アメリカ人の価値観は変化したのか

前例のない選挙結果となったのが、今回の中間選挙です。それを取り上げみます。まず、ヒスパニック、アメリカン・インディアン、モスレム、黒人、女性、牧師、障害者、小児科医師など多様な背景を持った候補が支持され当選したことです。特にディープサウス(Deep South)とかバイブルベルト(Bible Belt)といわれるアメリカ南部および中西部・南部などで、ヒスパニック系の人々が民主党を支持したことです。それも大差を付けての結果です。ディープサウスとバイブルベルトはそれぞれ異なる点、例えば歴史、人種、地理 vs. 宗教、価値観からアメリカ南部を指す言葉ですが、地理的には大きく重なっています。

 ディープサウスとは、ミシシッピ州、アラバマ州、ルイジアナ州、ジョージア州、サウスカロライナ州の5州が中核とされます。文脈によってはノースカロライナ州やテキサス州の一部が含まれることもあります。アフリカ系アメリカ人の人口比率が全米でも特に高い地域であり、奴隷制の歴史やその後の1950〜60年代の公民権運動の舞台となった重要な歴史的背景を持っています。

 ディープサウスには歴史と経済の背景があります。かつて大量の奴隷労働に依存した大規模な綿花・タバコなどのプランテーション経済が発達した地域です。南北戦争時にはアメリカ連合国(Confederate)の中心となりました。私的なことですが、私は留学の語学研修で2か月、ジョージア州で生活したことがあります。母音をだらりと引き伸ばして、全体的にゆっくり話す話し方の南部なまり(Southern Drawl)や温かいおもてなし(Southern Hospitality)に触れ、ブルースやジャズも楽しみました。

 次にバイブルベルトといわれる主な州は、アメリカ南部および中西部・南部の一部、つまりテキサス州、オクラホマ州、アーカンソー州、テネシー州、ケンタッキー州、ミシシッピ州、アラバマ州、ジョージア州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州などにまたがる広大な地域です。その主な特徴は、宗教的背景にあり、社会的・政治的に保守的な福音派プロテスタント(Evangelical Protestant)の信者が圧倒的多数を占める地域です。

 バイブルベルトでは、社会・価値観に特徴があります。すなわち日常生活や道徳観にキリスト教の教えが深く根付いており、教会の活動がコミュニティの中心となっています。進化論の教育をめぐる議論や、人工妊娠中絶、同性婚、酒類の販売規制などに関して、伝統的・保守的な価値観が強いことで知られています。

 しかし、今回の選挙戦の争点を見ますと、南部や中西部における人々の伝統的な価値観が変わっているかのような印象を受けます。ですがそれは一過的かもしれません。その理由はなんといってもイランやシリア、リビア、ヒズボラでの戦争による介入やイスラエルへの軍事支援などが、諸物価や燃料の高騰に拍車をかけ厭戦気分を高め、トランプ政権や共和党に悪影響を与えたと思われるからです。伝統や価値観の変容には時を要するのです。

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