アメリカの公的医療保険制度ーメディケア その一 ルー・ゲーリック病

Last Updated on 2025年5月10日 by 成田滋

アメリカ合衆国の連邦医療保険制度は「メディケア」(Medicare)と呼ばれています。メディケアは、65歳以上の高齢者と末期腎疾患(end stage renal disease)、および筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis: ALS)、別名ルー・ゲーリック病(Lou Gehrig’s disease)の患者を含む65歳未満の障害者を対象として、1965年に社会保障局(Social Security Administration: SSA)の下で開始されました。現在はメディケア・メディケイド・サービスセンター(Centers for Medicare and Medicaid Services: CMS)によって運営されています。

メディケアのロゴ

 メディケアはA、B、C、Dの4つのパートに分かれています。パートAは、入院、熟練看護、ホスピスサービスを対象としています。パートBは外来サービスを対象としています。パートDは、自己処方薬の患者を対象としています。パートCは、パートAおよびBと同じサービスに加え、通常は追加の給付も提供する異なる給付構造の民間プランを選択できる代替制度です。

 2022年、メディケアは6,500万人に医療保険を提供しました。そのうち5,700万人以上は65歳以上、約800万人は65歳未満の人々です。メディケア受託者による年次報告書、および議会のMedPACグループの調査によると、メディケアは加入者の医療費の約半分を負担しています。加入者は残りの費用の大部分を、追加の民間保険(メディギャップ保険)への加入、メディケア・パートD処方薬プランへの加入、または民間のメディケア・パートC(メディケア・アドバンテージ)プランへの加入によって負担しています。2022年のメディケア受託者による支出は、受託者報告書によると9,000億ドルを超え、そのうち4,230億ドルは合衆国財務省(U.S. Treasury)から、残りは主にパートA信託基金(給与税を財源)と受給者が支払う保険料から賄われました。

ルー・ゲーリック

 筋萎縮性側索硬化症がルー・ゲーリック病と呼ばれるようになった経緯です。1920年代から1930年代にかけてニューヨーク・ヤンキース(New York Yankees)で活躍したのが(Lou Gehrig)です。三冠王をはじめ、打撃タイトルを多数獲得し、史上最高の一塁手と称されていました。1939年、体調異変により欠場し、輝かしい記録は途切れます。その後筋萎縮性側索硬化症と診断され、ゲーリッグは引退を決意します。このような経緯でアメリカでは、この病気は「ルー・ゲーリッグ病」と呼ばれるようになりました。発症率は10万人に一人くらいという神経性疾患です。根治的な治療法は確立されていないのですが、複数の薬剤により病状の進行を遅らせることが可能となっています。

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