認知心理学の面白さ その四 クルト・レビンとT-groups

認知心理学の面白さ、その二で社会心理学者のフェスティンガー(Leon Festinger) を紹介しました。彼の学術上の成果を引き出したのは指導教官であったクルト・レビン (Kurt Lewin)です。彼もまたユダヤ人の家系です。ポーランドで生まれやがてベルリン大学 (University of Berlin)で学位をとります。

‘I miss the good old days!’

しかし、ナチスの政権掌握によりレビンなどユダヤ人の学者は大学から追放されます。1933年にアメリカに亡命し、その後はスタンフォード大学 (Stanford University) やコーネル大学(Cornell University)、アイオワ大学 (University of Iowa)で研究し始めます。ベルリンに残した家族もアメリカに呼ぼうとしたのですが、母親がユダヤ人収容所で亡くなったことを知ります。

専制型、民主型、放任型といったリーダーシップのスタイルや集団での意思決定の研究を「場の理論」(field approach) 基づいて進めます。我が国で1970年代に盛んにとり入れられたのが集団力学と訳されるグループ・ダイナミックス(group dynamics)の実践で、特にリーダーの養成のアクションリサーチ(action research)として「Training-group」が使われました。企業や団体の指導者訓練で、理論的な考えをまとめた「A Dynamic Theory of Personality」という著作は特に知られています。

レヴィンはゲシュタルト心理学 (Gestalt Psychology)を人間個人だけでなく集団行動にも応用したことで知られています。集団内における個人の行動は、集団のエネルギー場、すなわち集団がどんな性質を有しているのか、どんな成員がいるのかといったことによって影響を受けると考え、これによりグループ・ダイナミックスが生起すると考えのです。ゲシュタルト心理学については、後の心理学者のところで紹介することにします。