どうも気になる その18 発達障害と診断と治療 その5 「病名が決まらないと治療が開始できない」

AD/HDの原因はさておき、病名が決まらないと治療が開始できないとされる。いま困っている症状は何か、ということで早急に治療を開始するために、まず病名をつけるのは治療者にとって便利ではある。そのためにDSM-5とかICD-10のような分類基準が必要とされるようだ。

しかし、病名とは結局「どこからどこまでがこういう名前」というような症状の分類の仕方によって決められるものである。従って新しい事実や考え方が生まれ、分類の仕方が変われば、病名も変わり分類表も改訂される。当然処方される薬も違ってくるだろう。新薬の開発も進むかもしれない。

ザックリと指摘するならば、AD/HDの診断を望むのは教師にも大勢いるはずだ。教室にAD/HDらしき子どもがいて困っている教師は、診断によって「ヤレヤレよかった。これで特別支援学級か学校へ行ってくれる」と安堵するだろう。もしかしたら補助教員がつくかもしれない。特別支援教育コーディネータも、診断によってこうした子どもの措置先や指導体制づくりが進むことで、荷が下りた気分になるのでないのか。特別支援教育に予算がつくのは歓迎すべきことだろう。バンバン診断が下るとこのような状況が起こるのである。

精神科医も次のように囁くのではないか。「これは病気である、あなたのせいではない。」、「支援を得るためにはAD/HDのラベルが有効である。」、「障害者のラベルがつけば公的な支援が得られる。」と。日本における児童生徒へのリタリンやコンサータなどのメチルフェニデートの服用と副作用に関する長期的な研究は一体あるのだろうか。薬に依存する者の割合は薬の種類と服用期間や服用量、年令、性別などの要因と関連があるはずだ。当然服用によって行動が改善された事例もあるに違いない。

国連の児童の権利委員会は、児童と青少年の情緒的・心理的な健康問題に対処するために効果的な措置を講じるよう勧告している。この委員会は、締約国がAD/HDの診断数の推移を把握しつつ、この分野における研究が製薬産業とは独立した形で実施されるよう勧告している。問題は日本で国連の勧告にそって、独立した調査ができるかである。産学共同研究にはこうした難しさもある。

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