詩人金子みすゞの著作「私と小鳥と鈴と」の中に、有名な「鈴と、小鳥と、それから私、みんなちがって、みんないい」というフレーズがありました。本稿は、多様性とか「みんなちがっていい」というダイバーシティという話題です。
英語の多様性(diversity)の語源は、ラテン語の「diverstias」に由来するといわれます。 diversitas は、動詞 divertere(向きを変える、離れる)から派生した形容詞です。興味あることですが、もともともは「一致可能なものに反すること(Difference)、矛盾とか対立するもの、一致しないもの」といった消極的な意味を有していたとされます。それと同時に「相違、多様、様々な形になる」という意味も併せ持っていたともいわれます。
17世紀になって、消極的な意味が失われ、現在のように使われるようになった多様性とは、性別、民族、人種、性的指向、年齢、障害、文化、階級、宗教、その他の人生経験など、より広範なコミュニティ全体を反映しているかどうかを指します。2001年11月にユネスコ(UNESCO)の「文化的多様性に関する世界宣言」の第一条では、「生物的多様性が自然にとって必要であるのと同様に、文化的多様性は、交流、革新、創造の源として、人類に必要なものである。この意味において、文化的多様性は人類共通の遺産であり、現在及び将来の世代のためにその重要性が認識され、主張されるべきものである」と規定されています。
1992年6月に締結された「生物の多様性に関する条約(Convention on Biological Diversity)」の前文は、「締結国は、生物の多様性が有する内在的な価値並びに生物の多様性及びその構成要素が有する生態学上、遺伝上、社会上、経済上、科学上、教育上、文化上レクリエーション上及び芸術上の価値を意識し」という表現を使い次のような多様性をうたっています。
■ジェンダーの多様性(Gender diversity):
特定の集団における男性、女性、およびノンバイナリー(nonbinary)の個人の代表性を意味します。`
■年齢の多様性(Age diversity):
様々な世代の個人を包含できるように年齢分布を示します。
■人種的および民族的多様性(Racial and ethnic diversity):
集団が国民的または文化的伝統を共有する個人で構成されているかどうか、あるいは多様な出身地や背景を持つ個人で構成されているかどうかを評価します。
■身体能力の多様性(Physical ability diversity):
目に見える障害と目に見えない障害のある人々の視点とそうした人々の役割や貢献を考慮することです。
■神経多様性(Neurodiversity):
Neuro(脳・神経)とDiversity(多様性)の2つを組み合わせた造語で、「脳や神経、それに由来する個人レベルでの様々な特性の違いを多様性と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で活かしていこう」という考え方です。特に、発達障害において生じる現象を、能力の欠如や優劣ではなく「人間のゲノムの自然で正常な変異」として捉えるという概念で「ニューロダイバーシティ」と呼ばれています。
金子みすゞが言わんとしたことは、人種や身体の特徴、感じ方や考え方、そして得意、不得意。これらがみな異なるからこそ、私たちは互いに助け合うことができるということです。「ダイバーシティ」とか「多様性」という概念を先取りした金子みすゞの発想に敬服するものです。私たち一人ひとりの多様さや違いは、この社会全体にとって、必ず意味があり、不可欠なものといえます。

