ヨーロッパの小国の旅 その三十七 「世界は神が作ったが、オランダはオランダ人が作った」

オランダ(Holland)とネザーランド(Netherlands)という使い分けから始めます。公式にはネザーランド王国(Kingdom of the Netherlands)というのが正しい国名です。チューリップと水車の国とも呼ばれています。

オランダが国を樹立したのは、いろいろな地域や都市を併合して1579年にスペインからの独立を宣言したときです。 その一つがオランダ(Hollands)という地域でした。Hollandsの歴史は12世紀に遡ります。ローマ帝国の支配にあった頃です。今の首都アムステルダム(Amsterdam)やロッテルダム(Rotterdam)、ハーグ(Hague)といった都市はオランダ地域の中にあります。こうした地域は、政治や経済の中心となり、対外的にはオランダ(Hollands)と呼ばれるようになります。

ところでNetherlandsとは「低い土地」、Hollandとは「森林地帯」という意味です。中世以来の伝統を引き継ぎ、12の郡から構成されています。オランダの自治領としてカリブ海のオランダ領アンティル(Antilles)、サバ(Saba)、シント・マーテン(Sint Maarten)などがあります。

オランダは極めて平坦な国土で、湖、川、そして運河が広がります。6,500 平方キロが干拓によって造られてきました。水の管理の伝統は中世から始まり今に至っています。新しい土地はほとんどが干拓地で、今も排水が続いています。もともとは人力や馬によって排水作業がされていました。

「世界は神が作ったが、オランダはオランダ人が作った」という諺があります。オランダは国土の大部分が低湿地帯です。干拓によって人の住める場所を広げてきました。さらに13世紀には風車を利用するようになり、風を動力として活用する技術を蓄積していました。電気モーターやディーゼルに代わったのは20世紀になってからです。キンデルダイク(Kinderdijk-Elshout)という水車小屋が並ぶ光景はユネスコの世界遺産として登録されています。

風車の発明や改良などにより、大航海に耐える帆船を作るのに充分な技術が生まれます。そして大西洋やインド洋へ乗り出すのです。