アジアの小国の旅 その七十二 「牛乳屋テヴィエ」とユダヤ文学

後述しますがイディシュ文学(Yiddish)はアシュケナージと呼ばれるユダヤ人の文学です。今回は「牛乳屋テヴィエ」(Tevye the Dairyman)とユダヤ文学の話題です。世界に散ったユダヤ人「ディアスポラ」(Diaspora)は建国の精神を抱いてイスラエルの地に戻ってきます。Diasporaとはギリシア語で「散らされている者」という意味です。そこから英語の「disperse」(散らす)という単語が派生します。

Sholem Aleichem

イスラエルの地に国を造ろうとした運動は、シオニズム(Zionism)と呼ばれます。宗教的、文化的復興を目指す近代化運動のことです。民族主義の昂揚とか祖国回復の運動ともいわれます。復習ですが、世界中から二種類のユダヤ人がイスラエルの地に戻ってきたといわれます。第一のグループはアシュケナージ(Ashkenazi)と呼ばれ主に東ヨーロッパなどに定住した人々やその子孫のユダヤ人です。第二のグループはセファルディ(Sephardi)と呼ばれ、主としてスペインやポルトガルまたはイタリアなどの南欧諸国やトルコ、北アフリカに住んでいたユダヤ人です。

「屋根の上のバイオリン弾き」

さて「牛乳屋テヴィエ」は「屋根の上のバイオリン弾き」(Fiddler on the Roof)というミュージカルでも知られています。主人公はテヴィエ(Tevye)とその家族です。舞台はウクライナ(Ukraine)のユダヤ人が住む村です。この作品を書いた劇作家、ショーレム・アレイヘム(Sholem Aleichem)はウクライナ出身のユダヤ系アメリカ人です。アレイヘムの小説は、民衆の啓蒙を主題とし、離散したユダヤ人社会で生れたイディシュ文学の代表といわれます。「牛乳屋テヴィエ」に登場するユダヤ人はアシュケナージの人々です。