統計で騙す方法 その四 人とはウソを言うものである

Last Updated on 2025年6月27日 by 成田滋

 「新聞を読んでいますか」、「どのような新聞を購読していますか」という世論調査の結果も面白い。これは固定電話の持ち主に対して行われました。いまから30年位前では、『読売新聞』が常にトップの発行部数を誇っていました。最も読まれたとか購読している新聞といえば『読売新聞』『朝日新聞』『毎日新聞』でした。『しんぶん赤旗』は論外でした。

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 『朝日新聞』は、特に以下のような特徴を持っていました。それは知識層・リベラル層に人気があったことです。大学教授、官僚、公務員、教育関係者など、比較的リベラルな傾向を持つ読者層に強い支持を得ていました。『朝日新聞』は文化・教育記事が充実していたといわれます。科学、教育、文化などに関する記事の質が高いとされ、教養的なコンテンツを求める人に好まれました。そして全国的な販売網を有し、地方にも支局や販売店を持ち、安定的な購読層を形成していたといわれます。1990年代にはスマートフォンは存在せず、ほとんどの家庭が固定電話を使っていました。そのため、この種の世論調査は全国の購読者層をある程度反映していたと考えられます。

 しかし、実際にはどの新聞を購読したり読んでいたかです。「どの新聞をよんでいたか」と問われたいわゆる知識人は、『読売新聞』とは答えなかったのです。『読売新聞』は巨人のオーナーであり多くの読者を抱えていました。知識人といえども巨人ファンになびいていました。ですが質問に対しては、自分は教養的なコンテンツを求めているというブライドがあり、本当のところ読売新聞というように答えなかったのです。もしかしたら『しんぶん赤旗』を読んでいたのかもしれません。上品ぶったウソの回答をしたのです。

 同じことが、月間雑誌の読者にもいえます。当時の文化人といわれていた人が好んで購読していた雑誌は『中央公論』・『思想』・『世界』・『文藝春秋』など古典的名雑誌は現在も根強く支持されつつ、多様なニーズに応じて専門誌・思想誌・実務誌へと読み分けられています。用途や関心領域によって、上記の中から選ぶのが現代の知識人的定番と言えます。『文藝春秋』の発行部数がもっとも多く、40万〜46万部、『中央公論』は2万〜3万部、『世界』は4万部、そして『思想』は遙かに少ないといわれます。

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 『中央公論」は、知識人や教職者など特定層に根強い支持があるものの、一般への訴求力では及びません。『世界』はややリベラル・論壇色が強く、「知識人の義務として読まざるを得ない」「内容が重い」といわれてます。『思想』はあまりに専門性が高いといわれ部数は少ないといわれます。『文藝春秋』は、幅広い分野の内容、圧倒的な刊行部数、権威ある文学賞掲載という三拍子が揃っていて最も読者層の支持をしっかり獲得しているようです。

 知識層やリベラル層の人々が『世界』『思想』『中央公論』を好んで読んでいるという回答は、知的レベルを意識した高尚ぶったウソ回答のようです。

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