架け橋

Last Updated on 2025年2月8日 by 成田滋

 「橋ものがたり」を読んだ。藤沢周平の傑作の1つといわれている。いくつかの短編からなる本である。そこに流れるテーマは「橋」。橋は人が出会い、別れる最もふさわしいところのようである。ときめく人に偶然会ったり別れの時をかみしめるところ、川面をながめて物思いに沈むところ、夕日を眺めて疲れを癒すところとなる。自らの命を落とすところにもなる。

Die Brucke

 多くの橋が歴史でも登場する。国と国とを分断するのも橋である。朝鮮半島に沢山ある。「帰らざる橋」が板門店の軍事境界線に架かっている。かつて捕虜が北から南へ、南から北へ帰った場所である。臨津江(イムジンガン)にも橋がある。ソウルの北西50キロにある臨津閣にある。ここに架かるのが「自由の橋」。今は、韓国人も観光客も自由に訪れることができる。京義線の鉄道橋が南北分断の冷酷さを示している。間近に北朝鮮を眺めることができる。捕虜が渡ったこうした橋を眺めると、自由とは、統一とはなにかを考えさせてくれる。

自由の橋

 戦争でも多くの橋が舞台となった。映画の名作にそうした橋が出てくる。1959年製作のドイツ映画「橋(Die Brucke)」。これはババリア地方の田舎町に架かる一本の橋の守備を命じられ、自ら進んで志願した7人の高校生である。青春を謳歌していた彼らに戦車を先頭にした米軍が押し寄せる。

 「戦場に架ける橋」も忘れられない。第2次大戦下のビルマ・タイ国境近くにある日本軍捕虜収容所にニコルスン大佐を隊長とする英軍捕虜の一隊が送られてくる。捕虜はバンコックとラングーン間を結ぶ泰緬鉄道を貫通させるため、クライ河に鉄道橋を建設することを命じられる。捕虜が誇りをかけて造った橋に日本軍と英国の捕虜が乗った一番列車がさしかかる。そのとき、密かに潜入した味方が爆破してしまう。それを見ていた将校が、「馬鹿げている。信じられない」と空を見上げて嘆く。

戦場に架ける橋

架け橋」への1件のフィードバック

  1. ソウルの近郊にあるDMZ、非武装地帯を是非訪れて欲しいです。なぜ何十年も同じ民族がいがみあうのかを考えさせてくれます。主義主張を隔てるのが大国間の政治です。民族の分断は凡庸な政治のせいです。s

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