その六 「これからの研究発表について」

Last Updated on 2025年2月15日 by 成田滋

多くの研究がなされ、その結果が発表されている。学会の大会へ行くと若い研究者や院生が熱心に発表している。その姿をみながら、「頑張れよ!」と声をかけたくなる。

だが、ときにどうも腑に落ちない発表がある。それは実験を行った事例に多い。もっと観察期間を設けたほうがよいのではないか、誰がやっても同じような結果になるのではないか、被験者は変化するべくしてそうなったのではないか、期待するような結果が生まれなかったこともあったのではないか、その後被験者はどうなっているか、こうした疑問に答えていない発表があるのである。

学会では、「期待するような結果が生まれなかった」という事例の発表はほとんどない。「結果が生まれなかった」という結論のことを、仮説が検証されなかったともいう。だが結果の解釈について、データの分析の際に誤った判断をすることはある。行動科学では、100回の試行うち、5回以内(5%)の誤りは許容するという慣行がある。人間の判断には必ず誤りがある、ということが前提となっている。

Claim–> Evidence–> Reasoning= Explanationという式をもう一度振り返る。何を調べたいのかというclaim(主張)がはっきりしていること、evidenceという形跡が、きちんとした手続きによって得られたとすると、次ぎに大事なのはreasoningである論法や推理である。合理的な解釈のことである。この際、結論づけるときには、解釈を間違う確率を断った上で「このデータからは違いや差があるとは結論できない(できる)」と考える。

「違いが生まれても、その違いが偶然で起きたとは考えにくい。従って差があると解釈してよかろう」と考えるのがエビデンスに対する姿勢であるべきである。エビデンスをゆめゆめ動かぬ証拠などと誤解してはならない。

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