旅のエピソード その1 「小さな首都タリン」

私もこれまでいろいろな旅をしてきました。人生は旅ともいわれます。そこでのエピソードを紹介することにします。最初は、エストニア(Republic of Estonia)の首都タリン(Tallinn)です。元大関力士、把瑠都の出身地です。

フィンランド(Finland)の首都ヘルシンキ(Helsinki)からフェリーに乗ってバルト海(Baltic Sea)を3時間で、バルト三国(Baltic States)の一つエストニアの首都タリンに着きます。エストニアは1940年ソ連に占領され、1941年から1944年まではナチス・ドイツに占領されます。第二次大戦中、そして戦後はソ連により支配されます。ようやく1991年に独立回復をかちとり、2004年に欧州連合(EU)に加盟します。大国に翻弄された歴史を有します。他にバルト三国のラトビア(Latvia)、リトアニア(Lithuania)も同じ運命にあってきました。

タリンの旧市街は城壁で囲まれています。世界文化遺産に指定されたタリン歴史地区です。その中に広場があります。古い教会が建ち並び、タウンホール(Townhall)といういわば役場が広場の一角にあります。タウンホールでは、かって集会が開かれていたという説明書きがあります。街中には、商工組合の原点とされるギルトのあった建物があり、政治とは切り離された独自の商行為をしていたことがうかがわれます。その建物は今は歴史博物館となっています。

広場の朝は市場で賑わいます。物と物、人と人が出会います。昔はここで市民集会が開かれ、裁判が行われ、処刑も行われ、そして死者を弔う礼拝も行われました。いわば俗なるものと聖なるものが交わるところでありました。タリンのあちこちに銃弾の跡が残る建物があります。教会の尖塔がそびえ、街はすっかり復興し広場は活気に溢れています。

ガイドに案内されてこうした説明をきいていると、中世に勃興した自治都市というものが、広場を起点として発展したことがわかります。広場の果たした役割とその重要性がすり減った古い石畳に刻まれているようです。小さな国を歩くのも旅の楽しみです。