ヨーロッパの小国の旅 その五十五 スイス

スイス連邦(Swiss Confederation)の面積は、4.1万平方キロメートルといわれますから九州と同じくらいの広さです。首都はベルン(Bern)、人口は850万人位です。永世中立国(permanent neutrality)として知られるのがスイスです。1815年にオーストリア帝国の首都ウィーン(Vienna)において欧州の列強が参加してウィーン会議(Congress of Vienna)が開かれます。その席でスイスの永世中立が承認されます。

永世中立とは、国際法上ないし国際政治上の概念です。非同盟主義と同じような意味で、平素から戦争にかかわらないよう相対立するいずれの国にも偏しない立場をとることです。他国に対して武力を行使せず、また他国間の戦争にも参加せず、武力行使を義務とする同盟などは締結しないという立場です。他の国に軍事基地を提供することも、同盟条約や集団安全保障条約の当事国となることも許されません。

永世中立のスイスにおける国防の基本戦略は興味ある話題です。敵国に対して、「スイスを侵略することによって得られる利益はあまりありませんよ、もし侵略してもスイス軍の抵抗や国際社会からの非難や制裁による損失の方が大きくなりますよ」 と主張するのです。それによって国際紛争を未然に防ぐというのが戦略なのです。これは「拒否的抑止力」という考え方です。ナチスドイツがスイスを占領しなかったのは、占領しても得るものは少なく、国際社会から非難されることを恐れたのだろうと思われます。

永世中立国は、交戦国からの中立侵犯に対して防衛するために武力を行使することは妨げられません。そのためスイスは国軍として約4,000名の職業軍人と約21万名の予備役から構成されるスイス軍を有しています。隣国のオーストリア(Austria)も1955年に永世中立を宣言しています。