統計で騙す方法 その七 パーセントという二十面相

Last Updated on 2025年6月30日 by 成田滋

あることに関して発表する方法にはいろいろあります。筆者の周りあったことですが、マンションの管理費を「1.1倍」か「1.2倍」に引き上げたいという提案が管理会社からありました。なんのことはなく「10%」か「20%」引き上げたいということです。同じ引き上げ率ですが、見え方によって印象は変わるという例です。「1.1倍」のほうが「10%」よりもみじめに小さいと感じるのです。もしかして管理会社はこのトリックのようなことを知っていたのかもしれません。

 とあるスーパーにおいて、特定の商品について大売り出しと称し午前中に99円で売ったとして、午後に100円として売ったとします。1%の儲けです。そうすると「年間365%の儲けになる」となります。実際には「365円の儲けになる」というだけです。どのような数字にしてもその表現の方法いろいろあるものです。全く同じ事実を表すのに。売上高の。1%の利益とか、投資額の45.5%の利益とか、1000万円の儲けとか、昨年比の60%の減、というようにいろいろと表せるのです。そして、その中から当面の目的に最もかなう方法を選んだならば、その数字が事実を正しく表していないと気がつく人はほとんどいないと考えた方がよいようです。

 日本のある自動車会社が、最近9か月の売上高の12.5%という税引きの利潤を報告したとします。その同じ期間中に投資に対する利益は45.5%であったとします。この場合、考えられるワナは、年間の投資額に対する収益というものは、総売上高に対する利益とは同じものでないということです。得てして大企業というのは、大きな収益をあげたことを報道することは控える傾向があります。従業員のベースアップやボーナス要求を抑えるためにも、売上高の上昇による利益という控えめな報道をするのです。

 商品の値引きをパーセントで表し、消費者をトリックで騙すことがあります。ある商品について、「50%プラス20%の値引き」で販売するとします。値引率は70%となるでしょうか。違います。この20%とは50%に値引きした品にさらに20%を値引きするということです。従って、割引率は、0.5×0.2=0.1(10%) ですから60%となります。

 もう一つの騙されやすい例があります。パーセンテージとポイント(パーセンテージ・ポイント)です。もし誰かの投資額の5%の利潤があったとします。翌年にはそれが10%になったとします。利潤は5ポイント増加したと言えば、控えめな印象を与えます。しかし、それを100%といっても一向に差し支えないのです。この説明は、パーセンテージとパーセンテージ・ポイントが紛らわしいということを示す例です。

 本話題のお終いに、各政党の支持率も何ポイント上昇とか下降という報道があります。K党が前回は5%の支持率、今回は10%となったとしますと、5ポイントの増加であり、100%の増加と言ってもよいのですが、そのようには報道されません。「5%増えた」と言うと、絶対的な増加量なのか、元の数値に対する割合なのかが分かりにくくなります。そこで、「5ポイント増えた」と言うことで、単なる増加量ではなく、パーセント表示された数値の差であることを示します。

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