この映画は、アンジェイ・ワイダが1958年に制作した作品です。ポーランドは地政学的に近隣諸国から翻弄された歴史があります。123年にわたる分割占領から独立を回復したのが1918年。しかし、第二次大戦によって再び大国の支配に蹂りんされます。戦後は、ソ連の手先である統一労働者党が実権を握り、一党独裁の社会主義国家となります。そして1989年に大統領制が復活し、自由な選挙により新しい国家、ポーランド共和国ができます。
「灰とダイヤモンド」はポーランドが社会主義政府支配のもとで作られた映画です。言論が統制されていた時代です。ワイダをはじめ文化人らは、厳しい検閲などに注意を払いながら作家活動を続けたことが容易に伺えます。
「灰とダイヤモンド」は1945年5月数日のポーランドが舞台です。ポーランドのロンドン亡命政府派は、ソ連の手先である労働者党県委員会書記のシュチューカ(Szczuka)の暗殺を指示します。亡命政府派のゲリラであるマチェク(Maciek)がそれを引き受けます。誤って別人を暗殺し、人民軍によって射殺されます。この映画でワイダは、青年マチェクのポーランド独立への心意気や苦悩を下敷きにしたようです。