Last Updated on 2025年7月9日 by 成田滋
話題を変えて、数回にわたり私たちのさまざまな場面で使われているパスワードや暗号技術(cryptography) などの歴史や仕組みを考えていきます。パスワードは本人認証の文字列で、その基には暗号技術が作動しています。個人の情報機器で使うものから政府や軍隊で使われている高度な暗号まで、その歴史は古いものです。パスワードとは、あるシステムや情報へのアクセスを許可するための「秘密の文字列」です。暗号とは情報(データ)を第三者に読めないように変換する技術のことで、通信や保存中のデータを秘匿することです。
暗号化された情報は、復号(デコーディング:decoding)という逆の変換を行うことで元の情報に戻すことができます。暗号は、通信の秘匿やデータの保護など、様々な場面で利用されています。私たちはログインでパスワードを利用してアカウントを保護し、暗号技術はメールや通信の内容を保護するために使われています。
第二次世界大戦中、各国は軍事通信の秘密を守るために高度な暗号システムを使用していました。その代表は、ナチスドイツによるタイプライターのような機械を使ったローター式暗号機、アメリカ軍が使ったナバホ族コードトーカー(Code-Talker)、イギリスのタイプX暗号機というエニグマと似た構造のローター式暗号機、日本海軍が使ったJN-25、政府が使った九七式欧文印字機(通称パープル暗号)など有名です。
暗号システムで最も有名なのが、ナチスドイツが使ったエニグマ暗号(Enigma)です。エニグマという名称はギリシア語に由来し、「謎」という意味だそうです。アルトゥール・シェルビウス(Arthur Scherbius)というドイツ人電気技術がエニグマを開発します。シェルビウスは当初、ビジネス界と軍部向けに販売します。ドイツ軍の反応は冷ややかだったようです。しかし、第一次世界大戦中のドイツの暗号がイギリスに解読されたことを知ると、エニグマの価値を認め、1926年、エニグマの1機種がドイツ海軍に採択されます。数年後、ドイツ陸軍も同じ機械を採択してナチスの戦争戦略に貢献します。
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