アジアの小国の旅 その七十四  オマーン

Last Updated on 2020年6月6日 by 成田滋

欧米列強の進出に悩まされ、保護や植民地支配からの独立した国々は、今も内戦などで苦しんでいます。オマーンもまた、かつてポルトガル、イギリス、フランスの保護国となった歴史があります。

オマーン国(Sultanate of Oman)は、アラビア半島の東端にあり、アラビア海(Arabian Sea)とオマーン湾(Gulf of Oman)に面する絶対君主制国家です。北西にアラブ首長国連邦(United Arab Emirates: UAE)、西にサウジアラビア(Kingdom of Saudi Arabia)、南西にイエメン(Republic of Yemen)と隣接しています。石油輸出ルートとして著名なホルムズ海峡(Strait of Hormuz)の航路もオマーン飛地の領海内にあります。 首都マスカット(Muscat) はオマーン湾にのぞむオマーン最大の港湾都市で、政治や経済、文化、教育の中心です。全土が砂漠気候に属し、大きな河が存在しない珍しい国といわれています。

オマーンは東アフリカ、中東、ペルシア湾岸、インドを結ぶ航路を控え、戦略的に重要な位置にあります。ホルムズ海峡はエネルギー供給の大動脈と呼ばれ、S字型に曲がった航路を何度も舵を切りながら進みます。一日平均14隻のタンカーが航行しているといわれます。日本政府は、オマーン湾やホルムズ海峡へ海上自衛隊の護衛艦1隻と哨戒機2機を派遣しています。オマーンは産油による高い国内総生産も相まって政治の安定に寄与しています。

オマーンの農産物はナツメヤシ サヤインゲン、果物の他、カラン科の樹木から分泌される樹脂、乳香(frankincense)があります。乳香は数千年にわたり宗教的行事にお香などで利用されてきた歴史があります。芳香成分には、リラクセーションや瞑想に効果的であると考えられています。ベツレヘム(Bethlehem)でイエス・キリスト(Jesus Christ)が生まれた時、東方からやってきた3賢人がイエスに捧げた贈り物が乳香、没薬、黄金であったという記述がマタイによる福音書(Gospel According to Matthew)2章11節にあります。