アジアの小国の旅 その六十四 中東とか中近東の歴史

今回から「アジアの小国の旅」というテーマで稿を進めてまいります。中東(Middle East)から始めていきます。中東という言葉と接するとなんとなく「イスラム教の国々」という印象を受けます。確かにその通りなのですが、中東とは、地中海沿岸国(Mediterranean Sea)やモロッコ(Morocco)やアラビア半島(Arabian Peninsula) 、イラン(Iran)などの国々を指すようになっています。

中東とは西アジアとアフリカ北東部の総称です。こうした中東の中心のあたりの地域をヨーロッパの地理学者や歴史学者が近東(Near East)と呼ぶようになりました。こうした学者によれば、東方諸国(オリエント:Orient)とは、三つにまたがる地域であると主張します。第一は地中海からペルシャ湾(Persian Gulf)に至る地域、第二はペルシャ湾から東南アジアに至る地域、そして日本を含む太平洋に面した地域というのです。

Jordan, Wadi Rum, camel caravan in the Unesco World heritage site in Middle East

オリエントというと、第一にエジプト(Egypt)、メソポタミア(Mesopotamia)を中心とする小アジア・西南アジア・北アフリカの地域です。通常、世界最古の文明発生地一帯をオリエントと呼ばれます。第二はアジアの総称で特に東アジアを指すことです。どちらもラテン語の「Oriens」という日の出を意味する単語、すなわち東方に由来するといわれます。

バグダッドを臨む

中東は、19世紀以降にイギリスなどがインド以西の地域を植民地化するために使われた概念といわれます。もともとは、イランやアフガニスタン(Afghanistan)およびその周辺を指しました。中東に含まれる地中海沿岸地域は近東と呼ばれました。しかし、中東と近東の概念を混同した中近東という概念も使われるようになります。ただし、中東、近東、中近東の違いは明確ではありません。このような地域の区分は第二次世界大戦中にイギリス軍が始めて使ったといわれます。