが、上院議員の議席は与えられていない不平等さがあり、これが長年議論されています。特別区の東には多くの黒人が住み、人口の比率では全米一位となっています。他方、北西に位置するジョージタウン(Georgetown)は高級住宅地として知られています。

首都の中心にあるのがナショナルモール(National Mall)です。横長で芝生に覆われています。リンカーン記念堂(Lincoln Memorial)から連邦議会議事堂(Capitol)までの両側にホワイトハウス(White House)、スミソニアン学術協会(Smithsonian Institution)や連邦政府立など18の美術館や博物館が並びます。例えば自然史博物館(National Museum of Natural History)、航空宇宙博物館(National Air and Space Museum)、国立美術館(National Gallery of Art)、ホロコスト記念博物館(Holocaust Memorial Museum)などです。

コロンビア特別区の鳥はモリツグミ(Wood Thrush)です。頭と背は赤褐色、翼と尾は茶褐色、下腹は白色で黒色の大きな斑点があります。嘴は暗褐色で、足は桃色が特徴です。アメリカ東部で繁殖し、アメリカ南部やメキシコ、パナマで越冬します。合衆国の鳥としては地味な色の種類です。しかし、さえずり声は、まるでフルートのような響きを持っています。北アメリカで最も美しく鳴く鳥の一つといわれます。

アメリカの州鳥 その54 ワシントン州の鳥: オウゴンヒワ

ワシントン州(Washington)は太平洋岸に面し、北はカナダと国境を接しています。南はオレゴン州(Oregon)となっています。州都はオリンピア(Olympia)で最大の都市はシアトル(Seattle)となっています。常緑樹で覆われ、エバーグリーン州(Evergreen State)という愛称がついています。東海岸のワシントンDCとは別の州です。

American Goldfinch

ピュジット湾(Puget Sound)の沿岸には、オリンピアやシアトルを始めタコマ(Tacoma)、エヴェレット(Everett)といった都市があり、航空機、ミサイル、造船、車体製造、金属工業、化学工業、精密機械、水産加工などが盛んです。ボーイング( Boeing)の主力飛行機組立工場はエヴェレットにあります。経済面では、マイクロソフト(Microsoft)、アマゾン(Amazon.com)、スターバックス(Starbucks)などなど世界に名を馳せる企業の本拠地が多いことでも知られています。

リンゴの生産は全米第一位で、花の栽培も盛んです。全米で有数の林業州であり、鮭などの水産業も盛んです。戦前は多くに日本人が移民し、林業や漁業に従事しました。人種差別が激しい戦前で、ワシントン、カリフォルニア、オレゴン州に渡った移民一世の人々の労苦は歴史に残っています。

Snow Falling on Cedars

州鳥はオウゴンヒワ(American Goldfinch)です。繁殖期のオスは体の羽色が鮮やかな黄色になり、繁殖期以外にはその黄色がくすみます。メスもくすんだオリーブ色で、羽色は黒くて白色の縞模様があります。

アメリカの州鳥 その53 ワイオミング州の鳥: ニシマキバドリ

ワイオミング州 (Wyoming)はロッキー山脈(Rocky Mountains)の大陸分水界を含む山地が大半の州です。北はモンタナ州(Montana)、東はノースダコタ州(North Dakota)とサウスダ州(South Dakota)、南はコロラド州(Colorado)、西はアイダホ州(Idaho)に囲まれています。州都で最大の都市はシャイアン(Cheyenne)となっています。

1872年に世界初の国立公園となるイエローストーン国立公園(Yellowstone National Park)があります。世界で最も有名な間欠泉であるオールド・フェイスフル・ガイザー(The Old Faithful Geyser)が多くの観光客を呼んでいます。噴出は60~90分間隔で、その高さが30メートルから50メートルに達します。

山岳地帯では石油や天然ガス、石炭、ウランを産出します。ロッキー山脈から流れ出る河川によって形成された堆積平野の大平原(Great Plains)では、大麦、小麦、エン麦、トウモロコシの栽培が盛んです。

1869年に合衆国最初の地方議会で婦人参政権が認められ、1870年にララミー(Laramie)では女性が初めて陪審員を務めます。同年メアリー・アトキンソン(Mary Atokinson)が女性初の廷吏となり、さらにサウスパスシティ(South Pass City)ではエスター・モリス(Esther H. Morris)が女性初の治安判事になります。1925年にネリー・ロス(Nellie T. Ross)が初の女性知事に選出されます。それ故、「平等の州」(Equality State)という愛称が付いています。

Western Meadowlark

ワイオミングの州鳥はニシマキバドリ(Western Meadowlark)です。全長20センチくらいで、腹と喉にかけては黄色です。胸には黒い帯が入り、背中は黒と薄褐色の縞模様をしています。嘴は長く昆虫やベリー、種子などを食べます。ヒバリ独特の短く甲高い声でさえずります。フルートのような響きです。

西部劇映画『シェーン』

アメリカの州鳥 その52 ロードアイランド州の鳥: ロードアイランドレッド

ロードアイランド州(Rhode Island)は全米で最も面積が小さい州です。奈良県よりも小さいのです。最大の都市で州都はプロビデンス(Providence)となっています。ロードアイランド州は丘陵と平地が多く氷河湖が多いです。氷河湖とは、氷河が段々溶けて退くにつれて柔らかい土地が削られた所にできた湖のことです。州南東部にはナランガセット湾(Narragansett Bay)があり、そこに人口や産業が集中しています。貴金属、エレクトロニクスなどの付加価値の高い製造業が盛んです。沖合、沿岸漁業も盛んです。

1636年に、イギリス生まれの神学者で良心と行動の自由を求めたロジャー・ウイリアムズ(Roger Williams)が、マサチューセッツ(Massachusette)植民地から追放され、ロードアイランドにやってきます。ウイリアムズは政教分離原則の著名な学者でありました。アメリカインディアンの公正な扱いを主張し、それがもとで植民地から追い出されるのです。そしてウイリアムズは入植した地をプロビデンス(神の摂理)と名づけるのです。今の州都です。その後、クエーカー教徒がプロビデンスに集まり、オランダから逃げてきたユダヤ人らに救いの手を差し伸べるのです。

州の鳥は、ロードアイランドレッド(Rhode Island Red)です。アメリカ原産のニワトリの品種で卵肉兼用種として飼育されています。羽毛は赤褐色で身体堅強であり、年間200個以上の褐色卵を産みます。日本には明治37年に輸入されて、交配の結果、現在では日本農林規格の在来種として記載されています。

アメリカの州鳥 その51 ルイジアナ州の鳥: カッショクペリカン

ルイジアナ州(Louisiana)はメキシコ湾岸(Gulf of Mexico)に面し、東はフロリダ州(Florida)と、西はテキサス州(Texas)、北はアーカンソー州(Arkansas)と、州の大半がミシシッピー川(Mississippi River)に接しています。最大の都市はニューオリンズ(New Orleans)、州都はバトンルージュ(Baton Rouge)です。私はルイジアナに行ったことはありません。

1541年にデ・ソト(Hernando de Soto)というスペインに探検家が入り、1682年にフランス人探検家ラ・サール(Sieur de La Salle)がルイジアナと名付け、時のルイ14世に献上してフランス領と宣言します。下って1803年にフランスから買収してアメリカ領となります。

有名な都市といえばニューオリンズでしょう。フレンチクオータ(French Quarter)というフランス風の古き街として知られています。バルコニーがせり出たフランス風の邸宅が並びます。マディグラ(Mardi Gras)でも知られています。リオのカーニバル( Carnaval do Rio de Janeiro)などと並ぶ世界で最も有名な謝肉祭(カーニバル)です。

Brown Pelican

クレオール(Creole)とよばれるフランス系やスペイン系の人々が住んでいます。ルイジアナが買収される以前にルイジアナで生まれた人々とその子孫、また彼らと関わりのある事物のことも指します。クレオールは文化人類学でも使われています。

ルイジアナ州の鳥はカッショクペリカン(Brown Pelican)です。翼を広げると2mになりますが、ペリカンの中でも最も小さい鳥です。体重は3.74kg、雄のほうが大きいです。名前の通り、全身を褐色の羽毛に包まれており、白や薄い灰色が多いペリカンの仲間内でも異例といえます。頭部から頸部の色は白っぽい灰色となっています。魚の群れを見つけると空中から飛び込んで魚をとります。

アメリカの州鳥 その50 ユタ州の鳥: カリフォルニアカモメ

ユタ州(Utah)の西半分はグレイトベースン(Great Bason)という大盆地が広がり、北西部は塩砂漠湖(Great Salt Lake)があります。州名はユテインディアン(Ute Tribe)にちなんでいます。州都で最大の都市はソールトレイク・シテイ(Salt Lake City)となっています。州の中央部にワサッチ山脈(Wasatch Range)が南北に延びています。

California Gull

1847年モルモン教徒が東部での迫害を逃れてユタにやってきました。その教会名は、末日聖徒イエス・キリスト教会(Church of Jesus Christ of Latter-day Saints)と呼ばれます。この教会の創始者はジョセフ・スミス(Joseph Smith)ですが、イリノイ州で近隣の人々との争いが続き、迫害を受けて殺されます。スミスを引き継いだ指導者がブリガム・ヤング(Brigham Young)です。モルモン教徒はソールトレイク・シテイの近くで、開拓のためにワサッチ山脈からの融雪水を使い、灌漑によって穀物栽培などを始めます。

Temple Square

ヤングの功績はモルモン教会の総本山、テンプル スクエア(Temple Square)礼拝堂を建設したことです。聖歌隊を組織し「モルモン・タバナクル合唱団」(Tabernacle Choir)となります。Tabernacle」とは幕屋とか礼拝堂という意味です。この聖歌隊は世界で最古で最大の聖歌隊の一つです。360名のボランティアの教会員で構成されています。礼拝堂の中には, 聖歌隊の伴奏をする11,623本のパイプを備えたタバナクルオルガン(Tabernacle Organ)があります。

モルモン教徒が迫害を受けた理由は、教会員の中で複婚すなわち一夫多妻制を実行していたことです。1890年にモルモン教会は綱領によって複婚は禁止します。現在のユタ州の人口対するモルモン教徒の構成比は約61%となっています。妊娠中絶や同性愛に反対します。このことから分かるように、ユタ州は圧倒的に共和党の強い州です。テキサス、アイダホに並ぶ保守共和党の牙城であるとされています。

ユタの州鳥はカリフォルニアカモメ(California Gull)です。カナダ中部からアメリカ西部の内陸部で繁殖し、冬期はアメリカ西海岸で越冬します。体長約50cm。羽色はセグロカモメと似ていますが、足が黄色または緑黄色であること、頭部が小さく胴体が長めであることで区別できるといわれます。

アメリカの州鳥 その49 モンタナ州の鳥: ニシマキバドリ

モンタナ州(Montana)の名称は、スペイン語の「Montañoso–山がちな」という言葉に由来します。カナダの国境に沿い、東西に長い州です。西はロッキー山脈(Rockey Mountains)、東は大平原(Great Plains)が広がります。州都はヘレナ(Helena), 最大の都市はビリングス(Billings)となっています。州は「Big Sky State」(蒼空の州)という愛称で呼ばれます。

Western Meadowlark

経済は主にサービス業です。毎年多くの観光客がグレイシャー国立公園(Glacier National Park)、リトルビッグホーン戦場跡国定保護区(Little Bighorn Battlefield National Monument)、およびイエローストーン国立公園(Yellowstone National Park)を訪れています。東部では牧畜業、小麦農業、石油と石炭の採掘、西部では林業、観光業および岩石採掘業が盛んです。

1876年、ジョージ・カスター(George Custer)が率いる陸軍第七騎兵隊のインディアンの討伐隊が、州南部のリトルビッグホーン川(Bighorn River)のほとりでクロウ族(Crow)、シャイアン族(Cheyenne)、スー族( Sioux)、アラパホ族(Arapaho) などの連合軍との戦いによって全滅します。この戦によって連邦政府よるインディアン掃討が進み、 インディアンは土地を奪われ、強制的に居留地(reservation)に追いやられます。ケビン・コスナー(Kevin Costner)が監督し主演した映画「Dance with Wolves」にインディアンの逃避行が描かれています。

モンタナ出身の政治家で上院議員がウィリアム・フルブライト(James W. Fulbright)です。フルブライト奨学金(Fulbright Fellowships)という国際交換プログラムを創設します。戦後多くの日本人がこの基金を与えられ、帰国後は学会、官界、実業界、教育界、ジャーナリズム界、社会福祉界で活躍しました。設立以来の奨学生は160か国以上にわたり、その数は38万人に及んでいます。

州鳥はニシマキバドリ(Western Meadowlark)となっています。Meadowとは牧草地、Larkとはヒバリ、つまりMeadowlarkは牧草地などでみられるヒバリの様な鳥を指しています。背面の模様はヒバリに似ていて、首には黒いV字形の模様がついています。胸部は鮮やかな黄色をしているので他の鳥と見間違うことはありません。

アメリカの州鳥 その48 メリーランド州の鳥: バルチモアムクドリモドキ

メリーランド州は、北はペンシルヴァニア州(Pennsylvania)、西はウェストヴァジニア州(West Virginia)、東はデラウェア州(Delaware)に接し、大西洋に面しています。南はポトマック川(Potomac River)を隔ててウェストヴァジニア州とヴァジニア州(Virginia)と接しています。西はアパラチア山脈(Appalachian Mountains)、及びペードモント台地(Piedmont)が広がります。州の大半はアメリカメガロポリス(American Megalopoiis)に属し、ニューヨーク、ワシントンDC間の交通幹線軸が通っています。

メリーランド州(Maryland)州の州都はアナポリス(Annapolis)で、最大都市はバルティモア(Baltimore)です。アナポリスには合衆国の海軍大学があります。州名ですが、イギリス植民地時代に彼女の栄誉を称えて、イギリス国王チャールズ一世の王妃ヘンリエッタ・マリア(Henrietta Maria)からメリーランドとなります。

Baltimore Oriole

アメリカ国歌の誕生の地がフォート・マクヘンリー(Fort McHenry)です。星形の要塞で、米英戦争中の1814年9月に、チェサピーク湾(Chesapeake Bay)に侵入したイギリス海軍の艦隊がバルティモア港を攻撃してきたときに防衛に成功したことで知られています。メリーランドは、独立戦争ではイギリスの支配に反旗を翻した13植民地の一つです。

バルティモアには、世界最大の証券会社であるメリルリンチ(Merrill Lynch)をはじめ保健、不動産、不動産金融会社があります。食品加工、電気・電子機器、金属産業が盛んなところです。複雑な海岸線の出入りが多いチェサピーク湾をはさんで、海岸平野が広がります。

メリーランド州はワシントンD.Cの連邦政府に近いという位置づけを生かし、防衛・航空産業やバイオ研究所などがあります。さらに多くの教育や医療の研究機関があり、例えば世界屈指の医学部を有するアメリカ最難関大学の一つであるジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)やペンシルヴァニア州立大学(Pennsylvania State University)、ペンシルヴァニア大学(University of Pennsylvania)、カーネギーメロン大学(Carnegie Mellon University)、世界最大の研究施設である国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)とその医療研究施設があります。

州の鳥はバルチモアムクドリモドキ(Baltimore Oriole)です。オスは翼と頭部は黒色で、肩の一部と腹部は金色がかったオレンジ色をしており、色鮮やかで美しい姿です。他方、メスはオスに比べると地味で、部分的にオレンジ色をしているものの、全体的に茶色がかった薄緑色の羽をしています。バルチモアムクドリモドキは渡り鳥で、夏期のみメリーランド州を含むアメリカ東部に生息します。

アメリカの州鳥 その47 メイン州の鳥:アメリカコガラ

Black-capped Chickadee

合衆国本土の最東北部に位置する小さな州がメイン(Maine)です。ニューイングランド(New England)の最東北部に位置する。東と南は大西洋に面し、西はニューハンプシャー州(New Hampshire)、北西はカナダのケベック州(Qubec)、北東は同じくニューブランズウィック州(New Brunswick)に接している。州都はオーガスタ市(Augusta)です。州の内部には森林が広がり、海岸線は観光地として知られています。

メイン州(Maine)の海産物はなんといってもロブスター(lobster)そして貝類(clam)。その他、家禽及び卵、乳製品、牛、ブルーベリー、リンゴ、そしてメイプルシロップです。他にも産業生産で高いのは高は材木及び製紙です。メイン州は、「松の木の州」(Pine Tree State)というニックネームがあり、全土の90%近くが森林となっています。合衆国の海軍基地を控え造船も盛んな地です。

ナーンバープレートには「Vacation Land」とあります。観光の州をうたっています。多くの州立公園があり、キャンピングなどアウトドアでも盛んなところです。豊富な海産物を背景に観光客には、必ず立ち寄るのが海産物を用意しているレストランです。

州鳥はアメリカコガラ(Black-capped Chickadee)です。北米大陸の北部にいる留鳥です。広葉樹林に群れを成して生活します。同じコガラの名を持つカロライナコガラとは南部と北部で棲み分けています。喉元の黒色模様がや一部の羽が白っぽいのが特徴です。名前の通り、頭は黒い帽子を被ったように見えます。寒い季節でも体温を下げ、夏の間貯めておいた種子などの餌場を記憶する習性があります。人の掌に載った餌をついばむ大胆さもあります。

アメリカの州鳥 その46 ミネソタ州の鳥: ハシグロアビ

ミネソタ州(Minnesota)の名前の由来です。スー・インディアン(Soux Indian)の言葉で「曇り空のような水」という意味だそうです。カナダと国境を接し、ウィスコンシン州の西隣に位置する州です。州都はセントポール(St. Paul)。最大の都市はミネアポリス(Minneapolis)です。この二つは隣合わせなので「双子の都市」(Twin Cities)と呼ばれています。ミネソタは伝統的に民主党の強い州です。今回の大統領選挙でもそれがはっきりと示されました。

Common Loon

林業が盛んな州です。伝説的な巨人、ポール・バンヤン(Paul Bayan)が活躍した舞台です。平坦な草原が広がり、小麦の栽培が盛んです。製粉業が発展しています。エン麦やジャガイモの生産は合衆国で第一、トウモロコシは第三位、大豆が第四位となっています。州北東部には合衆国で最大の鉄鉱石の産地となっています。五大湖水運の最終地ダルース(Dulth)から鉄鉱石が運ばれています。

Minneapolis

州の車のナンバープレートには「10,000 Lakes」と印字されています。無数の湖で知られています。昔、氷河がミネソタ全体を覆っていたようです。氷河はゆっくり移動しますが、そのとき大地を削っていきます。それがもとで湖が出来たというわけです。あまりに沢山の湖があるので、目的地に着くには大分迂回しなければならないということを友人から聞いたことがあります。

友人から「ミネソタ州の鳥はなにか知っているか?」ときかれたことがあります。「それは蚊だ!」というジョークを言っていました。立ち止まって会話をしていると蚊だらけになるのです。沢山の湖があって蚊が繁殖しているのです。本題の州の鳥はハシグロアビ(Common Loon) です。「loon」とは(愚か者)という意味です。ハシグロアビは陸上で歩いている姿が不格好でぎこちないのです。頭部から頸にかけては光沢のある黒色で、喉と側頸に白と黒の縦じま模様があります。体の上面は黒く白斑が点在し、体の下面は白いです。嘴の色は黒くまっすぐ伸びています。日本でハシグロアビは飛んでこないようです。

アメリカの州鳥 その45 ネバダ州の鳥: ムジルリツグミ

ネバダ州(Nevada)は、西にカリフォルニア州(California)、北にオレゴン州(Oregon)、東にユタ州(Utah)、南にニューメキシコ(New Mexico)州に囲まれています。州都はカーソンシティ(Carson City)。最大の街はラスベガス(Las Vegas)となっています。今度の大統領選挙では、ジョー・バイデンが勝利した州です。

ネバダという名前は、雪がかぶった山々という意味の「Sierra Nevada」から由来したと言われます。北部は砂漠地帯、南部や渓谷と山となっています。ラスベガスの北104キロのところに核実験場(Nevada Test Site)があります。州内の土地の80%以上が連邦政府の所有となっています。戦後はしばしば新聞紙上で原爆実験の記事がありました。

ネバダの主産業は合法化されたカジノを代表とする娯楽産業と鉱業です。合衆国では唯一、売春が合法となっています。ラスベガスのカジノは多くの観光客を惹きつけています。これが大きな産業ともなっています。他の産業としては金の採掘です。世界でも世界第四位の金の算出を誇っています。車のナンバープレートには「The Silver State」となっています。

州の鳥はムジルリツグミ(Mountain Bluebird)です。その名の通り、オスは全身が青色です。メスは茶褐色で、姿がなんとなくすずめに似ています。ところでカナダのオンタリオ州(Ontario)を代表する鳥はBlue Jayですが、こちらは頭の冠がぴんととがっていて綺麗です。

アメリカの州鳥 その44 ミズーリ州の鳥: ルリツグミ

ミズーリ州(Missouri)のニックネームは「Show Me State」となっています。このフレーズが車のナンバープレートに書かれてあります。これは、「俺は疑い深いのだ、証拠を見せてくれ」という意味です。少々のことでは納得しない(Defiant)、という気概が感じられます。ミズーリ州や周辺の州は、トランプ大統領の岩盤支持層といわれ、バイブルベルト(Bible Belt)と呼ばれています。社会的には保守的であり、カトリック、福音系(Evangerical)や南部バプテスト系(Southern Baptist)など正統派(Orthdox)のキリスト教徒の多い州で、キリスト教や聖書をめぐる論争が続いています。

ミーズリは、合衆国中西部のミシシッピー川沿いの内陸にあります。8つの州にまたがるところでもあります。州都はジェファーソン・シティ(Jefferson City)。同州を代表する都市はなんといってもセントルイス(St.Louis)です。ミシシッピ川に面するこの町は、開拓時代より西部への玄関口として発展し、現在では中西部きっての観光地となっています。セントルイス市内には「Gateway Arch」アーチがそびえています。頂上からの眺めは、ミシシッピー川をはさんで360度の景色が楽しめます。ここには、Gateway Archが建設される様子の資料が展示されています。あの壮麗なアーチが出来上がる様をつぶさに映像で説明しています。

Eastern Bluebird

もともとの開拓には、フランスから移民としてやってきて、カナダでフランス植民地をつくった人々がミズーリにやってきたとあります。そのせいか、フランスの苗字が目立ちます。ミズーリ州は、大理石の生産で知られています。その他、鉛、石炭、採石が生産されています。ミズーリ川とミシシッピー川がこうした資源を運ぶ大動脈となっています。川には大小多くのバージ(barge)と呼ばれる運搬船が往来しています。

ミズーリの主要産業は、航空宇宙産業、輸送設備、食品加工、化学工業、印刷/出版、電気設備、製造業など多彩です。農業生産品は、牛肉、大豆、豚肉、乳製品、干し草、トウモロコシ、ニワトリなどの家禽、及び 鶏卵です。特に豚や牛の生産が盛んです。近年はワイン産業の育成にも州は力を入れています。

州鳥はルリツグミ(Eastern Bluebird)です。日本では、青といわずに「瑠璃」といいます。信号では、緑でも青と表現するのが特徴です。緑色のものを「青」と呼ぶ習慣が根強いからです。外国ではこのような呼び名と意味の使い分けはありません。ルリツグミは、春を告げる鳥として好まれてもいます。日本では春告げ鳥はウグイスといわれます。英語では、「warbler」とか「Japanese nightingale」となっています。

アメリカの州鳥 その43 ミシシッピ州の鳥: マネシツグミ

ミシシッピ州(Mississipi)は合衆国南部に位置する州です。ミシシッピは北はテネシー州(Tennessee)、東はアラバマ州(Alabama)とルイジアナ州(Louisiana)、南はメキシコ湾(Gulf of Mexico)と、西はアーカンソー州(Arkansas)で隣接しています。州名はインディアン部族オジブワ族(Ojibwa)の部族語で「大きな川」を意味するミシシッピ川(Mississippi River)から由来しています。州都および最大都市はジャクソン市(Jackson)です。

Northern Mockingbird

この地域に入った最初のヨーロッパ人探検家はスペイン人のエルナンド・デ・ソト(Hernando de Soto)で1497年頃といわれます。1699年4月、フランス人開拓者がオーシャンスプリングス(Ocean Spring)に最初の開拓地フォートモーリパス(Fort Morlipas)をつくります。さらに1716年、フランスはミシシッピ川沿いにナチェズ(Natchez)の街とロザリー砦(Fort Rosalie)を建設します。この町が中心地となり交易拠点となります。フランスはこの広大な領土を「ヌーベルフランス」(New France)と呼びます。こうして現在のアラバマ州南部とフロリダ州のメキシコ湾岸は、スペイン、フランス、イギリスの各植民地となっていきます。アメリカの独立戦争が終わると、この地域は新生合衆国の領土となります。

1850年代は、綿花がミシシッピ州のいわば王様であり、ミシシッピのプランテーション所有者、特にミシシッピ・デルタ(Mississipi Delta)やブラックベルト地域(Blak Belt)の所有者は土壌の肥沃さ、国際市場での綿花の高値、さらに奴隷という資産で裕福になります。そこから得られる利潤を使ってさらに綿花栽培用の土地と奴隷を購入していきます。ミシシッピ川のデルタで土地を所有する農夫の3分の2はアフリカ系アメリカ人でありました。

1910年には、綿花の価格下落などで黒人農夫の過半数がデルタの土地を失い、小作農になります。1920年では、奴隷解放後の第3世代となったアフリカ系アメリカ人の大半が、土地無し労働者になっていきます。1913年頃からは、グレートマイグレーション(Great Migration)と呼ばれる人口の移動が起こり、数万人ものアフリカ系アメリカ人がミシシッピ州を離れ、職を求めて北部のセントルイス(St. Louis)、シカゴ、デトロイト、フィラデルフィア(Philadelphia)、ニューヨークなど工業化された都市に移住します。

州の鳥はマネシツグミ(Northern Mockingbird)。”Mocking”とは”真似をする”という意味です。真似師鳥とも呼ばれ、他の鳥の鳴き声を真似することができるとも言われています。アメリカでよく見かける鳥で人気があり、5つの州の「州鳥」になっています。鳴き声がトゥララー・トゥイディリ・デー・デー(Tra-la-la, tweedlee dee dee)と表記されるほどです。

アメリカの州鳥 その42 ミシガン州の鳥: コマツグミ

ミシガン(Michigan)は自動車工業発祥の州として知られています。その中心はなっといってもデトロイト(Detroit)でしょう。五大湖のうちの4つに囲まれるという地の利が自動車産業を支えてきました。ゼネラルモーターズ(GM)、フォード(Ford)、クライスラー(Chlysler)のビッグスリーの本社がデトロイトとその近郊にあります。その他の産業も盛んです。アムウェイ(Amway)、穀物のケロッグ(Kelog)、ダウケミカル(Dow Chemical )、ワールプール(Whirlpool)などの本社もここにあります。

American Robin

ミシガン州やオハイオ州、ペンシルヴァニアなどの州は、「錆び付いた地帯」(Rust Belt)と呼ばれています。鉄鋼や繊維産業が衰退し、脱工業化に遅れた州といわれます。今回の大統領選挙ではオハイオ州を除き、バイデンがミシガン、ペンシルヴァニア、ウィスコンシンで勝利したのはグローバル時代の波に乗った結果ともいえそうです。ミシガンはスウィング・ステイト(Swing State)と呼ばれ、毎回、共和党と民主党がしのぎを削る州です。

ミシガン州(Michigan)のナンバープレートには「Great Lake State」と印字されています。五大湖を指しています。ミシガンは北はカナダと国境を接しスペリオル湖(Lake Supeior)、ヒューロン湖(Lake Huron)を抱え、西はウィスコンシン州、南はインディアナ州(Indiana)とオハイオ州(Ohio)に接しています。州都はランシング(Lansing)で最大の都市はご存じデトロイトです。デトロイト国際空港は6本の滑走路を有し、一大ハブ空港となっています。

ミシガンは一大レクリエーションの州でもあります。統計によるとミシガンはカリフォルニア、フロリダに続き全米で第三番目の観光客を集めた州といわれるほど自然に恵まれたところです。65,000の湖や沼が広がるというのですから、レクリエーション客を惹き付ける理由もうなずけます。4つの湖のそばはどこも州立公園や観光地といってよいほどです。

カナダの国境近くにはマキナック島(Mackinac Island)があります。夏はキャンプ、リゾート、なんでも楽しめます。この島は車禁止。移動手段は「リムジン馬車」か自転車となっています。生ガキとキャビア、魚料理の食事も最高です。のんびりと時間が流れるようなところです。

州の鳥はコマツグミ、別名ロビン(Robin)です。合衆国を代表するといえるほど親しまれている鳥です。ヒタキ科に分類されるで渡り鳥です。 鮮やかなオレンジ色が美しく、フレンドリーで愛らしい鳥です。大好きなミミズを探しに歩道や庭先の芝生の上にいるロビンをよくみかけます。頭部から翼にかけては灰色~黒色をしています。くちばしが黄色で眼の上下に白い縁取りがあるのも特徴です。胸が橙赤色です。ヨーロッパコマドリにちなみ「アメリカンロビン」(American Robin)と呼ばれています。アメリカで単に「ロビン」と言えばコマツグミのことです。

アメリカの州鳥 その41 マサチューセッツ州の鳥: アメリカコガラ

マサチューセッツ(Massachusetts)州都のボストン(Boston)から車で一時間のところに大西洋に面したプリマス(Plymoth)という港町があります。ここにメイフラワー号(MayflowerII)のレプリカが停泊しています。大西洋を渡り到着400年を記念して建造された船です。Mayflowerは1620年頃にイギリスから10週間の航海の後、このあたりに着いたことが記されています。102名の乗組員と移民が乗っていました。そのうち3名は妊婦で航海中に出産したことが記されています。長くてつらい大西洋の航海だったようです。

Black-Capped Chickadee

最初の移民の多くは清教徒(Pilgrims)でした。下船して清教徒が開拓したところが今日も大切に保存されています。この居留地はPlimoth Plantation(プリマス・プランテーション)と呼ばれて州の歴史的な公園となっています。開拓地は高い木の柵が巡らされてインディアンからの襲撃に備えたことを伺わせます。

Plimoth Plantation

Plantationに入りますと、そこは17世紀の植民地時代という設定です。タイムスリップするのです。そこで働く人は百姓、鍛冶屋、靴屋、パン屋さんなどいろいろ。当時の服装、言葉、動作で観光客に対応します。観光客はそのことを知らされません。こんな会話が交わされます。

  -働く人:どこから来ましたか?
  - 観光客:日本からきました。
  - 働く人:日本ってなんですか?どこにありますか?
  - 観光客:アジアです。
  - 働く人:どうやってここまで来ましたか?
  - 観光客:飛行機と車できました。 
  - 働く人:飛行機とか車ってなんですか?
  - 観光客:飛行機も車も知らないんですか、、、、。

マサチューセッツ州の車のナンバープレートには「Spirit of America」というキャッチフレーズが印字されています。1680年ころから、マサチューセッツはイギリスの植民地となります。1760年代になると、マサチューセッツ憲法として権利の宣言をし、イギリスの支配に反旗を翻し独立戦争が始まります。この自治と独立の精神が「Spirit of America」というものです。

州鳥はアメリカコガラ(Black-Capped Chickadee)といいます。全長13cm程度の大きさの北大陸北部に分布する留鳥です。冬になると体温を下げて寒さにも耐えられる鳥です。広葉樹林に群れを成して生活します。種子などを地面を掘って貯めますが、その場所をきちんと覚える特徴があります。人なつこく、手の平に餌を置くと飛んできてついばみます。

アメリカの州鳥 その40 フロリダ州の鳥: マネシツグミ

合衆国南部に突き出た半島でメキシコ湾(Gulf of Mexico)を囲むのがフロリダ州(Florida)です。そのナンバープレートには「Sunshine State」とあります。文字通り太陽の降り注ぐ温暖な州です。特に冬は、各地から避寒客がやってきます。極寒の中西部では、「フロリダに行ってくる」というフレーズは周りの人からは羨ましがられるのです。州都はタラハシー (Tallahassee)です。最大の都市はジャクソンビル (Jacksonville)、その他主な都市としてはマイアミ (Miami)があります。

フロリダは豊富な漁猟資源でも知られています。特産のエビや牡蠣(かき)でも有名です。映画「フォレストガンプ」(Forrest Gump)の終わりのところで、ヴェトナム戦争の戦友と再会しエビ捕りにでかけるシーンがあります。柑橘類の果実及びジュース生産も盛んな州です。

日本人にもフロリダ州は子どもや親にとって、わくわくするところです。オーランド(Orland)にあるディズニー・ワールド(Disney World)です。世界一の娯楽施設です。その広さはJR山手線内の約1.5倍というのですから、まさに桁外れのものです。オーランドにはユニバーサル・スタジオ(Universal Stadio)もあります。ディズニー・ワールドとあわせて毎年6,000万以上の人々がオーランドを訪れるというのです。フロリダには、アメリカ航空宇宙局 (NASA) のケネディ宇宙センターがあります。数々のロケットやスペースシャトルが打ち上げられてきたところです。

Northern Mockingbird

フロリダ州の鳥はマネシツグミ(Northern Mockingbird)です。様々な音を鳴き真似する特徴があります。くちばしは細く、顔はくちばしから目に向かって黒の筋が横切ったような模様をしています。鳴き声を発するのは主にオスで、他のオスから自分の縄張りを守るための警告です。繁殖期に交尾相手を誘うのもこの鳴き声です。繁殖期間中は攻撃的な性格になり、自分の巣に近づくものがいれば動物であっても人間であっても襲いかかる気丈夫な鳥です。

CNN.comよりの引用

アメリカの州鳥 その40 ハワイ州の鳥: ハワイガン

1778年にイギリスの海軍士官で、海洋探検家であったキャプテン・クック(Captain Cook)がハワイ(Hawaii)諸島のカウアイ島(Kauai Island)に上陸します。ハワイにやってきた最初の西欧人です。1795年から1893年までカメハメハ王朝(Kamehameha)がハワイ王国が統治します。そして、1959年に合衆国の50番目の州となります。

Hawaiian goose

ハワイは8つの主要な島と120余りの小島からなります。ハワイ島のマウナロア山(Mauna Loa)、キャラウエア山(Kīlauea)の活火山が有名です。先住民のポリネシア系、アジア系、白人など人種のるつぼです。渡来した宣教師が女性の腰みのを改めさせるために考案したのがムームー(muumuu)といわれます。

19世紀はサトウキビの生産と製糖が主要産業であり、大規模な製糖工場が建設されます。20世紀になるとにコーヒー産業への農地転換が行われ、作付け面積や収穫高が多いことで知られています。タロイモ(Taro)やパイナップルも盛んに栽培されています。ハワイではタロは「カロ」(kalo)と呼ばれています。豚肉や鶏肉をカロの若葉で包んで蒸し焼きにするラウラウ(Laulau)という郷土料理があります。タロイモは、熱帯アジアやオセアニアの島々、アフリカの熱帯雨林地帯ではさらに多くの品種が多く栽培されています。これを主食としている民族や地域も多いことは知られています。若葉は葉菜として利用されるのも特徴です。

1941年12月7日に日本軍の真珠湾攻撃で太平洋戦争が起こります。ハワイで生まれ育ち、アメリカの市民権を持つ日系アメリカ人の若者の多くは、自ら進んで志願兵となることで合衆国に対する忠誠心を示そうとします。彼らハワイの日系人だけで組織された陸軍第100大隊は、のちにアメリカ本土の日系人部隊と合流し442連隊(442nd Regimental Combat Team)となり、欧州戦線において多くの犠牲と引き換えにめざましい戦果を上げます。彼らの戦いは多くのアメリカ人に感銘を与え、ハワイと戦後のアメリカ社会における日系人の地位向上に貢献したことで知られています。

ハワイの州鳥はハワイガン(Hawaiian goose)で、地元に人々はネネ(Nene)と呼んでいます。「ネーネー」という鳴き声が由来といわれます。カナダガンがその先祖と言われ、ハワイ諸島に定住し進化を遂げました。ガンといっても渡り鳥としての性質はありませんが、水鳥なので泳ぐことができ、V字編隊での飛翔をするガンの特徴も残しています。産卵時期や産卵場所、交尾場所など、他のガンとは異なる性質が数多く確認されています。

アメリカの州鳥 その39 ペンシルヴァニア州の鳥: エリマキライチョウ

ペンシルヴァニア州(Pennsylvania)は北東部の州と南部の州、大西洋岸と中西部を結ぶ地点にあることから、キーストーン・ステート(Keystone State)「礎石の州」とも呼ばれます。今回の大統領選挙において最激戦区といわれます。エリー湖(Lake Erie)やオンタリオ湖(Lake Ontario)に面し、北はカナダとニューヨーク州に接し、東はニュージャージー(New Jersey)につながっています。形は横長の州です。州都はハリスバーグ(Harrisburg)。州の西には重要な河港を持ち、かつて鉄鋼業の中心地として栄えた町、ピッツバーグ市(Pittsburgh)、独立宣言のときに打ち鳴らされた”リバティーベル”(Liberty Bell)を見ることができる独立歴史公園がフィラデルフィア市(Philadelphia)があります。

Ruffed Grouse

ペンシルヴァニア州の名前の由来から始めます。クエーカー教徒(Quakers)が迫害から逃れて、安全に住める場所として開拓された新天地です。イギリスからやってきた商人でクエーカー教徒であったWilliam Pennという人がいました。やがて貿易などで成功したPennにイギリスは領地を分け与え植民地とします。ペンシルヴァニアには豊かな森が広がります。ラテン語で森を意味する「sylvania」にPennをつけたというわけです。

その後、ペンシルヴァニアは開拓されて植民地化されてはいましたが、Pennらはその地の自治を求めて自由憲章の草稿を書きいています。そしてイギリスからの独立を目指していきます。信教の自由、公正な裁判、主権を持つ人民により選ばれた代表、三権分立などの精神を訴えます。こうした考えは、後にアメリカ合衆国憲法の基本になる考えとなります。

ペンシルヴァニア州の鳥はエリマキライチョウ(Ruffed Grouse)です。全長40cmくらいで、翼長オス18cmです。冬季になると足元に櫛状の突起があらわれます。オスは眼上部にオレンジ色の肉質が見えます。夏季は開けた森林、冬季は針葉樹林に生息します。食性は雑食で、植物の芽、葉、果実、種子、昆虫などを食べます。婚姻形態は一夫一妻性。オスは頸部側面の羽毛や尾羽を逆立て、鳴き声を上げたり翼を震わせて音を出して(ドラミング)求愛します。

アメリカの州鳥 その38 ヴァモント州の鳥: チャイロツグミモドキ

1979年の夏、家族と一緒にカナダを旅してからヴァモント州(Vermont)の州都モントピーリア(Montpelier)を通りました。ヴァモントの州名はフランス語の「verr mont」(緑の山)からとられています。全米で最も小さい州都といわれます。小さな議事堂のロタンダ(rotunda)といわれる中央のドーム内は州の博物館となっています。小さなヴァモントの歴史は、イギリスからの独立をヴァモントが宣言した1777年以来の州つくりと大自然との共存の歩みとなっています。ヴァモント州の最大都市はバーリントン(Burlington)です。

Brown Thrasher

ヴァモント州はアメリカ合衆国北東部のニューイングランド(New England)地方の内陸にあります。北はカナダのケベック州 (Quebec)に、東はニューハンプシャー州(New Hampshier)、南はマサチューセッツ州(Massachussetts)、西はニューヨーク州(New York)に隣接しています。州の多くは山岳と森林で占められています。気候は内陸性ですから夏は暑く、冬は相当「しばれ」ます。ニューイングランドの紅葉は格別です。州の愛称は「Green Mountain State」でこれが車のナンバープレートに書かれています。

ヴァモント州は独立戦争でも名声をたかめます。1775年、ニューヨーク州のハドソン川(Hudson River)に築かれたイギリスの要塞タイコンデロガ砦(Fort Ticonderoga)を、イーサン・アレン(Ethan Allen)の指揮するグリーン・マウンテン・ボーイズ(Green Moutain Boys)などヴァモントからの民兵隊によって奪取します。
 
ヴァモント州最大の産業は観光です。畜産業も盛んです。観光客の多くはインターステート(高速道路)で数時間の距離にあるニューヨークやボストンからやってきます。豊かな自然を売りにしてスキー、サイクリング、キャンプ、フィッシングの鱒釣りなどが盛んです。秋はりんご狩りなどに大勢の観光客が訪れます。この州で忘れられないのはメープル・シロップ((maple syrup) の生産です。全米で最大の生産量を誇っています。サトウカエデの樹液を集めて精製します。シロップの琥珀色は薄いほど高級となります。メープル・シロップは熱いパンケーキやワッフルなどにかけてバターと一緒にいただくと最高ですね。

ヴァモント州の鳥はチャイロツグミモドキ(Brown Thrasher)となっています。チャイロツグミモドキは少し丸くなったくちばし、目の周りが黄色で、体全体が茶褐色となっています。尻尾は長く、すらりとしています。羽の上部には黒と白の斑点が並び、下腹は白いのですが黒褐色の縞が点在しています。ツグミの仲間です、鳴き声はチョロチョロ、チェチェと短く鳴きます。昆虫類のほか、種子なども食します。

アメリカの州鳥 その37 ヴァジニア州の鳥: ショウジョウコウカンチョウ

ワシントンDC(Washington DC)からポトマック川(Potomac River)を越えたところに位置するアーリントン郡(Arlington County)、そこからヴァジニア州(Virginia)は南西に広がります。イギリスから最初に独立した13州のうちの一つ。南北戦争では南部連合(Confederacy)に属して合衆国軍(Union)と戦いました。州都はリッチモンド(Richmond)となっています。

ヴァジニア州は正式にはThe Commonwealth of Virginiaと呼ばれます。植民地時代から地域がそれぞれに共通した目標である独立に向けて共に発展する意思を表しています。この州からは、歴代8名の大統領を送り出しています。そのために、「アメリカ大統領の母なる地」(Mother of Presidents)とも言われるほどです。DCの対岸の州内にはアメリカ国防総省(Pentagon)やCIA本部もあります。

Northern Cardinal

ウイリアムスバーグ(Williamsburg)は是非訪れたいところです。1690年代には植民地時代の首都でありました。1.5km x 1.5 kmの区画内に入植当時の建物はすっかり復元されて、植民地の面影を感じることができます。その近くに1693年に設立されたウイリアム・メリー大学(William & Mary University)があります。この大学はアメリカで最も由緒のある、また優れた学部教育のカレッジとして知られています。

Mount Vernon

マウントバーノン(Mount Vernon)はアレクサンドリア(Alexandria)近くに位置し、アメリカ合衆国初代大統領ジョージ・ワシントン(George Washington)の農場があった所です。木製の邸宅は新古典主義ジョージア調建築様式といわれる壮麗なデザインです。マウントバーノンは祝日やクリスマスでも開き、年中無休です。訪問者は邸宅やその他の多くの建物、奴隷用宿舎、台所、厩、温室などを回わりながら、4つの庭園や森の小道を歩き、ワシントンの私的な生活の足跡を辿ることができます。

州鳥はショウジョウコウカンチョウ(Northern cardinal)です。体長は 21–23 cm位で、歌声鳥(songbird)の名に恥じない鳥です。オスは活気のある赤色で、頭冠羽が目立ちます。目と嘴の周りは黒い縞があります。メスは赤っぽいオリーブ色といったところです。オスは鳴き声で縄張りを主張します。求愛のとき、オスはメスに嘴で昆虫などの餌を与えます。メスは一回で3個から4個の卵を産みます。

アメリカの州鳥 その36 ノースダコタ州の鳥: ニシマキバドリ

ノースダコタ州(North Dakota)は合衆国中西部の最北部、グレートプレーンズ(Great Plains)にあります。州の北側はカナダ国境であり、サスカチュワン州(Saskatchewan)およびマニトバ州(Manitoba)に接しています。西側はモンタナ州(Montana)に、東側はミネソタ州(Minnesota)との州境にレッド川( Red River)が流れ、南側はサウスダコタ州(South Dakota)と接する州です。州都はビスマーク市(Bismarck)。人口最大の都市はファーゴ市(Fargo)となっています。ノースダコタの名前は、スー族(Sioux)であるダコタ族(Dakota tribe)から由来しています。「ダコタ」はスー族の言葉で「友人」という意味です。私はノースダコタを旅したことがありません。

Western Meadowlark – singing – spring

17世紀以降、ノースダコタの領有権はフランス、スペイン、イギリスにより争われます。 1803年、ルイジアナ購入によりフランス領からアメリカの領土になったこの地は、1861年にダコタ準州となりました。 このダコタ準州が現在のノースダコタ州です。州の一番の特徴は厳しい気候があげられます。そのため、他の地域よりも移民の流入が遅れたそうです。 今でも人口密度は低く、州の人口も全米で下から3番目に位置しています。 経済の柱は農業で、中でも小麦は全米トップ、その他、ひまわりの栽培で蜂蜜はトップの生産を誇ります。菜種油(カノーラ油)は92%、カラシ油が62%、ひまわり油は53%、べに花油が18%を占めています。食用油の精製は一大産業となっています。

ノースダコタ州には、63の国立野生動物保護区があります。セオドア・ルーズベルト国立公園(Theodore Roosebelt National Park)、絶滅の危機に瀕した野生のバイソンが400頭以上生息しています。ルーズベルトは1884年、妻と母が同じ日に亡くなった後、その後2年間のほとんどを牧場で働いて過ごします。春には渡り鳥のバードウォッチングができます。アビ、カイツブリ、ペリカン、サギなど 100 種を超える鳥が生息しています。ノースダコタにはノルウェー(Norway)からの移民が多い州です。合衆国のいわば僻地のような所で、人が少なかったのでこの地を選んだといわれます。

ノルウェー系住民の秋祭り-Norsk Høstfest

州鳥はニシマキバドリ(Western Meadowlark) 体長は22 cm位で、長い嘴を持っています。下腹は黄色く、首の下にV字形の縞模様があります。背中は茶褐色ですが、黄色い斑点が目立ちます。ヒバリ独特の短い鳴き声が響きます。ニシマキバドリは垂直に飛翔し、巣のあるとこから離れたところに着地し、巣の所にそっと戻ります。外敵から巣を守るためです。

アメリカの州鳥 その35 ノースカロライナ州の鳥: ショウジョウコウカンチョウ

ノースカロライナ州(North Carolina)といえばライト兄弟(Wright Brothers)です。1903年、世界で初の有人動力飛行に成功したのがノースカロライナです。ナンバープレートには「First in Flight」(初の飛行)と記されています。州都ラレイ(Raleigh)で、最大の都市はシャーロット(Charlotte)となっています。

Northern Cardinal

ノースカロライナ州は、周りをバージニア州(Virginia)、テネシー州(tennessee)、ジョージア州(Georgia)、そしてサウスカロライナ州(South Carolina)に囲まれています。チャペルヒル(Chapel Hill)という町には、実に綺麗なノースカロライナ大学のキャンパスがあります。ノースカロライナ州は科学技術の研究開発が非常に盛んなところです。その中心はResearch Triangleと呼ばれる ラレイ、ダーム(Durham)、チャペルヒルの三つの町です。三つはちょうど三角形のように点在しています。

University of North Carolina-Chapel Hill

農業生産品は鶏卵、豚、牛、牛乳の他にタバコ、大豆が主要なものです。他にも織物、化学工業、電子機器、製紙業も知られています。意外なことですが、ノースカロライナ州はカリフォルニア州以外で最大の映画制作を行っている州の1つでもあります。 

グレートスモーキー山脈国立公園(Great Smoky Mountains)は、約 900 キロメートルにもおよぶ絶景です。ハイキング、キャンプ、ラフティング、ジップラインを通して、この地域の息をのむような景色を堪能できます。海岸沿いでは、カイトボード、サーフィン、スタンドアップ・パドル・ボード、カヤックなども楽しめます。私的な話ですが、来年7月にノースカロライナの大西洋岸のビーチそばで、家族が13名が再会してバケーションを楽しむ予定となっています。すでに娘達が一軒家を予約しています。

州鳥のショウジョウコウカンチョウ(Northern Cardinal)アメリカでは冬期には、都市公園などでも見られ、国民に最も愛されている野鳥のひとつとなっています。頭には冠羽、体全体が赤く、嘴は短めです。尾羽は赤みがかって長く体がすらりとした美しい鳥です。オスは成熟するにつれて赤みが増していくのです。

アメリカの州鳥 その34 ネブラスカ州の鳥: ニシマキバドリ

Western Meadowlark

ネブラスカ州(Nebraska)は合衆国のほぼ真ん中に位置しています。北はサウスダコタ(South Dakota)に、東はアイオワ(Iowa)とミズーリ(Missouri)に、西はワイオミング(Wyoming)とコロラド(Colorado)に、南はカンザス州(Kansas)に囲まれています。州都はオマハ(Omaha)。州の大部分は平坦な大平原が広がり、そこは肥沃なプレーリー(prairei)土に恵まれ、牛肉・豚肉・トウモロコシ・大豆の生産で、国内のトップとなっています。

ネブラスカの西部にはチムニー・ロック(Chimney Rock)など巨大な岩で知られています。このあたりはでは沢山の恐竜が発掘されています。きわめて保存状態が良く恐竜の骨格がはっきりしています。それを展示しているのがネブラスカ大学リンカーン校(University of Nebraska- Lincoln)です。院生を引率してリンカーン市内の小学校を視察し、大学の恐竜博物館へ行きました。圧巻そのものです。

University of Nebraska- Lincoln

州の鳥はニシマキバドリ(Western Meadowlark)といいます。全長は約23cm。腹と喉にかけては黄色で、胸には地褐色と黒い帯状の縞が入ります。上面は黒と薄褐色の縞模様をしています。嘴は長く、鳴き声はチュチュ、チュチュというヒバリに似ています。巣は草地に作ります。ほとんどは昆虫を主食としています。ニシマキバドリはモンタナ(Montana), カンザス(Kansas), ノースダコタ(North Dakota), オレゴン(Oregon)、ワイオミング(Wyoming)の州鳥ともなっています。