「レジリアンス」とストレス

Last Updated on 2025年3月1日 by 成田滋

今年は、地域で皆が楽しみにしている運動会は「体育学習発表会」という催しに名前を変え、子どもは練習を重ねています。そのため放課後囲碁教室の開始時間が不規則になったり、回数が少なくなっています。10 月14 日の昼過ぎ、教室を開いている副校長から電話があり、「1 時間開始が早まった、教室で子どもたちが待っている、早く来て欲しい」との連絡でした。

6月までは教室再開の制約が多く、子どもと囲碁ができない状態が続きました。コロナの緊急事態宣言が解除されてから学校は徐々に正常な姿を取り戻しました。非日常的なことといえば、子ども達がマスクをして距離をとり三々五々通ってくることです。学校はいちはやく、どうしたら「学校を再開する」、「授業を始める」ことができるかを考えたのです。子どもの学習に遅れがないように「再開しない」「再開を延期する」ことは念頭になかったようです。

間近に迫った体育学習発表会では、保護者は1家族2名まで、通路は一方通行、敷物・椅子・日傘の使用は禁止、子どもと保護者のトイレの区別、などなど対策を講じています。そして発表会のスローガンにある「みんな心を一つにして」を演技と競技で披露しようとしています。この発表会のスローガンから、困難に立ち向かう力とか課題を克服する心意気を感じさせてくれます。

心理学では、困難を乗り越える精神力のことを「レジリアンス」(resilience)と呼びます。自発的な治癒力を意味し、精神的回復力とか抵抗力、復元力ともいわれます。「レジリアンス」は肯定的な未来志向のことを指します。世の中は、危機感やストレスに満ちた状態のように見えます。ですがそれを耐え難い問題として見ないで、今こそ希望的な見通しを抱き、良いことを期待することが大事だということを「レジリアンス」は教えています。

レジリアンスとは復元力

レジリエンス、元々はストレス(stress)とともに物理学の用語といわれます。ストレスは「外力による歪み」を意味し、レジリエンスはそれに対して「外力による歪みを跳ね返す力」として使われ始めます。精神医学では、コロンビア大学教育学部臨床心理学教授であり、トラウマ研究の第一人者として知られているボナノ(George Bonanno)が2004年に述べた「極度の不利な状況に直面しても、正常な平衡状態を維持することができる能力」という定義が用いられることが多いようです。

このように心理学の分野では、トラウマからの回復にレジリエンスが重要な役割を果たすことが注目されています。1970年代には貧困や親の精神疾患といった不利な生活環境(adversity)に置かれた児童に焦点を当てていました。1980年代から2000年にかけて、成人も含めた精神疾患に対する防衛因子、抵抗力を意味する概念として徐々に注目されはじめていきます。レジリエンスとは、元々人間に備わっている本能的に復元する能力といえましょう。(2020 年10 月15 日)

成田滋のアバター

綜合的な教育支援の広場

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA