統計で騙す方法 その六 平均で騙す方法

Last Updated on 2025年6月29日 by 成田滋

「日本人の一世帯当たりの平均収入はどのくらいでしょうか。中央値と最頻値も教えてください。」という問いを生成AIに出すと、2022年の厚生労働省による「国民生活基礎調査」によると、直近の「1世帯あたり所得」の代表値は以下のとおりであるという回答を得ました。すなわち、平均値(算術平均-mean)は 約 545万 円、中央値(メジアン-median)は 約 423万 円、最頻値(モード-mode)は 200~299万円となりました。平均が最も高くなっているのは、高所得世帯、例えば年収1,000万円超が全体を引き上げているためと推定されます。中央値とは、データを小さい順に並べたときに真ん中にくる値のことです。最頻値とは、データの中でもっとも頻度の高い値のことをいいます。

日本人世帯収入のおおよその分布::最頻値 < 中央値 < 平均値

 次に中央値は平均より約120万円低く、世帯の丁度真ん中で423万 円となります。最頻値の200〜299万円は中央値よりさらに低く、平均より1/2以下で実際に多くの世帯はこのレンジ付近に集中していることを意味します。少数の高所得世帯によって平均値が引き上げられている実態が読み取れます。所得の分布を並べますと 最頻<中央<平均 という順になり、右裾が長く伸びた分布となります。値の大きさは、になります。高所得世帯がいる一方で、多くの世帯では200〜299万円の所得帯が中心であること、この乖離が日本の所得分布の特徴となっています。

 このとき、平均値よりも中央値を使うことによって、所得の分布を分析するのが誤解が少ないと思われます。最頻値の200〜299万円は中央値よりさらに低くなっており、この世帯の収入が日本人収入状況を示していると判断すべきです。この時のトリックは、「平均」という言葉の意味が非常にルーズなのを利用して、日本人の豊かさを示そうとすることです。平均は大衆の意見を左右したり、広告をとりたいと思う時に意図してしばしば使われるのです。全世帯の半分が約 423万 円以下の収入を得ていると理解するのが大事です。最頻値の200〜299万円とは、この範囲の収入世帯が最も多いことを示します。

 日本人の所得を考えるとき、平均値を使うよりも中央値、もしくは最頻値を使うことで日本人の所得からみた暮らしの状態がある程度推測できるのです。平均値を使うことによって、例えば各国のとの比較がなされることは、間違いではありませんが、中央値や最頻値のほうが、生活の実態や財布の中身を知る上ではベターであるといえます。平均値とは、概して実態を目隠しがちになることを知っておきたいのです。平均値とは意外と人を誤解させたり騙しやすい統計の代表値なのです。

 日本人の所得の分布のように、最頻<中央<平均 という順のように片側の裾の長い分布の場合は、平均値だけを見ていては現実をうまく捉えることはできません。分布の形、中央値や最頻値、個別の数値を合わせて見ていくようにすべきです。

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