心理学のややこしさ その二十八 「ピグマリオン効果」

人は周りから期待されたり褒められると良い結果を示す傾向があります。この現象は「ピグマリオン効果(Pygmalion effect)」と呼ばれます。

ピグマリオンの語源はギリシャ神話(Greek myth)に登場するキプロス (Cyprus) の王で 「Pygmalion」のことです。彼は自分が彫った象牙の女性像と恋に陥るのです。自分の作品があまりにも素晴らしかったのでしょう。神がその彫像に命を吹き込むということが由来となっています。

「ピグマリオン効果」を研究した学者にロバート・ローゼンタール(Robert Rosenthal)がいます。1933年ドイツのギーゼン(Giessen)で生まれで、6歳のとき家族とアメリカに移民します。1956年にUCLAから心理学の学位を取得し、その後はハーヴァード大学(Harvard University)で30年以上も教えます。

ローゼンタールは同僚のジェイコブソン(Lenore Jacobson)と一緒に、「周りの人の期待の効果」を研究します。そして人は生まれ持った才能よりも、学習などで努力した過程を評価されることにより自信につながり、動機も維持できるということを主張します。この期待の効果は「observer-expectancy effect」とも呼ばれます。子供の成績も同じで、期待をかけられた生徒は伸び、期待されなかった生徒の成績は落ちる傾向にあったというのです。こうした子供の「自己実現への予言(self-fulfilling prophecies)」で大事なことは、偽りのない期待であるべきだということです。そのことによって積極的な信念と行動を育むのです。「ピグマリオン効果」は「教師期待効果」あるいは「ローゼンタール効果」とも呼ばれます。

「ほめ方」では他人との比較である相対評価ではなく、本人の努力に対する絶対評価であるべきでしょう。学校でも家庭でも子供のよいところはどんどん褒めるのは間違っていません。大抵子供は「褒められるとうれしい」ものです。