本稿では、政治的にも宗教的にも話題となっている「福音主義」とか「福音派」ということを数回にわたり取り上げます。アメリカでは1970年代以降、宗教右派として組織化が進み、特定の政治信条や共和党などの大統領候補の強力な支持基盤となっています。2024年のアメリカ大統領選で勝利し、2025年1月に第2次政権を発足させたのがドナルド・トランプ(Donald John Trump)です。全米の有権者の約20%を占める福音派(エヴァンジェリカルーevangelical)が、トランプ陣営の最も堅固な「岩盤支持層」として機能し続けたといわれます。リベラル化が進むアメリカ社会において、伝統的な家族観や宗教的権利が脅かされているという危機感を持つ福音派に対し、トランプは「あなたがたの信仰と価値観を守る」と約束し支持されていきました。
「福音派」の教会となにかです。福音派とは、一般的に伝統的なプロテスタント諸教会(Protestant churches)やその分派を指します。特に20世紀後半以降は、イエス・キリストの福音の説教、個人的な回心体験(personal conversion)、信仰の唯一の拠り所としての聖書、そしてキリストへの個人的な献身を促すとい積極的な伝道を重視する教会を指す言葉として用いられています。アメリカやイギリスをはじめとする英語圏を中心として、自由主義神学に対抗して近現代に勃興した、聖書信仰を軸とする神学的・社会的に保守派のムーブメントとなっています。特にアメリカの福音派は信徒1億人を超える巨大派閥と化し、独自色も強いといわれます。
福音派という言葉は、「良い知らせ」を意味するギリシャ語(euangelion)やラテン語(エヴァンゲリウム-evangelium)に由来しています。これらは英語の「ゴスペル(gospel)」という言葉の語源でもあります。16世紀には、イエス・キリストへの信仰による義認を強調し、聖書のみを信仰の拠りどころとしたマルティン・ルター(Martin Luther)とその支持者たちが「エヴァンジェリカル」と呼ばれていました。宗教改革(Reformation)の時代、この名称は、ルターの支持者たちと、「改革派(Reformed) 」と呼ばれていたジャン・カルヴァン(John Calvin)の支持者とを区別するものでした。現在でも、多くのルーテル派教会(Lutheran churches) の名称には「エヴァンジェリカル」という言葉が付けられています。


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