ポスドク研究者

Last Updated on 2025年5月27日 by 成田滋

本稿は、アメリカにおける博士号(Ph.D.)取得後に任期制の職に就く研究者、ポスドク(post doctoral=ポスト・ドクトラル) の話題です。ポスドクとは、自らのキャリアパスを追求するために必要な専門スキルを習得することを目的として、指導教官の下で研究または学術研修に従事する者を指します。このような研究者の正式な職名は「Postdoctoral Researcher」と呼ばれています。「博士後研究員」と訳されることもあります。ポスドク研究者は、アメリカにおける大学院研究活動を牽引する上で重要な役割を果たしています。

 ポスドクとしての主な研究職の役割は次のようなものです。
1 研究のデザインと実施:自身の研究プロジェクトを立ち上げ、実験を設計し、データを収集・分析します。
2 論文執筆: 研究結果を発表するための学術論文や資金申請書を作成します。
3 指導と共同作業:大学院生やジュニア研究者への指導を行います。
4 人的ネットワークの構築:学会での発表や国際的な研究協力を通じて自身の専門分野での人脈を広げます。

ポスドク研究者の分布(US)

 研究中心の大学や研究機関では、終身在職権(テニュア= tenure)の職を得るために、ポスドク研究が必須となる場合があります。従来は任意であったポスドクの経験は、学術界における終身在職権の競争が過去数十年で著しく激化したため、一部の分野では必須となっています。その理由は、ポスドク研究者の増加に比べて学術界における専門職の供給が少ないためです。それ故、終身在職権を得ることは困難となっています。2008年には、博士号取得後5年以内に終身在職権または終身在職権トラック(tenure track)のポジションを得たポスドク研究者の割合は約39%といわれます。2003年時点ではポスドク研究者の約10%が40歳以上であるという統計もあります。

 ポスドクの期間は通常、特定の研究プロジェクトに取り組みながら、独立した研究者としてのスキルを磨くための重要な段階となります。ポスドクは、学界や研究機関でのキャリアパスを追求する上で次のような経験を積む機会となります。 .
1 専門的スキルの向上: 特定の分野における専門性を深め、独立した研究者としての地位を確立することができます。
2 キャリアアップの機会:ポスドクの経験は、教員職や研究職への道を拓くための登竜門となります。
3 研究資金の獲得:ポスドクの間に研究資金を獲得する能力を高め、将来の研究に向けた財源を獲得します。

 ポスドクのポジションは通常2〜4年であり、契約状況や資金の状況によって異なります。また、Wikipediaによれば、ポスドクの給与も地域や研究機関によって異なり、博士号取得後1~5年におけるポスドク研究者の年収中央値は42,000ドル(588万円)で、終身在職権(テニュア= tenure)を持つポストの平均年収75,000ドル(1,050万円)より44%低い水準です。ポスドクは、博士号取得後のキャリアパスにおいて、専門的なスキルやネットワークを構築するための重要なステップとなっています。

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