ヨーロッパの小国の旅 その十八 リラ修道院

ブルガリアの首都ソフィアの南、110キロ余りのところにリラ修道院(Rila Monastery)があります。ソフィアを旅するときは、一日かけて訪ねる価値があります。バスに揺られ2時間余り。途中のリラ村からは緑の深いリルスカ峡谷(Rilska River)を走ると、そこに忽然として男子の修道院が現れます。UNESCOの世界遺産、リラ修道院です。修道院は海抜1,100mのところにあり周りの山はロドペ山脈(Rhodope Mountains)です。

創建は10世紀に遡ります。聖リラ(St. Ivan of Rila)という僧がこの深い谷間を隠遁の地として選び礼拝堂を建てます。当時は、岩壁の洞窟を使ったと記録されています。やがて各地からやって来た若い求道者が現在の位置に教会堂などを建て始めたようです。

リラ修道院は、長い間ブルガリア帝国の支配者から厚い庇護を受けて文化や霊的な教育の中心として発展します。それはオスマン帝国の支配が始まるまで続きます。14世紀には、修道院としての規模となり充実します。リラ修道院の現存する最も古い建物は、修道院正面の門と大司教の正座、そして石造りの礼拝堂と塔でです。フレリョ塔(Tower of Hrelja)と呼ばれます。

16世紀にはいると修道院は数々の攻撃や破壊を受けます。しかし、マラ・ブランコビッチ(Mara Brankovic)というセルビア王国(Serbia)の王妃やロシア正教会などの援助で元通りに再建されるのです。修道院の宿坊は1816年に造られます。1833年、大火のために修道院は焼失しますが、当時有名な建築家アレクシ・リェッツ(Alexi Rilets)の設計と裕福なブルガリア人などからの多額の浄財とによって1862年に再建されます。修道院内の複合建築物には、ブルガリアの言語や文化を代表する書物や遺品を所蔵し、収蔵所としての役割を果たしています。