心理学のややこしさ その十七 「コンコルド効果」

人が陥りがちな心理現象の一つに「コンコルド効果(Concorde effect)」があります。「わかっているけどやめられない現象」といってもよいでしょうか。例えば金銭的にも時間的にも投資に関して、さらに損することとわかっているにもかかわらず続けること、投資を惜しみながらもやめられない状態のことです。その他パチンコ、競輪や競馬などもその例です。

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「コンコルド効果」の名称は、かつてイギリスとフランスが共同で開発した超音速旅客機コンコルド(Concorde)の商業的な失敗が由来とされます。1969年3月に原型機が初飛行に成功し、1976年1月から定期的な運航を開始します。ですが、騒音およびソニックブームの影響や飛行距離が短いこと、さらに乗客の定員が100人と少なく経済的にも収益が上がらない、燃料費が高騰するなどから2003年10月に最後の営業飛行を行います。

コンコルドの開発には多額の費用を要したといわれます。結局、事業に投下した資金や労力のうち、事業や行為の縮小や撤退によって、資金や労力は無駄となりました。これは「埋没費用効果(sunk cost effect)」とよばれます。金銭や時間的投資を続けることで損失につながるとわかっているにもかかわらず、それまでの投資を惜しみ、投資がやめられない状態が「コンコルド効果」と呼ばれました。

我が国にも高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が議論となって久しいです。今となっては、もんじゅだけでなく核燃料サイクル政策自体が見込み違いだったことは否めないようです。福島第一原子力発電所事故を経験し原子力への依存度を下げるなか、長年投資してきた資産をサイクル関連の技術や産業に今後生かすことができるかどうかです。