ヨーロッパの小国の旅 その十九 フレスコ画とリラ修道院

リラ修道院(Rila Monastery)はブルガリアに行くのでしたら是非訪れて欲しい場所です。この修道院はユネスコの世界遺産です。この修道院の見所といえば、聖母誕生教会(St. Mary Nativity Church)の壁や天井に極彩色で燦然と輝くフレスコ画(fresco)といえます。フレスコ(fresco)という言葉は、英語のfreshにあたるイタリア語です。文字通り「新鮮な」とか「爽やかな」という意味です。

Rila Monastery

フレスコ画とはですが、壁面に砂と石灰を混ぜた「石灰モルタル」を塗り、そのうえに水で溶いた顔料で絵を描いていく技法です。色の元である顔料そのものと、石灰が硬化する力で色を定着させていくので接着剤は使いません。乾燥すると石灰に膜が張られ、自然の保護膜ができるため、非常に耐久性が高くなります。さらに、石灰は元の石灰岩へと戻っていくため彩色大理石のようになり、何百年何千年と色あせない絵画ができるとも言われます。

フレスコで想い出すのが、人類最古の絵画と言われるアルタミラの洞窟壁画(Cave of Altamira)です。我が国の高松塚古墳の壁画もフレスコ画といわれます。時代はくだり、ヴァチカン(Vatican)にあるシスティーナ(Sistine)礼拝堂にあるミケランジェロ(Michelangelo di Lodovico Buonarroti )が描いた「天地創造」、「最後の審判」、ラファエロ(Raffaello Santi)による「アテナイの学堂」、これらもフレスコ画です。2人ともルネサンスを代表するイタリアの画家、建築家です。

リラ修道院に戻ります。フレスコ画のモチーフはいうまでもなく聖書物語です。聖書の36場面が描かれています。礼拝堂内に入ると無数のイコン(icon)で飾られたイコノスタシス(iconostasis)という壁が目に飛び込んできます。金箔が施されています。この壁は「聖障」と訳されていて、正教会と東方諸教会の聖堂では、聖所と至聖所を区切るのです。礼拝堂の壁、柱、梁、天井を埋め尽くす極彩色のフレスコ画はブルガリア宗教画の至宝でしょう。

リラ修道院にある博物館も見逃せないところです。そこにある秘蔵品は「ラファイルの十字架(Rafail’s Cross)」という縦横81×43 cmの木造の十字架です。その上に104の聖書の箇所が彫られ、650体の人物が描かれています。完成したのは1802年で、ラファイルという僧侶が作ったとあります。