「幸せとはなにか」を考える その8 暖かい愛情を受けること

全般的に次のようなことがボストンでの調査から判明した。ハーヴァード大学卒の者は貧しい環境に育った者よりも長生きし、疾病率も低いことである。おおよそ10歳位の違いがある。貧しかった人の26%は65歳で亡くなり22%が障がい者となった。他方、大卒の人の27%が75歳で亡くなり、14%が障がい者となった。

70歳以上になると人が処することができない外的な要因は健康な生活にとって重要でなくなる。むしろ自分で処することができることを実践することが有用である。50歳前に幸せな結婚生活をおくる者は、健康を保ち、その後の生活を自分で高めることができる。人生の悩みに対応できるか否かで、人生は大きく変わる。

20歳から50歳にかけて、成熟性とか適応能力を身につけるものは、順調に心理的な齢を重ねていくことができる。50歳以前では、幸せな人生をおくる2/3が、そして悲嘆や病気の人の1/10が成熟した防衛機制(defence mechanism)を有していた。

ユーモアの感覚を身につけ、自分と他人に尽くし、自分より若い友達との関係を作り、新しいことを学び、愉快な生活をすることに心掛けるべきである。

他方、未成熟な防衛機制は悲しむべき結果をもたらしがちである。自分の問題に関して、他人を非難しないこと、自分が問題を抱えることを否定してはならないことだ。勝手な推測をすることは、解決するどころか、より大きな問題を抱えることになる。むしろ気を紛らす方策を考えるほうが得策である。

繰り返すが、幸せに年をとりながら健康のうちに過ごすには、個人ができることを心掛けることである。例えば、自分の体重に注意したり、運動を欠かさずしたり、学びを続けたり、禁煙を励行し、適度に酒をたしなむといった習慣である。

アルコール中毒は人生に最も大きな破壊力となる。離婚の原因がそうである。神経症やうつ病はアルコール中毒をもたらす。禁煙行為もそうである。初期の病的状態や死亡の最たる原因ともなっている。

調査の主査であるDr. Vaillantが曰く。最も相関の高いのは、配偶者との暖かい関係と健康・幸せである。この関係に疑問を呈する者もいる。だが、健康を維持するには夫婦の関係が最も重要であると確信を持って言えるというのだ。

調査の結論だが、それはジグムント・フロイド(Sigmund Freud)が喜びそうなことである。すなわち母親からの愛情を受ける子供時代は、成人してからも影響を及ぼすということである。暖かい母親の愛情のもとで育った者は、そうした愛情を受けなかった者よりも職業生活でも成功し収入が多かった。不幸な関係で育った者は、年齢を重ねるうちにそうでなかった者に比べて痴呆になる確率が高かったという。

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