先日、「reasonable accommodation」にある「reasonable」とはなにかという話題を取り上げました。http://naritas.jp/wp1/?p=3501 今回はその続きで「accommodation」ということの意味についてです。
スイスの心理学者であり発達心理学者でもあるジャン・ピアジェ (Jean Piaget) は、子供の思考の発達段階を認識論 (Epistemology) からたどり、同化 (assimilation) と調節 (accommodation) という仮説をたてます。どういうことかいいますと、同化とは環境を自分のなかに取り込む働きであり,調節とは自分を環境に合わせて変える働きであるというのです。
同化は,子供の行為であり、周りの事象を理解し自分の知識へ取り込む働きのこととされます。他方、調節は,子供が環境へ適応するために、子供が学んでいる既存の体系に修正を意味するということです。ここからわかるように「合理的配慮」の「raccommodation」とは子供自身の主体的な環境との関わりを示すことばであることがわかります。つまり、子供が「柔軟な工夫や対応」をする行為といえます。
もっと広く法律や医学、ライフサイエンスなどの分野でも「accommodation」という用語は使われます。例えば、生命保険の領域では、「accommodation」は適応とか利害の調停や和解などとして使われます。 「arrange an accommodation」つまり調停をはかるといった例です。法令では、「収容」とか「便益施設」という意味でも使われます。眼科では遠近調節といった使い方をします。ライフサイエンスでは、順応ということばが使われます。それは「accommodation to urban life」というフレーズに言いあらわされます。
日常生活における「accommodation」の使い方ですが、「It will be an accommodation if you will meet me at the station.」という文章があるとします。これは、「駅まで迎えにきてくれれば有り難い」という意味です。迎える行為が「心地良い対応」とか「便宜をはかってくれること」となります。ニュアンスとしては、迎えにきて貰う側の立場にたつ表現です。
アメリカ障害者法 (Americans with Disabilities Act: ADA) における雇用などに関する「合理的配慮」の概念として、障害のある人々に障害のない人々と同等の対応をすること、あるいは適切な工夫や対応をすることが「reasonable accommodation」であると説明されています。公平と平等という社会的規範のもとで、企業の経済的合理性という妥協も生まれるのは確かです。そのため曖昧で無意識な和解や便宜的な措置がなされる可能性もあります。障害当事者団体が警戒するのが「合理的な措置とか対応」ということなのです。福祉的で恩恵的なイメージが「reasonable accommodations」にもあるということです。
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