高市政権は「責任ある積極財政」の推進を主張しています。その理由や根拠、さらに課題などを2回にわたって考えていきます。デフレや低成長からの脱却が「責任ある積極財政」の目指すところです。長期的な物価停滞が続き、実質賃金の伸び悩みを解消し、国内の需要不足を補うには、民間需要が弱い局面で政府が支出を増やす積極財政が必要と考えられています。大手企業の多額の剰余金が滞る状況では、財政出動がインフレを呼ぶのではなく成長に結びつきやすいというのです。
次に、安全保障・災害対策・社会基盤への投資が必要と考えられています。防衛力強化、災害インフラ、エネルギー安全保障、デジタル化など、国として不可避な支出項目が増えています。これらは民間投資では賄えない領域であり、政府の支出が不可欠と考えられるのです。
さらに税収は経済成長によって増えるという考え方にたっていることです。財政再建を「歳出削減・増税」ではなく「経済成長による税収増」で達成するという立場です。経済成長率が高まれば、GDP比の債務負担が相対的に低下するという論理です。増税は、国民の実質賃金を下げる懸念があります。積極財政の財源は国債によって賄われなければなりません。
日本国債の性質は自国通貨建てで、低金利の状態にあります。日本は自国通貨建て国債で返済不能リスクは低く、中央銀行が市場の混乱を抑制できるという事情があります。国債市場は安定しており、国債の消化主体の多くが民間金融機関や日銀であるため、財政破綻リスクは相対的に小さいといわれています。国債の償還は、借換債でおこなわれており、財政破綻、いわゆるデフォルトの懸念はありません。
現下の世相では、少子化や技術革新などへの“未来投資”が不可欠だといわれています。教育投資、科学技術、スタートアップ支援等は短期の採算性が弱いため、政府支援によって成長基盤を作るべきだ、という考えです。民間投資ではこうした取り組みは困難なのです。

