この人を見よー内村鑑三 その三十 「二宮尊徳」

内村鑑三は敬虔なキリスト教徒であり、無教会主義の指導者でもありました。彼は江戸時代後期の経世家、農政家、思想家であった二宮尊徳の生き方や思想に、キリスト教の精神、特に「隣人愛」や「奉仕精神」と共通するものを見出したようです。わたしどもは、一般に二宮尊徳を「二宮金次郎」と呼んでいました。小学校の庭に薪を背負いながら本を読んで歩く姿の像がありました。内村は、キリスト教精神との親和性を見いだしたのです。尊徳の報徳思想である「徳に報いる」「徳をもって徳に報いる」は、利他的な行動を重視する点でキリスト教的な倫理観と通じると考えます。貧しい農民のために尽くし、荒廃した村を再興していった尊徳の姿は、「行動する信仰者」として、内村の理想像と一致するようです。

 内村は、単なる信仰の言葉や理念ではなく、それを実際の生活と社会に活かすことを重視しました。尊徳は神仏に対する敬虔さという信仰心を持ちながらも、現実的で有用な農業・経済の改善策を実行した人物でした。信仰と実践の一致を強調します。尊徳は、貧しい農民に働く意義を説き、勤労・倹約・積善によって村々を再建します。このように、道徳と経済を両立させた姿勢は、内村が唱える「信仰と行動の一致」すると言うのです。

 内村は、日本人が持つ伝統的な美徳と、普遍的なキリスト教的倫理が両立可能であることを示そうとしました。尊徳は、日本の伝統的価値観である孝、忠、誠、節などに基づきながら、それを普遍的な道徳である倫理・経済・教育へと昇華させた人物でした。尊徳の生き方に日本的精神と普遍的道徳の融合を見いだしたのです。 

一円札の二宮尊徳

 彼は武士ではなく農民出身でありながら、実践的知恵と倫理によって国家に貢献します。これは、身分や出自に関わらず、人格によって人は偉大になれるという内村の思想と重なります。内村が尊徳に深く共鳴した理由は、「信仰と実践を一致させた人物として、また日本的精神とキリスト教的倫理を調和させる模範」として尊徳を見たからです。そのため、内村は尊徳を「代表的日本人」として世界に紹介するにふさわしい人物と考えるのです。

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