コンプライアンスとは

テレビや新聞に英語の用語が沢山登場しています。ニュースや新聞は権威性とか説得力を出したいので、英語を好んで使う傾向があります。若い世代やビジネス層を意識してか、「難しすぎる日本語」より「聞いたことあるカタカナ」のほうが受け入れられやすいと考えられているようです。でも問題点もあります。高齢者や英語が苦手な人には分かりにくいとか、意味を知らずになんとなく使っている場合があり、本来の日本語表現が減っていく懸念もあります。

 その例として本稿では、コンプライアンス(compliance) を取り上げます。コンプライアンスとは、元来は英語で「要求や命令などに従うことか順応すること」を意味する用語です。「コンプライアンス違反」を「法令および社会規範に反する行為」と言い換えると、ちょっと堅すぎる印象を受けるかもしれません。英語のほうが短くて便利なんです。他にも、「服薬コンプライアンス」では、 医師から処方された医薬品を患者が用法や用量を遵守して服用することを意味します。何らかの規格に適合すること、という意味もあります。

 社会心理学でもコンプライアンスという用語が使われるのをご存じでしょうか。最もよく知られているのは強制服従パラダイムforced compliance theoryというものです。1955年に、レオン・フェスティンガー(Leon Festinger) というアメリカの社会心理学者が認知的不協和理論(cognitive dissonance theory) を発表します。彼はその理論を幅広い現象を説明するために、一連の実験をします。最もよく知られている実験の一つが強制順応パラダイムです。

 この実験では、ある被験者は一連の反復的で退屈な単純作業を遂行した後、次の被験者に嘘をつき、その作業は面白くて楽しいと答えるよう指示されます。被験者の中には、嘘をついたことで1ドルの報酬を受けとった者もいれば、20ドルの報酬を受けとった者もいました。

 フェスティンガーは、嘘をついたことで1ドルの報酬を受け取った被験者は、20ドルの報酬を受けとった被験者よりも後にその作業をより楽しいと評価すると予測しました。つまり20ドルの報酬を受け取った被験者は、十分な報酬を受け取っていたため、不協和という心の葛藤を経験しないはずだと予想したのです。他方、1ドルの報酬を受け取った被験者は嘘をつく正当な理由がほとんどなく、認知的不協和を経験したはずでした。

 この実験では、実際には単純な作業という認知と矛盾する楽しさを伝えるという認知から不協和が発生しますが、報酬の多寡で楽しさを伝える度合いが異なる事を確かめたのです。報酬が少ない被験者は、報酬が多い被験者よりも楽しさを伝える度合いが強く、割に合わない報酬に対して「本当は面白かったのかもしれない」と、認知に修正を加えて不協和を解消しようとする心理が強く働いていると結論づけたのです。

綜合的な教育支援の広場

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA