IEPはどうなっているか その9 Santa Clara市学校区の教育心理的サービスに関する報告書 その1

カリフォルニア州のシリコンバレーにSanta Clara市学校区がある。学校数は24校。生徒数は15,300人。ヒスパニック生徒の割合は36%、高校卒業率は83%である。近くにはクーパーチーノ(Cupertino)、サニーベール(Sunnyvale)などの街がある。郡庁所在地はサンノゼ(San Jose)である。以前、この学校区の特別支援教育とIEPの内容を調査したことがある。その一部を報告したい。

この学校区には次のような専門家が常駐している。
・特別支援教育支援スタッフ
・プログラムスペシャリスト
・矯正体育スペシャリスト
・学校心理士
・言語治療士
・特別支援教育カウンセラ
・作業療法士
・行動分析士
・アシスティブテクノロジ判定者
・代替補助コミュに二ヶーションテクノロジスト
・ソーシャルワーカ

以下に紹介するのは、IEPの対象となった一人の高校生が法の定めによって3年毎に受けた検査結果である。各分野の専門性を有する職員による検査によって、詳しい発達状態が報告されている。それに基づき継続的な計画が作られ、それにそって指導の成果がどのように現れるかを伺い知ることができる。

学校に常駐する専門家は、学校心理士、言語治療士、矯正体育スペシャリストなどがいることも参考になる。この学校にはソーシャルワーカもいるが、この生徒には関わっていない。
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■生徒氏名: A. B.
生年月日: 1978年11月21日
歴年令: 17才
学校: Santa Clara高校
プログラム: ノンカテゴリカル (障がい別によらない)
教師: A. S.
報告日: 1995年11月27日
チームメンバー:    教師
学校心理士
言語治療士
矯正体育スペシャリスト

【問題に関する背景情報】
Aは現在Santa Clara高校でノンカテゴリカル・プログラムを受けていて,1週間に1回の割合で言語療法士と矯正体育スペシャリストから計画的な指導サービスを受けている。Santa Clara高校へ進学する前は,Busher中学校でノンカテゴリカルプログラムを受けていた。Aは,発達遅滞,てんかん性異常波,性染色体異常という診断を受けている。彼女の健康は良好で,学習活動における「聞え」と「見え」は良好と思われる。彼女は,母親とSanta Clara市内に住んでいる。

○実施されたテスト
実施者
Vineland適応行動尺度学級版: 学校心理士
Beery視知覚運動統合発達テスト: 学校心理士
Leiter国際動作性尺度: 学校心理士
保護者の面接,教師の観察: 保護者、教師
コミュニケーション発達テスト(SICD): 教師、学校心理士
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●Vineland適応行動尺度による評価:
コミュニケーション年令:4才4か月
聞き取り年令:3才11か月
表出年令:4才
書字年令:5才
日常生活スキル年令:4才6か月
パーソナル年令:4才6か月
家事対処年令:4才5か月
地域社会年令:4才5か月
社会性年令:4才9か月
対人交渉年令:5才3か月
遊戯・余暇年令:3才10か月
課題対処年令:3才7か月
Leiter精神年令:5才10か月
IQ:42

【観察と現在の評価】
Aは,周囲の環境や人に対して非常に過敏である。彼女は,教室ではコンピュータでの課題を楽しんでいることや行動原理に基づいた強化の随伴性が構造化されたものには対しては,積極的に反応していることが観察されている。

この評定は,記録の再調査,観察,面接、及び直接検査を実施し作成された。14歳のときのVinelandテストの結果は以下であった。

前回の評価:1992年11月
歴年令:14才
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コミュニケーション年令:3才5か月
聞き取り年令:2才6か月
表出年令:2才8か月
書字年令:5才11か月
日常生活スキル年令:4才4か月
パーソナル年令:3才5か月
家事対処年令:3才9か月
地域社会年令:5才3か月
社会性年令:4才2か月
対人交渉年令:3才4か月
遊戯・余暇年令:6才1か月
課題対処年令:3才11か月
運動スキル年令:4才7か月
粗大運動:5才9か月
微細運動:4才0か月

一人の生徒の発達経過を調べるためには、経年的な検査や観察が大切である。そのためには、人も時間もかかるがそうした体制を学校は用意する必要がある。IEPの作成と実施にはこうした検査結果を基にすることが規定されている。興味ある点である。

【注】
○Leiter国際動作性尺度(Leiter International Performance Scale)は知能検査の一種で、2歳から18歳までの知的発達を測定できる。認知、視覚、記憶、注意の4つの下位検査項目からなる。

○Vineland適応行動尺度(Vineland Adaptive Behavior Scales)は日本語版もあり、標準化されている。アメリカではよく使われている。

○Beery視知覚運動統合発達テスト(Beery Developmental Test of Visual-Motor Integration)は理学療法士や作業療法士がしばしば使うものである。

○コミュニケーション発達テスト(Sequenced Inventory of Communication Development)

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