統計で騙す方法 その二 投票行動と出口調査

Last Updated on 2025年6月25日 by 成田滋

「参議院議員選挙の前哨戦」といわれた東京都議会議員選挙が終わりました。投票所の前には報道関係者がいて、投票を終えた市民に対して、どの政党に投票したかを調べていました。結果を予測するには、一つの選挙区では無作為に選ばれた400人程度が必要と考えられています。ですが番組によって当確に違いが見られることや、候補者によって当確が出る時間の違いがでてきます。そのことに疑問を持ったことはありませんか?

 実は、こうした「当確」や「当選」をうつときに、大量のデータから価値ある情報を抽出し、分析、解釈するためのデータサイエンスが用いられるのです。この方法により出口調査のデータを使って誰が「当確」となるかを決めることができるのです。 出口調査のデータによって、それぞれの候補者の得票率を「おおよそこのくらいから、このくらいまでの区間に入るのではないか?、もし区間に入るならば当確を打つ」という決定をするのです。出口調査のデータは放送開始の数時間まえに分析され、放送開始時にはすでに「当確」、あるいは「やや優勢」などが分かるのです。

 このとき大事なのが、出口調査でインタビューする人を無作為に選ぶことです。均等な人数間隔、もしくは時間間隔をおいて調査への協力を依頼します。例えば投票を終えた人を順に5番、10番、15番という具合に選びます。インタビューの時間として午前の前半、後半、午後の前半、午後の後半というように分けることです。午前中は、高齢者が投票する傾向があります。母親は食事の世話や洗濯が終わった午前の後半か午後に投票所へ向かう傾向があります。若年層はゆっくり起きて、午後に投票所へ向かいがちになります。こうした選び方が無作為抽出の基本です。

 出口調査に応じた人を無作為に選んだとしますと、「当確」と判定できるかどうかは、統計的に有意であるという場合のことです。言い換えますと、出口調査の結果は標本なので、母集団(全有権者)の結果にどれくらい一致するかには誤差があるため、95%信頼区間というのを使って評価します。5%くらいの間違いが起きる可能性がありますが、これは無視してよいというのが統計による検定の基本です。もちろん誤差を1%としても良いのです。誤差を5%としても1%としてもほとんど結果には違いのないことが分かっています。

 出口調査で最も大事なことは、調査対象者(サンプル)を無作為に選ぶということです。これをやらない調査の結果では視聴者は騙されます。

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