前稿ではアメリカの舌戦期間中で買収、スキャンダル、信教・思想への攻撃、巨大な資金の投入がなどが堂々と行われていることに触れました。視聴者からは、「こうしたネガティブキャンペーンで相手を攻撃した場合は名誉毀損になるのではないか」という疑問が生じます。アメリカでは1964年の最高裁判決による、ニューヨーク・タイムズ対サリバン判決(New York Times Co. v. Sullivan)により、公職者や政治候補者への名誉毀損のハードルが非常に高く設定されています。

この判決は、憲法修正第1条で謳う表現の自由と名誉毀損法の歴史において、最も重要かつ画期的な連邦最高裁判所の判決の一つといわれています。この判決により、政治家や公務員などの「公職者」に関する言論や報道において、憲法上の強い保護が与えられることになりました。
最高裁の判決では「現実的悪意(Actual Malice)」という法理が強調されました。 公職者が報道や批判によって名誉を傷つけられたとして損害賠償を請求する場合、単に「記事に嘘があった」だけでは不十分であり、原告(公職者)側が以下の「現実的悪意(Actual Malice)」を証明しなければならないという基準を打ち立てたのです。

政治候補者が名誉毀損で相手を訴えて勝訴するためには、単に「嘘だった」だけでは不十分なのです。「相手が『嘘であると知っていた』、または『嘘であることを著しく無視して』意図的に攻撃したこと」を原告側が証明しなければなりません。したがって、不正確な噂や誇張されたスキャンダルであっても、政治の場では容易に法的責任を問われない仕組みになっています。
終わりにアメリカの憲法思想では、「間違った言論や過激な誹謗中傷に対抗する最良の手段は、政府による規制ではなく、反論や有権者による投票での審判である」という考え方が徹底されています。そのため、中間選挙などで相手の醜聞や信教、資金力などを堂々と攻撃・非難することは、修正第14条・第1条が保障する「表現の自由」の範囲内であり、違憲とはならないどころか、まさにその憲法によって守られている行為となります。実に興味ある法理です。

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