私は外国語に興味を持つ人間の一人です。そのきっかけを振り返ると、昭和21年の秋に北海道は美幌に進駐軍がやってきたことにありそうです。美幌には第41海軍航空基地があったので、進駐軍があのカーキー色のトラックでやってきました。トラックからチューインガムやチョコレートが投げられ夢中で拾いました。チョコレートの甘さは忘れられません。レーション(ration)と呼ばれた携帯食も珍しいものでした。
それから中学生になって英語がとても大好きになりました。名寄中学校で眉毛の太い藤田という先生に英語を教わりました。教科書の文章は不思議と頭にすらすら入りました。「Who Has Seen the Wind?」という教科書にあった詩も今も覚えています。この詩の作者はChristina Rossettiというイギリス人の女性です。
Who has seen the wind?
Neither I nor you:
But when the leaves hang trembling,
The wind is passing through.
Who has seen the wind?
Neither you nor I:
But when the trees bow down their heads,
The wind is passing by.
後に、この詩がいろいろなレトリック(rhetoric)と呼ばれる修辞法を使っていることを知りました。韻を踏んでいること、対比や反復をつかっていることです。例えば、wind、trembling というような語尾の韻、passing through、passing by という前置詞の使い方、 I nor you、you nor I といった倒置、the leaves、the trees という対比です。真にほれぼれする詩です。
この修辞法は、大分あとに研究者として文章を書くときに大いに役立ったことはいうまでもありません。学生や院生の論文を読むときにも文章を修正してやるときにも、修辞を大切にするよう指導しました。